KDDIは9月28日、タフネス仕様のAndroidスマートフォン「TORQUE G06」を発表しました。メーカーの撤退報道などで去就が注目されるなか、根強いファンを抱えるシリーズから2年半ぶりの新機種が登場します。

  • au×京セラの新型タフネススマホ「TORQUE G06」。10月19日発売で、価格は98,000円

    au×京セラの新型タフネススマホ「TORQUE G06」。10月19日発売で、価格は98,000円

新型「TORQUE」は耐久性を高めつつ小型化、トリプルカメラも搭載

TORQUE G06は、日本国内では2014年から展開されてきた京セラ製の高耐久モデル「TORQUE」シリーズの新機種。2021年3月に発売された「TORQUE 5G」の後継機種となります。

  • ボディ全体が見るからに頑丈そうなフレームで囲まれており、落下しても画面が地面に当たりにくく周囲の枠で衝撃を吸収するような構造となっている

    ボディ全体が見るからに頑丈そうなフレームで囲まれており、落下しても画面が地面に当たりにくく周囲の枠で衝撃を吸収するような構造となっている

TORQUEといえば、過酷な環境における業務利用からアウトドア・レジャーまで、幅広いシーンで他の機種には代えがたい「強さ」から支持されてきたスマートフォンです。今回の新機種でも、高さ2mからアスファルトへの落下耐性など新たな試験項目を加え、耐久性に磨きをかけました。

一方、耐久性を追求しながらモデルチェンジを繰り返していくなかで、一般的なスマートフォンと比べて大きい、重いという不満の声も出てきたと言います。そこでTORQUE G06では新開発の「Xフレーム」で衝撃の吸収・分散方法を見直すなどの工夫により、耐久性を高めながらも先代のTORQUE 5Gと比較して全長-13mm、重量-14gと小型化・軽量化も実現しました。

  • 耐久性を向上しつつ、小型化・軽量化も実現

    耐久性を向上しつつ、小型化・軽量化も実現

また、スマートフォンを選ぶ上で重視する人が年々増えているカメラ性能も強化しました。シリーズ初のトリプルカメラは、広角+超広角+マクロの構成。3番目に望遠ではなくマクロを入れたのは、たとえば登山中の植物撮影など、TORQUEが活躍するようなアクティビティとの相性の良さを考えてのことです。これを活かし、引きで撮った写真とマクロ写真をセットで1枚にして振り返りやすく残せる「虫眼鏡フォト」という機能も追加されます。

  • TORQUEシリーズ初のトリプルカメラを搭載

    TORQUEシリーズ初のトリプルカメラを搭載

TORQUE G06はauから10月19日に発売予定で、価格は98,000円。残価型割引プログラム「スマホトクするプログラム」を利用して2年後に返却する場合の想定負担額は実質59,800円となります。主なスペックは下記のとおりです。

  • OS:Android 13
  • SoC:Qualcomm Snapdragon 7 Gen 1
  • メモリ(RAM):6GB
  • 内部ストレージ(ROM):128GB
  • 外部ストレージ:microSDXC(最大1TB)
  • ディスプレイ:5.4インチ
  • アウトカメラ:約6,400万画素(広角)+約1,600万画素(超広角)+約200万画素(マクロ)
  • インカメラ:約800万画素
  • 通信方式:5G/4G
  • 最大通信速度:受信時最大2.4Gbps/送信時最大218Mbps
  • Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz)
  • Bluetooth:5.2
  • バッテリー:4,270mAh
  • 外部端子:USB Type-C
  • 防水/防塵:IPX5、IPX8/IP6X
  • その他の機能:おサイフケータイ、ワイヤレス充電対応
  • サイズ:約154×75×14.6mm
  • 重量:約234g
  • カラー:レッド、ブラック

さっそく実機をチェック!専用アクセサリーも充実

TORQUE G06はレッドとブラックの2色展開。イエロー、ブルーなど歴代のTORQUEシリーズにあったカラーを中心にファンの要望が多い色はほかにもあったそうですが、特にブランドカラーとしてイメージが定着しており愛好者も多いレッド、そして仕事で使うユーザーにも無難に好まれやすいブラックの2色が選ばれました。

どちらのカラーも、落下時にまず地面などに触れ衝撃を吸収するバンパー部分などは傷の目立ちにくそうな質感の黒色で、画面の上下と背面のカラーリングが異なります。レッドは深みのある光沢仕上げで、バンパーの質感とのコントラストがまるでSUVのボディのよう。ブラックだと全体がマット仕上げで統一され、質実剛健な仕事道具といった雰囲気に。どちらも個性的で甲乙つけがたいデザインです。

  • レッドは鮮やかかつ深みのある塗装で、バンパー部分とのコントラストで全体の印象が締まり高級感が増している

    レッドは鮮やかかつ深みのある塗装で、バンパー部分とのコントラストで全体の印象が締まり高級感が増している

  • ブラックでは全体がマット仕上げで統一され、質実剛健な道具らしい印象に変わる

    ブラックでは全体がマット仕上げで統一され、質実剛健な道具らしい印象に変わる

実機を手にしてまず驚いたのが、コンセプトにもあった通り、ネガティブな面での「タフネスモデル特有のゴツさ」がかなり軽減されています。画面サイズは0.1インチしか変わらない先代のTORQUE 5Gと並べてみても、下の写真のようにその差は歴然。200gをゆうに超えるような大型スマートフォンが珍しくなくなり、相対的に重くなくなったというのも感じ方の変化の理由として考えられますが、TORQUEならケース無しでも安心して使えることを考えれば、日常利用でもちょっと厚さを感じるぐらいでサイズによるストレスはさほど無さそうに思えます。

  • 左がTORQUE 5G、右がTORQUE G06。画面サイズは5.5インチと5.4インチであまり変わらないが、ボディは小型化されている

    左がTORQUE 5G、右がTORQUE G06。画面サイズは5.5インチと5.4インチであまり変わらないが、ボディは小型化されている

  • TORQUE G06の重さは約234g。大画面のハイエンドスマートフォンにケースを着けたぐらいと思えば、普段使いにもさほど違和感はないのではないか

    TORQUE G06の重さは約234g。大画面のハイエンドスマートフォンにケースを着けたぐらいと思えば、普段使いにもさほど違和感はないのではないか

もちろん、小さくなったからといって耐久性は下がっておらず、むしろ上がっています。事前に開かれた記者向け説明会の会場では水に沈めた状態のほか、なんと前日から氷漬けにされていたという端末もあり、動作・着信可能な状態で披露されていました。

防水・防塵に加えて耐衝撃までなら最近は普通のスマートフォンでも考慮されている機種が増えていますが、低温・高温などあらゆる極限の環境まで耐え抜けるのはやはり耐久性に特化した機種ならでは。また、そもそも普通の防水端末ではやってはいけないことに気付かず使ってしまい腐食などのトラブルにあう人も珍しくない「耐海水」仕様なことも特筆すべき点です。マリンスポーツや釣りを楽しむ方には最適でしょう。

  • 水に沈められた状態での展示。ストップウォッチの画面が表示されているように、この時点で2時間ほど動き続けている。ちなみに、底まで沈まず留まっているのは別売の「フローティングストラップ」の効果だ

    水に沈められた状態での展示。ストップウォッチの画面が表示されているように、この時点で2時間ほど動き続けている。ちなみに、底まで沈まず留まっているのは別売の「フローティングストラップ」の効果だ

  • 氷漬けにされた状態での展示。前日から冷凍していたという

    氷漬けにされた状態での展示。前日から冷凍していたという

たまにアウトドアなことをする程度の活用頻度だとこういった機種を選ぶハードルが高くなりがちな理由として、サイズ以外に「普通のスマホより処理性能が低くなりがち」「特殊仕様のぶん高くなりがち」という懸念点もあります。

TORQUE G06はスマートフォンとしての基本性能も上がっていて、Qualcommのミドルハイレンジ向けSoC「Snapdragon 7 Gen 1」を搭載しています。今回は深くは試せていませんが、構成の近い機種を試用した経験からすると、通常利用では動作の引っかかりやもたつきなどのストレスを感じることはまずなく、重量級の本格タイトルを除けばゲームさえそれなりに遊べるクラスです。実はTORQUE G06でも、タッチパネルにレースゲームや音楽ゲームを想定したチューニングのレスポンス改善などを施しているそう。少々意外ですが、アウトドア一筋かと思いきやインドアな日でも我慢せず楽しめる機種に仕上がっています。

冒頭でも触れた通り、TORQUE G06のau Online Shop価格は98,000円。市場全体として値上がり傾向にあるなか、ミドルハイレンジの中身にプロレベルの高耐久仕様で10万円を切ってきたことには驚きました。ただ、長期間愛用するユーザーの多いシリーズで他に替えの効かない機種であることを考えると、「2年使って返す」スキームでの実質負担額の提示にはミスマッチを感じるところです。本機種に限らない全体での販売モデル・割引システムなので致し方ないとはいえ、もう一歩ユーザーに寄り添った工夫があっても良かったように思います。

  • タフネスモデルという性質からすると意外かもしれないが、処理性能の向上に加えゲームエクスペリエンスを考慮したチューニングも行っている

    タフネスモデルという性質からすると意外かもしれないが、処理性能の向上に加えゲームエクスペリエンスを考慮したチューニングも行っている

本体だけでなく、専用アクセサリーの充実ぶりも見逃せません。ベルトやカラビナを使って身に着けられる「ハードホルダー」、三脚や自転車への取付などに使える「マルチホルダー」、手首に巻いておけば水に落としても沈まない「フローティングストラップ」など、さまざまなシーンでTORQUE G06を活かすためのアイテムが用意されています。

  • ハードホルダーの装着例

    ハードホルダーの装着例

  • マルチホルダーを使って自転車のハンドルに固定した例。撮影した動画に移動速度や位置情報などの情報を重ねて表示できる「Action Overlay」機能と組み合わせれば、良い記録映像が出来上がるだろう

    マルチホルダーを使って自転車のハンドルに固定した例。撮影した動画に移動速度や位置情報などの情報を重ねて表示できる「Action Overlay」機能と組み合わせれば、良い記録映像が出来上がるだろう

また、バッテリーをユーザー自身が簡単に着脱できる構造も変わらず、フィーチャーフォンのようにリアカバーを外せば電池パックが現れます。数年使ってバッテリーが劣化してきた際に修理に出さなくても手軽に交換できるのはもちろんですが、本体経由ではなく電池パックだけの状態で充電できるチャージャーも用意されるので、電池パックを買い足しておけば電源のない場所に出かける際にもバッテリーを入れ替えながら長時間利用できます。

  • リアカバーを外すと電池パックが現れ、その下にnanoSIM/microSDカードスロットがある

    リアカバーを外すと電池パックが現れ、その下にnanoSIM/microSDカードスロットがある

  • バッテリー容量は4,270mAhに増えており、前世代とは別型の電池パックとなる。単体で充電できるチャージャーも用意される

    バッテリー容量は4,270mAhに増えており、前世代とは別型の電池パックとなる。単体で充電できるチャージャーも用意される

  • 充電端子はUSB Type-C。パッキンの痛みなどを心配してキャップの開閉を避けたいようであれば、ワイヤレス充電にも対応しているのでそちらの利用がおすすめだ

    充電端子はUSB Type-C。パッキンの痛みなどを心配してキャップの開閉を避けたいようであれば、ワイヤレス充電にも対応しているのでそちらの利用がおすすめだ

“京セラ撤退”の影響は?タフネススマホの今後

TORQUEシリーズは耐久性に特化したスマートフォンという特殊なポジションの製品であり、替えの効かない道具として指名買いしているユーザーが多いでしょう。それだけに、久しぶりの新機種の登場は喜ばしい限りですが、直近の動向に不安を感じている人もいるはず。TORQUEシリーズを継続できた背景と今後について、説明会の質疑応答などで得られた情報をもとに整理します。

  • TORQUEシリーズの今後はどうなる?

    TORQUEシリーズの今後はどうなる?

まず、TORQUEシリーズを手がける京セラは、5月に「2025年3月をもってコンシューマー向けの携帯電話端末事業から撤退する」「端末事業は法人向けに絞っていく」という方針を示しました。TORQUEは一般に広く販売される端末ですが、一方で林業・水産業・運送業・警察など業務端末としての引き合いも強く、単純にコンシューマー向け製品とも言い切れず、果たして打ち切られるのか存続するのか……と一時は情報が錯綜したことも。結論としては、販売比率でおよそ半々という高い法人需要に支えられて当面の継続が決まりました。

TORQUE G06は撤退発表以前に開発がスタートしていた製品であり、コンシューマー向け製品からの撤退後もサポート体制に影響がないかなど懸念点をクリアにした上で発売にこぎつけています。なお、アウトドアイメージで夏モデルとして登場することが多かった歴代TORQUEの中では珍しく冬モデルとしての登場となりますが、これは撤退関連の協議・調整の影響というわけではなく、当初より予定していたスケジュールとのこと。ひとまず、今回の新機種を購入してこれから数年使っていく上では、特段の心配は要らないようです。

次世代以降の製品展開に関しても、京セラ側の方針としては端末事業自体を完全に畳むわけではなく法人メインで続けていくこと、KDDI側の方針としては法人向けを中心に個人の需要にも応えられるよう商品化の形を模索していることから、例外として続けられる兆しは見えています。

  • TORQUE G06(ブラック)

    TORQUE G06(ブラック/前面)

  • TORQUE G06(レッド)

    TORQUE G06(レッド/側面)

auのタフネスモデルの取り組みは、前身であるIDO時代の2000年に初代「G'zOne」のC303CAを発売して以来23年にわたります。その後、スマートフォン時代の到来やNECカシオの携帯電話事業撤退を経て、京セラのTORQUEが事実上の後継の座についたという経緯があります。

長期にわたってタフネスモデルを出し続け、狭く深いユーザー層をしっかりと繋ぎ留めてきたわけですが、見方を変えればTORQUEユーザーはメーカーやブランドが変わっても「auのタフネスモデル」を信頼してついてきたユーザーであり、仮に京セラのTORQUEシリーズを継続できなくなっても他の活路を模索できるようにも思えます。

また、「通信と端末の分離」をはじめとした市場環境の変化もあって、昨今ではタフネスモデルに限らず、通信キャリア主導の企画で作られる個性的な端末は減りつつあります。

それならばいっそ、このタイミングで京セラから再びパートナーメーカーを変える、あるいはGalaxy XCoverシリーズ(日本未発売)のような既製のタフネススマートフォンをローカライズして持ち込むという選択もあり得たのでは?という疑問をKDDIの担当者にぶつけてみると、法人特有のニーズへのきめ細かな対応力を評価していると同時に、個人需要に関してもすでにTORQUEシリーズに切り替えてから10年近い歴史があり、G'zOneの代わりではなくTORQUE固有のファン層が育ってきていると、京セラとTORQUEシリーズを続ける判断に迷いのない言葉を聞けました。

2023年に入ってからユーザーコミュニティ「TORQUE STYLE」のリニューアルなども実施しており、個人の固定ファンもないがしろにせず、来年で10周年を迎えるTORQUEブランドを大切にしていく姿勢が見られます。

  • TORQUEシリーズの初代機「SKT01」は2013年にアメリカで発売された

    TORQUEシリーズの初代機「SKT01」は2013年にアメリカで発売され、翌年には特定の商流で法人向けの端末として日本にもわずかに入ってきている。auから個人向けのタフネススマホとして登場したのは、2014年7月発売の「TORQUE G01」からだ

ただ、少なくともひとつ言えることとしては、仮に2025年以降も今のような個人・法人需要のハイブリッド製品としてTORQUEシリーズが作り続けられたとして、現在とは逆に「法人向けに作ったものを個人にも売る」という開発・仕様決定のうえでのウェイトの逆転は避けられないでしょう。

個人・法人のTORQUEのニーズは「普通のスマートフォンとは一線を画す耐久性を求めている」ということだけは共通していても、細かく見れば「個人ユーザーは今時のスマートフォンなら当たり前のきれいなカメラを求めるけれど、法人ユーザーにとってはコストアップ要因でしかなく不要」というように食い違う部分も少なくないはずです。

そういった意味では、TORQUE G06はトリプルカメラの搭載や各種アクティビティで活躍する機能の充実ぶりを見ても明らかに、個人向けに重点を置いて作られています。ただプロ仕様の頑丈さを持つだけでなくアウトドアツールとしての楽しさ・便利さも追求した機種という意味では、シリーズが続くか続かないかに関わらず一旦の集大成として、ファンならぜひ手にしておくべき機種ではないでしょうか。

  • TORQUE X01とTORQUE G03

    TORQUE X01とTORQUE G03(いずれも2017年発売)

  • TORQUE G04

    TORQUE G04(2019年)

  • ヤマト運輸向けにカスタマイズされたTORQUE G04

    ヤマト運輸向けにカスタマイズされたTORQUE G04

  • 一般販売されていたモデルにはない、ヤマト運輸のコーポレートカラーであるイエローに塗装されている

    一般販売されていたモデルにはない、ヤマト運輸のコーポレートカラーであるイエローに塗装されている

  • TORQUE G03ではHELLY HANSEN、TORQUE 5GではColemanとのコラボモデルが用意されていた。TORQUE G06にはそういったアウトドアブランドとのコラボモデルは現状ないが、キャンペーン特典としてROOT CO.とのコラボグッズが登場する予定

    TORQUE G03ではHELLY HANSEN、TORQUE 5GではColemanとのコラボモデルが用意されていた。TORQUE G06にはそういったアウトドアブランドとのコラボモデルは現状ないが、キャンペーン特典としてROOT CO.とのコラボグッズが登場する予定