27日にスタートしたフジテレビ系ドラマ『パリピ孔明』(毎週水曜22:00~)。累計発行部数160万部突破の人気コミックがドラマ化されるということで、5月に発表されてから大きな話題を集めていたが、「適材適所」と「実写化の意味」を見事に打ち出し、その期待を裏切らない作品に仕上がっていた。
■違和感満載の風貌も天才軍師になる知性
名軍師・諸葛孔明(向井理)が現代の日本・渋谷のハロウィンに若かりし姿で転生し、歌手を目指す月見英子(上白石萌歌)と出会い、彼女の軍師(=マネージャー)として活躍するさまを描く今作。三国志の天才軍師として知られる諸葛孔明を演じるからにはクレバーさが求められるところだが、向井理は明治大学卒業という高学歴もさることながら、そのたたずまいや言動からは紛れもない知性が伝わってくる。
高さ2メートルを超えるという綸巾(かんきん=帽子)が目に入る衣装は、パリピが集結するクラブにあって違和感満載。終盤でパーティーサングラスまでかけると絶妙なミスマッチが笑いのツボを刺激してくるが、直後に披露する自身の立てた戦略の解説シーンでは、向井の知性が圧倒的な説得力を持たせてくれるのだ。
バーカウンターで華麗な手さばきによってカクテルを何度もシェイクする姿も、元バーテンダーという経歴の持ち主だからこその場面で、制作側の遊び心も伝わってくるシーンだった。
一方、英子を演じる上白石萌歌も、adieuの名前で歌手活動を行っているだけあって、その歌声は孔明が惚れ込む納得感を与えている。初回のクライマックスで、喧騒のギャラリーをひきつけた「真夜中のドア~Stay With Me」は、歌声の透明感を伝えるのに最適な選曲に感じた。歌によってテンポ感を身に着けているためか、孔明へのツッコミも、歌唱時と対照的な低いキーで、会話の流れからナチュラルに入ってきて心地よい。
そして、ライブハウスのオーナーで大の三国志オタクである小林を演じる森山未來も欠かせない。インパクト大の風貌だけでなく、森山本人が三国志好きということで、これ以上ない役作りが完成。向井はインタビューで、「森山くんは自分でセリフを考えてくることもあるんです。だから台本よりもマニアックなセリフになるなんてことも(笑)」と話していたが、どの場面でそのスキルが発揮されているのか気になるところだ。
■“劇中場面”を超えてMVクオリティに
そんな「適材適所」なキャスト陣とともに、今作では「実写化の意味」をライブのシーンで証明している。初回から、菅原小春演じる人気シンガーのミア西表、アヴちゃん演じる世界的シンガーのマリア・ディーゼル、関口メンディー演じる歌って踊れるスーパーアーティストの前園ケイジと、どれも“劇中場面”の枠を超えた本格的なパフォーマンスに。演出は、数々のミュージック・ビデオも手がけてきた渋江修平監督だけに、まさにMVや本家の音楽番組を見ているかのような感覚になった視聴者も多かったのではないか。
今作には総勢25組のアーティストが出演することが予告されている。8月には大阪で実際に行われた音楽フェスで公開収録も行っており、ライブシーンは今後も要注目だろう。
そして、初回の疾走感の勢いそのままに、放送直後から次週放送話を動画配信サービス・FODで先行配信するという新たな試みが行われている。歌姫の成長物語の続きをいち早くチェックしたり、一足先にスマホでストーリーを楽しみ、次の放送で迫力のライブシーンを大画面のテレビで体感したりと、それぞれに合ったスタイルでこれまでにない連ドラの楽しみ方ができそうだ。
■第2話あらすじ(先行配信中)
諸葛孔明が月見英子を売り出すべくブッキングしたのは、アートフェスでのライブだった。しかし英子のブースは一番端。しかもその向かいは人気インディーズバンド・JET JACKETのブースだった。不安になる英子だが、孔明は「この戦、勝てますよ」と意味ありげに微笑む。
その頃、JET JACKETのギターボーカル・RYO(森崎ウィン)、ドラム・MASA(高尾悠希)、キーボード・TAKU(松延知明)の3人はスタジオで練習していた。しかし、RYOの様子がおかしく、練習を早々に切り上げて、1人で帰ってしまう。それを孔明が近くで見ていて…。
その後、孔明は寝泊まりしているBBラウンジの倉庫に引きこもる。オーナーの小林と英子が中をのぞくと、卓上コンロで何か毒々しいものを煮込んでおり、倉庫には異臭が漂っていた。毒ではないかと怪しむ2人だが、孔明は取り合わない。
アートフェス当日。RYOにあいさつする英子と孔明の元に、小林が「機材トラブルが起きた」と告げに来る。慌ただしく去っていく3人を見て、余裕の顔になるRYO。そしてJET JACKETのライブがスタートする。果たして孔明と英子は、アートフェスでのライブを成功に導くことができるのか――。
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