シーイヤー(Cear)は、クアルコムの最新SoCと独自の音源処理技術を搭載し、9.3cm角の小型ボディながら1台で3Dサラウンドを楽しめるという新しいBluetoothスピーカー「Cear pavé」9月27日に発表。同日からクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で予約販売を開始した。

  • 「Cear pavé」(シーイヤー パヴェ)

クアルコムの技術提携先であるシーイヤーが開発した製品で、9月27日に都内で開催された「Cear Technology Conference 2023」の中で初披露されたもの。クラウドファンディングの目標金額は1,000万円。定価(39,800円)の20%オフとなる31,800円で購入できる200台限定プランなど、複数の支援プランを用意している。プロジェクト期間は2023年12月31日までで、2024年3月以降に順次配送予定。クラウドファンディングプロジェクト終了後は、量販店などでの一般販売も検討したいとのこと。

最新世代のBluetooth SoC「Qualcomm S5 Gen 2 Sound Platform」(型名:QCC5181)と、背面向かい合わせにした50mm径スピーカーユニット2基、バッテリーを9.3×9.3×9.3cm(縦×横×高さ)/重さ590g以下の小さなキューブ状ボディに詰め込み、さらにシーイヤー独自の“超臨場感音場再生技術”「Cear Field」(特許取得済み)も搭載。ジャイロセンサーとの掛け合わせで、環境に合わせた3Dサラウンドを自動生成することにより「従来の想像をはるかに超える、奥行き、広がり、響きのある3Dサウンドを実現する」とアピールしている。

  • Cear Fieldの概要

Bluetoothスピーカーとして世界で初めて、クアルコムが提供する「Snapdragon Sound」に対応するのも大きな特徴。aptX Adaptiveによる96kHz/24bitオーディオ伝送や、50msec以下の超低遅延性能を実現する。最新のロスレスのaptX Losslessや、Bluetoothの次世代規格「LE Audio」(LC3コーデック)もサポート。複数台のpavéにAuracastブロードキャスト オーディオで接続して音楽を再生する場合、接続台数に制限はないという。ほかにも、クラシック規格のコーデックであるSBCやAACに対応する。スマートフォンアプリからの操作にも対応予定だ。

  • Snapdragon Soundの概要

  • 複数台のpavéを連携させて音場を広げるデモ。今回は5台を連携させていた

  • 音が出ているスピーカーを持ったスタッフが、報道陣らの椅子の間を歩いて行く。特定の方向からの音の強さを感じさせない、「音の中に没入している感じ」が楽しめた

  • 新しいpavéを、Androidスマートフォンにつないだ開発用の評価ボードを使ってワイヤレス接続し、ピアノアプリの遅延を確かめられるデモの様子。鍵盤にふれるのとほぼ同時に音が出るので、音ズレなどの違和感はほとんどない

  • Snapdragon SoundとLE Audioをサポートする、開発用の評価ボードの上に、クアルコムのBluetooth SoC「QCC5181」が見えた

本体には通話用マイクを4基上面に内蔵し、指向性制御やノイズ抑圧を含む、収音のための音響信号処理技術「CearMicrophone」も搭載。複数人でのWeb会議でもクリアな音声を送り出せるとしている。Snapdragon Soundを構成する、高品質な双方向音声接続のためのaptX Voiceコーデックも採用した。なお、スピーカー本体は有線接続も可能で、96kHz/24bitのUSBオーディオ入力に対応するUSB Type-C端子(充電兼用)やステレオミニのアナログ音声入力を背面に装備している。

同カンファレンスでは、シーイヤーの最新の立体音場再生技術「Cear Field」をはじめ、Bluetoothの新規格「LE Audio」を活用した新しいサウンドデモを体感できた。詳細は追ってレポートする。

  • 上面。黒い4つの点がマイク穴

  • 両側面に、50mm径のスピーカーユニットを背中合わせで内蔵

  • 背面のUSB Type-C端子と、ステレオミニのアナログ音声入力

なお、シーイヤーの前身は2011年に共栄エンジニアリングが開設した、音響技術を開発するための事業部であり、2016年には新製品と同じ名前のBluetoothスピーカー「pavé」を発表。独自のcear Fieldを採用し、包み込むようなサラウンド再⽣を追求したBluetoothスピーカーで、クラウドファンディングに出したところ想定の4倍近い支援を受け、後に一般販売に至った。2018年にグループ企業として独立し、2019年にはデジタルアンプを積みaptX Adaptiveコーデックにも対応するなど機能強化した後継機種「pavé2」のプロトタイプも発表している。

  • 初代pavéを、AndroidスマートフォンとSBCコーデックで接続し、ピアノアプリで遅延の具合を確かめられる比較デモの様子

pavéはフランス語で「(石畳の)敷石」を表す単語であり、従来モデルのpavéでも複数台連携によって“音を敷き詰める”ような体験を目指していたとのこと。当時は技術上の課題などでそういったサウンド体験を提供することは難しかったそうだが、今回の新しい「pavé」ではクアルコムの新しいSoCやBluetooth規格を採用し、独自のCear Fieldなども盛り込んで実現したかたちだ。

  • シーイヤーの歴史