NTT東日本 千葉西支店は、9月15日に千葉商科大学 市川キャンパスで開催された国府台コンソーシアム「防災の日」に出展した。
さまざまな防災に関する体験企画、防災品展示などに触れられる本イベント。「防災体験」プログラムとして、市川市立国府台小学校4年生の約90名が防災のあり方などについて学んだ。
■社員向けドローンパイロット養成用シミュレーターも体験
今回の企画を主催したのは、千葉商科大学や和洋女子大学、市川市の小中高など、国府台地区の教育機関が中心メンバーとなっている「国府台コンソーシアム」。2017年12月、国府台地区は江戸川沿いの高台にあるため、防災拠点としての役割が期待されていることなどを背景に設立されたという。
同コンソーシアムの分科会では、防災拠点や防災教育拠点として機能化するための協議を実施。千葉商科大や和洋女子大などの学生も巻き込みながら、メンバー施設の相互利用、相互の連携による安心・安全なまちづくりや地域の活性化などに向けた活動に取り組んでいる。
千葉商科大学で行われる「防災の日」企画は、「全機関で防災活動について協力して取り組みたい」という意見のもとで実施されており、今回が2回目の開催。地域や学校向けに防災知識/災害時の正しい行動を伝える活動に注力するNTT東日本も、昨年に引き続き2回目の参加となった。
ICTを活用した地域密着の防災教室なども実施しているNTT東日本は今回、水害リスクの対策として、ARを用いた水害災害の擬似体験コーナーを実施した。
また、NTT東日本では台風や地震発生時に被災エリアの道路寸断、土砂崩れ・橋倒壊状況等の調査・把握、ケーブル復旧作業(通線)の実施にドローン活用を進めており、被災状況確認や通信ケーブル運搬などの際に活躍するドローンも展示した。
展示されていたのはNTT東日本が保有する空撮ドローン(ANAFI Ai/WORK)、通線ドローン(EC101)といった災害時使用ドローン機材と、点検ドローン(Skydio 2+)、農業ドローン(AC101)といった通常時使用ドローン機材。NTT東日本の社内でパイロット養成用に用いられるシミュレーターの体験もでき、小学生たちが真剣な表情でコントローラーを操作する姿が印象的だった。
■楽しみながら防災意識が高まるコンテンツの数々
本イベントの会場である千葉商科大では、避難ルートを知る「防災・ロゲイニング」、避難体力をつける「防災ノルディックウォーク」、「サバイバル・キャンプ」といった学生主体の防災教育にも注力しているようだ。
サバイバルキャンプは行政などの組織的救出・支援(公助)が始まるまでに自力で生き抜く自助の力を身につけ、被災した地域住民を助ける力(共助)につなげていくことが目的。取材時は1号館前の緑地でマッチから薪に火を起こすファイヤープログラムを実施していた。
レトルトカレーとパックご飯を湯煎してこの日の昼食とするらしい。ちなみにこちらのレトルトカレーはフードロス対策として学生と学食が共同開発したもので、防災食としても活用されるものだという。
国府台コンソーシアムにはオブザーバとして市川市役所などの自治体も参加している。同大学の1号館ラウンジでは、市川市が避難所用に備蓄を進めている防災用品が展示されていた。
従来、非常食は何人分というセット単位での備蓄を進めていたそうだが、コロナ禍なども経て個食タイプの非常食へと段階的に切り替えを進めているという。非常食だけでなく段ボールベッド、組立式トイレなどの備蓄品も地域の避難所となっている各小学校の備蓄倉庫に保管され、4人用の防災テントは各小学校に20基弱ずつ準備しているそうだ。
防災テントは着替えや授乳のスペースとしての活用など、プライベートが必要なときに使うことも想定されており、こうした市の備蓄品以外にも市民の自助・共助に役立つ防災グッズも紹介していた。
その隣でブースを出していたのは、防災車両(消防車)や防災被服などの防災事業を展開する帝国繊維。消防ホースのトップメーカーという同社だが、ここでは実際に消防が用いるレスキューツールに遊びながら触れられるコーナーを用意した。
交通事故などで人を救い出すために使われる潰れた車などをこじ開けるための機材は、ハイパワーながら繊細な作業が可能な救助用の油圧カッターを使ってジェンガに挑戦するという趣向。鉄道での人身事故などの際に20トン以上の車両を持ち上げる機材も紹介していた。
1号館の教室でもさまざまなコンテンツが展開されており、火災時の建物からの避難をテーマにした迷路は多くの小学生たちで賑わっていた。火災時には煙を吸わないように低い姿勢で、床上30センチほど空間を這うようにして移動する必要があるという。
また、5人一組で倒壊家屋から中の人を救出する体験ができるコーナーもあった。250キロという重さの構造物もテコの原理などを使って浮かせ、建物と地面の間に木材を噛ませる、という安全な救出活動の方法を学べる。お腹や顎にバールなどが当たって怪我しないよう、体重を乗せて際は必ず体を横にして力を加えるのがポイントのようだ。
ARによる浸水疑似体験に関しては筆者も実際に体験してみたが、浸水時の徒歩移動がいかに困難で恐怖を感じるものかがよくわかった。国府台コンソーシアム「防災の日」は、小学生や学生だけでなく大人も楽しみながら防災意識を高められるイベントのようだ。