ダイキン工業(以下、ダイキン)の家庭用エアコン「うるさらX(Rシリーズ)」に、2024年の新モデルが登場しました。うるさらXは、換気や加湿もできるダイキンのエアコン最上位シリーズ。フラッグシップだけに既存のモデルも高い省エネ性能を誇りますが、新モデルはさらに節電機能を強化しています。

新機能の「節電自動」では、リモコンの節電自動ボタンを押すと消費電力を抑える賢い運転を実行できるように。新モデルはおもに6畳から29畳用までの11モデルを用意し、11月1日発売予定で価格はオープン。推定市場価格は14畳モデル(4kWモデル)が350,000円前後です。

  • 新うるさらXの室内機。室内機のデザインは既存モデルと変わっていません

ユーザー努力の節電はもう限界?

2023年の夏はとくに電気代の高騰が話題になりました。地域によっては昨年(2022年)末の4割以上も電気代が値上がりし、さまざまなメディアで「節電」というキーワードが踊っています。高機能エアコンはそもそも省エネ性能が高いのですが、エアコンは稼働時間が長い家電だけに、さらなる節電効果を求めるユーザーも多くいます。

ユーザーが能動的にできる夏のエアコン節電といえば、効果的なのが「設定温度を上げる」こと。ところがダイキンの調査によると、今年の冷房設定温度は昨年とほぼ同じだったそうです。猛暑や酷暑といわれる日本の夏において、設定温度を高めにするのはなかなか難しいかもしれませんし、がまんせず冷房を使いましょう(これはその通りです)と呼びかけが多かったこともあるかもしれません。そこで新うるさらXに搭載されたのが「節電自動」機能です。

  • ダイキンのIoTエアコンのデータから調べた夏(昨年と今年)の「設定温度」比較。今年は28℃設定にするユーザーがやや増えているものの、全体的に大きな変化はありません

新しい「節電運転」とは、エアコンの安定運転時に可能な限り室内温度をキープしつつ、低出力で運転すること。リモコンの「節電運転」ボタンを押すと、部屋が設定温度に達したあと、エアコンの電気代を2割ほど抑えられる運転方法に切り替えます。

  • 右下にある緑のボタンが新うるさらXの「節電自動」機能

エアコンの電力消費は8割が「圧縮機(コンプレッサー)」によるものといわれています。そして「節電自動」のキーポイントとなるのは、圧縮機の回転速度です。

圧縮機は内部パーツが回転することで冷媒を圧縮し、冷媒温度をコントロールします(冷媒を圧縮すると温度が上がり、外気温よりも高温にすることで屋外へ熱を放出しやすくします)。このとき圧縮機を高速で回転させると電気をたくさん消費し、低速回転だと省エネ運転が可能になるのです。

  • うるさらXの心臓部ともいえる圧縮機。ダイキンは低速回転でも効率的に冷媒を圧縮できる独自の「スイング圧縮機」を導入。新しい節電自動機能は「低速回転」に強い圧縮機があるからこその機能といえます

冷房を起動すると、エアコンの圧縮機は最初に高速回転してすばやく部屋を冷やそうとします。そして、室内温度が設定温度まで下がると「安定運転」に移行。ここからは部屋の温度を維持するだけなので、圧縮機はそこまで高速に回転させなくてもよいのです。

「節電自動」機能は、安定運転時の回転を通常運転よりもさらに遅くすることによって、消費電力を抑えています。とはいえ、ただ単に圧縮機の回転数を落とすだけでは部屋の温度が設定温度よりも上がってしまいます。そこで「節電運転」では、運転開始時の部屋をモニタリングして(温度の下がり方、室温、外気温、電力など)、「部屋の温度変化を最小限に、かつ最大の節電となる回転数」で運転する仕組みです。

ただし、通常よりも回転数を落とすため、室内温度は「通常運転時と同じくらい快適」とはいえません。ダイキンによると、節電自動時は外気温によっては最大2℃ほど設定温度より高くなることもあるそうです。

  • 通常運転した場合(黒線)と、節電自動運転(青線)の冷房時温度変化の違い。節電自動運転時でも設定温度(赤線)を大きく超えていません

アプリも進化、帰宅時に自動でエアコンをONに

節電自動は、既存のハードウェアを賢く運用した機能。一方、23~26畳用の大型モデルは室外機の圧縮機と熱交換器を見直し、ハードウェア自体の省エネ性能を向上させています。ダイキンによると、11年前の同社製エアコンと比較すると年間の消費電力量は16%ほど抑えられるそうです。

  • 熱交換器や圧縮機を見直すことで、23~26畳用モデルは2027年度省エネ目標基準値も達成

うるさらXはスマートフォンと連動するIoTエアコンですが、専用アプリにも新機能の「スマートフォンのGPSとの連動」が加わります(2024年5月実装予定)です。ユーザーの位置情報からエアコンの運転をサポートできるようになります。外出時に消し忘れを通知する「おでかけ切り忘れ通知」や、帰宅するとき家に近づくとエアコンの運転を自動開始する「おかえり運転」といった機能が利用できます。

  • 「Daikin Smart APP」に追加される、スマートフォンのGPSと連動した2つの新機能。この機能は2024年5月に実装予定です

ダイキンのうるさらXといえば、水を補給しなくても部屋を加湿できる「無給水加湿」、節電と除湿能力のバランスがよい独自の「リニアハイブリッド方式」除湿、屋外の空気取り込みや室内からの排気が選べる換気機能などで人気のエアコンです。新モデルも、これらの機能はすべて継続して備えています。

今回のモデルチェンジでは、こうした人気機能にプラスして「節電自動」「圧縮機や熱交換器の見直しによる省エネ性能向上(大型モデルのみ)」「アプリにGPS連動機能を追加」の3つが加わりました。節電自動は運転制御による省エネ機能、GPS連動機能もエアコンのハードウェアとは関係ない機能。正直にいえば、新モデルにはそこまで大きな変更点はありません。とはいえ、電気代の高騰が問題になっているいま、より手軽に節電が見込める手段が増えるのはユーザーにとってうれしいことです。