ホンダが新型「アコード」を日本で発売する。「Google ビルトイン」搭載の賢いクルマで、ホンダによれば「日本市場をけん引していくモデル」となるそうだが、使い勝手はどんな感じ? 事前取材で新型アコードに乗り込み、「OK Google」と話しかけてみた。
アコードは日本で売れている?
アコードは1976年に初代が誕生したロングセラーカー。新型は通算11世代目となる。
2023年1月に北米で発売済みの新型アコードを日本に導入すると決めたホンダ。日本ではセダンタイプのクルマがどんどん少なくなっているが、新型アコードは「Honda SENSING 360などの最新安全技術やインフォテイメント技術、Google ビルトインを兼ね備え、日本市場をけん引していくモデルとして」導入を決めたそうだ。予約の受け付け開始は2023年12月、発売は2024年春の予定。
現行型(10世代目)アコードは日本で売れていたのか。ホンダに聞くと、2022年の国内販売実績は2,080台だったそうだ。現行型については「デザインや走行性能の評価は高いものの、ナビ、コネクト、安全装備はやや物足りない」といったフィードバックを得ているという。ユーザー層は60代が中心で、40~50代は他社のセダンに流出するなどして数を減らしていた。
新型アコードは、現行型では「物足りない」との評価を受けていた部分に新機能を採用するなどして磨きをかけたモデルだ。実際のところ、使い勝手はどうなのか。
車載Googleの実力は?
「Google ビルトイン」搭載の新型アコードはナビが「Google Maps」になる。普段からスマホでヘビーに使っている地図なので、正直、ほかの純正ナビよりもかなり使いやすい。「OK Google」(オッケーグーグルと平板に日本語的に発音すれば問題ない)と話しかければ「Google アシスタント」が起動。ポッドキャストや音楽のサブスクなどのアプリを「Google Play」から落として車内で使うことも可能だ。
どんなにいいクルマであろうと、ナビ周りの使い勝手がよくなければ印象は悪くなる。車内の装飾は先進感にあふれ、インパネ中央には超大型のディスプレイが鎮座する最新の電気自動車(バッテリーEV=BEV)であっても、音声認識機能の付いたナビの反応が悪くて目的地の設定に手間取ったり、最終的には手持ちのスマホで目的地の電話番号を調べ、ナビに手打ちで番号を打ち込まなくてはいけなかったりすれば、いかにも古臭いクルマに乗っているという気分になってしまいかねない。
その点、Google搭載の新型アコードは、かなり便利に使えるクルマに仕上がっていると思った。ナビの目的地設定を音声で行ってみたが、特に声量を上げず、あえて明確な発声を心掛けずに話しかけても、Google アシスタントはしっかりと目的地を聞き取ってくれた。
Google アシスタントではナビの設定や空調の管理のほか、音楽やテレビなどメディアの操作、時間・予定の管理、情報や答えを探す(検索してもらう)、電話を掛ける、メッセージを送信するなどの機能が使える。
Google ビルトインは今後、ホンダ車で採用が広がっていくのか。全面的な置き換えもありうるのか。その点についてホンダからは、「今後はお客様のニーズや車種適正に合わせて検討してまいります」との回答が得られたのみだった。
ホンダ初の「ダイヤル」も試してみた
HMIでいえば、国内のホンダ車で初採用となる「エクスペリエンスセレクションダイヤル」も注目すべき新機能だ。回してメニューを選び、押し込んで決定するタイプのダイヤルなのだが、空調/オーディオ/照明の組み合わせを8種類まで記憶させておくことが可能で、ダイヤル操作でお気に入りの組み合わせを一発で呼び出すことができる。
例えば出勤時は涼しめの温度/ヒップホップの曲/赤の照明、帰宅時は温かめの温度/クラシックの曲/青の照明といった感じで登録しておくとか、乗る人ごとにお気に入りの設定を保存しておくなどしておけば、かなり便利に使えそうだ。
安全装備では、こちらも日本向けホンダ車で初採用となる「Honda SENSING 360」を搭載。約100度の有効水平画角を持つフロントセンサーカメラに加え、フロントレーダーと各コーナーに計5個のミリ波レーダーを装備し、車両の周囲360度のセンシングを実現するシステムだ。2025年にはハンズオフ機能を追加して発売する予定だという。
Google搭載や安全装備の進化などで「知能化」が進んだ印象の新型アコードだが、クルマとしての性能も当然ながら向上している。
ハイブリッドの「e:HEV」は新機構となり、モーター用とエンジンドライブ用に個別のギアを設定。それぞれに最適なレシオ設定が可能となった。モーター走行では最高速度を引き上げながら、エンジンドライブモードでは高速クルーズでも低回転で運転できるようレシオを最適化させることができることから、駆動力と静粛性の両立を実現できたそうだ。フライホイールにはプリダンパー構造を搭載。発電時の振動を抑制し、アイドリング発電中の駆動系ノイズを低減させた。
新しいCVTは平行軸配置の利点をいかし、走行用モーターの最大トルクを現行型から大幅に増大させている。
ホンダが新型アコードの日本導入を決めた理由としては、ユーザーの中でも「高級志向」な顧客に対する選択肢を残したいとの考えもありそうだ。ホンダといえば軽自動車「Nシリーズ」やミニバンの「ステップワゴン」、根強い人気の「フリード」など数多くの売れ筋商品を展開しているが、アコードや「オデッセイ」など、高価格帯のクルマに乗るユーザーをホンダブランドにつなぎとめておくことも大切だからだ。そういう意味でも「日本市場を牽引する」モデルになれるのかどうか、新型アコードの売れ行きに注目したい。