第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが開幕。初戦の羽生善治九段―近藤誠也七段戦は9月20日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりの熱戦を113手で制した羽生九段が挑戦に向け好スタートを切りました。

相掛かり空中戦

本リーグは前年度の上位4名と予選を勝ち抜いた3名の計7名が総当たり戦で挑戦者を決めるもの。注目の開幕戦は昨シーズン挑戦者として七番勝負を沸かせた羽生九段と、3年連続4期目の在籍となる近藤七段の対決となりました。事前の抽選で先手番に決まっていた羽生九段は迷いなく相掛かりの戦型に誘導します。

空中戦らしく大駒の飛び交う中盤戦が続きます。羽生九段が横歩を取って一歩得を果たしたのに対し、後手の近藤七段は攻防の角打ちで対抗。手順にこの角を8筋に利かせて飛車先突破を目指します。手筋を駆使した応酬はやがて飛車角交換で一段落。近藤七段は手にした二枚角をともに馬として盤上左辺を制圧しました。

終盤のエアポケット

先手の羽生九段もすぐ敵陣に飛車を打ち込み局面は一気に終盤戦に突入。二枚飛車の攻撃力が大きく徐々に形勢の針は先手に傾きますが、近藤七段も必死の攻めで手番を渡しません。両者秒読みに追われるなか、羽生九段が自陣桂を打って金取りを受けた局面が本局における分水嶺となりました。

詰めろを続けたい近藤七段は5筋に金を打って先手玉を上から攻めますが、結果的にこれが敗着に。局後の検討では代えて2筋に金を打って挟撃態勢を築けば羽生玉は受けなしだったとされました。近藤七段としては時間切迫に泣いた格好です。終局時刻は19時9分、最後は近藤七段の王手ラッシュを正確にかわし切った羽生九段が勝利を飾りました。

次の対局は9月22日(金)に渡辺明九段―菅井竜也八段が予定されています。

  • 2016年度には近藤四段が羽生三冠(ともに当時)から金星を挙げたが、本局では羽生九段が貫録を示した(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

    2016年度には近藤四段が羽生三冠(ともに当時)から金星を挙げたが、本局では羽生九段が貫録を示した(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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