アクションカメラの定番「GoPro」の最新モデル「GoPro HERO 12 Black」が登場しました。日本での発売に合わせ、同社創業者兼CEOのNicholas D. Woodman(ニック・ウッドマン)氏が5年ぶりに来日。メディアのインタビューに応えました。
インタビューでウッドマン氏は、さらなるラインナップ拡充やサブスクユーザーのさらなる獲得を目指す考えを示しました。
ユースケースに合わせた新カメラも開発
――発売に合わせての来日となりました。日本はGoProにとってどんな市場ですか。
ウッドマン氏:日本市場は世界の中でも力強い市場で、アクティブなユーザーも多い。今後、さらなるリテール面での存在感、プレゼンスも拡大していきたいと考えています。コロナ禍で、日本市場での販売が多少縮小したのは確かですが、回復基調にあり、さらなる成長につなげていきたいと思っています。
今回のHERO 12 Blackは、日本市場にも適したカメラです。日本はプロ志向のユーザーが多く、今回はプロ向けの機能が強化されています。日本は最先端の場で、カメラ好きの方も多い日本人には、新製品が刺さるのではないでしょうか。
それに加えて、よりカジュアルなSNSの投稿をする人も増えて、スマホを使う人が多いのですが、HERO 12 Blackは縦動画をそのまま横持ちで撮影できるモードを搭載しました。「スマホでできる、それ以上のこと」を私たちのカメラでも撮れるという点も伝えていきたいと思います。
――スマホカメラも、最近は超広角や強力な手ブレ補正を搭載しています。差別化のポイントは?
ウッドマン氏:スマホカメラでは捉えきれないところをキチンと撮影し尽くす、そういう目的の人を助けるというところにあると思います。機能面や性能面、実際のユースケースにおいてもそうです。スマホカメラの機能が上がっても、スマホが使いづらいシーンはあります。スポーツ、アドベンチャーの詰まった旅などですね。
それ以外にも、例えばプロの方向性、テレビ局での利用もそうです。映画の分野でも、スマホカメラでは不十分というところで、まさにGoProを使っているユーザーがいます。カジュアルユーザーもプロ志向のユーザーも網羅したい、というのが戦略の軸です。
ただ、今後、新たなタイプのカメラも開発していく考えです。エントリーレベルから最高のパフォーマンスを求めるプロフェッショナルまで、さまざまなタイプのユーザー向けにカメラを開発していくつもりです。これまでよりもさらに大きな市場があると考えています。
HERO 12 Blackは、プロとカジュアルユース、両方のニーズを満たす機能を備えています。2つのニーズを満たすために、2つのモードを搭載しています。「イージー」モードの使い方はとても簡単。使いたいデジタルレンズの設定を選ぶか、スローモーションのレートを選ぶだけ。レンズとフレームレートに対して、常に可能な限り最高の解像度にカメラを設定します。
より高度なコントロールをしたい場合、「プロ」モードに切り替えることができます。カメラのすべての機能がアンロックされ、最大限にGoProを活用したい上級ユーザーに最適です。
――まったく新しいタイプのカメラを開発しているのですか?
ウッドマン氏:具体的なことは言えませんが、さまざまなユースケースに対応する新しいタイプのカメラを開発しています。ユーザーの多くは、GoProにさまざまなタイプの性能を求めています。1つのカメラデザインですべてを開発するよりも、カメラの種類を増やす方が効果的だと考えています。
――これまで、360度やminiなどのカメラもありましたが、ラインナップを統合していくのかと考えていましたが、今後は拡大するということですか。
ウッドマン氏:はい、そうです。価格の異なる同じカメラのバージョンをたくさん用意するより、まったく異なるユースケースに対応するカメラの数を増やすことに重点を置いています。
――どんなカメラか、何かヒントはありますか?
ウッドマン氏:我々のユーザーからは、よりハイエンドで、よりプロフェッショナルなカメラの需要が多いことは確かです。
サブスクは250万ユーザーへ
――新製品では、編集ツール「Quik」に新たにデスクトップ版が登場すると発表されました(11月にMac版、2024年にWindows版をリリース予定)。
ウッドマン氏:私たちがビジネスを成長させる、カメラ以外のもう1つの方法は、GoProを使用しているかどうかにかかわらず、誰でも優れたコンテンツクリエイターになれるよう支援することです。それがQuikです。
デスクトップ版は、サブスクリプションを通じて利用できるようになりますが、GoProを持っていない人で、高性能な編集ソフトを探している人にも販売する予定です。
Adobeの高価で複雑なツールよりもはるかに便利で、スマートフォンに付属の無料ツールよりも高機能です。ソフトウェアを通じてサービスを提供することは、GoPro以外のカメラを使っている人にもアプローチする重要な方法だと考えています。
GoPro成長のポテンシャルとしても、ビジネスにとっても、サブスクリプションは重要です。この9月末までに、サブスクユーザー数を250万ユーザーまで伸ばしたいと考えています。前回お会いした2019年には、このサブスクユーザーは存在しなかったので、ここまで拡大しました。
我々のソフトウェアのエコシステムは、ほかのカメラメーカーができていないことです。GoProは、コンテンツクリエイターに完全なソリューションを提供しています。HEROカメラを充電すると、自動的にコンテンツがクラウドにアップロードされ、アプリでコンテンツに簡単にアクセスできます。
11月からは(Mac版の)デスクトップアプリでもアクセスできるようになり、モバイル、デスクトップ、クラウド間でプロジェクトが共有できるようになります。
GoProは、ほかのデジタルイメージング企業とは一線を画す、コンテンツクリエイターのための完全なエコシステムを構築しています。GoProユーザーがほかのカメラを使っていることも理解しているので、どのカメラで撮影したコンテンツも、このエコシステムに簡単にインポートできます。
――最後に、今回のHERO 12 Blackで一番お気に入りの機能を教えて下さい。
ウッドマン氏:このMaxレンズモジュラー2.0です。従来のレンズモジュラーは2.7K/60fpsのビデオでしたが、2.0では4K/60fpsのビデオ撮影が可能になりました。重要なのは、8:7のイメージセンサーと組み合わせることで、以前よりもはるかに広い177度というワイド撮影が可能で、最高の没入型のMax HyperViewというレンズ設定でかなりの臨場感を得られる点です。
Max HyperViewはゆがみはありますが、サイクリング、スキー、サーフィン、その他のあらゆる種類のスポーツに最適です。
ゆがみの少ないMax SuperViewは、周囲の環境全体を捉えるのに優れた広角の動画が撮影できます。かなりの広視野角を得られますが、ゆがみが不要なときは広角でも撮影できて、これを使い分けらるので、レンズモジュラー2.0は私にとってHERO 12 Blackを“Super HERO”に変えてくれます。
あとは、カメラを回転させながら撮影しても水平が維持される水平ロックもあります。ちょっとクレイジーかもしれませんが、「めちゃくちゃサイコーですね!」。
最後は日本語でアピールしてくれたウッドマン氏。GoPro HERO 12 Blackは8:7という独特のイメージセンサーによってレンズ設定を変えても画角が変わらず、さらに縦動画の撮影も可能になって、カジュアルなSNS投稿にも対応して利用シーンが拡大しました。
さらに、Log、LUTの対応で、よりプロフェッショナルな現場にも対応できるようになっています。特に連続撮影で、熱によるシャットダウンまでの時間が35分だったところ、70分と2倍の撮影時間になった点は、プロの現場に求められていた機能でしょう。
今後、ユースケースに応じたラインナップ拡充も明言したウッドマン氏。今後の新製品にも期待したいところです。