HPが”フラッグシップノートPC”として位置付けている「HP Dragonfly G4」。約1kgからの軽量ボディに、ハイブリッドワークに便利な機能や、ビジネスシーンで求められる優れたセキュリティ機能を満載した、ハイエンドビジネスモバイルPCに仕上がっている。
軽さと堅牢性を両立するスタイリッシュなマグネシウムボディ
HP Dragonfly G4は、HPのビジネスモバイルノートPCの最上位モデル「HP Dragonfly」シリーズの第4世代モデルだ。従来のHP Dragonfly G3の特徴を受け継ぎつつ、進化を遂げている。今回の試用機の主なスペックは以下の通りだ。
表1 | HP Dragonfly G4(試用機)の主なスペック |
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CPU | 第13世代Intel Core i7-1355U(10コア/12スレッド) |
メモリ | LPDDR5 32GB |
ストレージ | 512GB PCIe SSD |
OS | Windows 11 Pro 64bit |
ディスプレイ | 13.5型 1,920×1,280ドット、タッチ対応、スタイラスペン対応 |
カメラ | 5MP Webカメラ |
無線機能 | Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.3 |
ワイヤレスWAN | 5G対応 |
生体認証 | 顔認証カメラ、指紋認証センサー |
インターフェイス | Thunderbolt 4×2、USB 3.2 Gen1 Type-A、3.5mmオーディオジャック |
サイズ/重量 | 約297.4×220.4×16.4mm/約1.15kg |
本体サイズや重量は、従来モデルと同等。ボディ素材にマグネシウム合金を採用し、重量は約1kgからとモバイルノートPCとして申し分ない軽さを実現。試用機ではワイヤレスWANを搭載していることもあって実測で1,145gと1kgを上回っていたが、それでも手にすると十分に軽く感じる。
より軽量なモバイルノートPCも存在してはいるが、HP Dragonfly G4もまずまず納得できる軽さで、毎日PCを持ち歩く必要のあるビジネスマンにとっても心強いはずだ。
同時に、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810H」準拠の落下や衝撃、振動など19項目に及ぶ過酷な耐久性試験をクリアする申し分ない堅牢性を確保。しかも圧縮荷重試験は実に500kgfという非常に過酷な試験をクリアしている。
実際に本体をやや強めの力でひねったり天板を押さえてみても、全く不安を感じないほどの強度を実感できる。モバイルノートPCは落下などの不意のトラブルに見舞われやすいが、これだけしっかりとした堅牢性があれば、安心して持ち出せるだろう。
そして、ビジネスモバイルPCらしからぬスタイリッシュなボディも大きな特徴。全体的にシンプルなデザインではあるが、スレートブルーと呼ばれる濃いグレー系のボディカラーと合わせて、ビジネスPCとは思えない上質さが伝わってくる。ビジネスPCといえどもデザイン性に優れるPCを使いたいと思うのは当然で、その点でも大きな魅力になるはずだ。
この他、ボディ素材のマグネシウム合金はリサイクル素材を90%も使用するとともに、キーボードのキーキャップや内蔵スピーカーカバー、梱包材などにも豊富にリサイクル素材を採用している。サステナブルな仕様は、特に近年、導入企業にとっても重要な要素となっていることからも、導入を後押しする特徴と言える。
アスペクト比3:2のWUXGA+液晶はプライバシー保護機能も搭載
ディスプレイにはアスペクト比が3:2、1,920×1,280ドット表示対応の13.5型液晶を搭載する。これは従来モデルと同じものだが、一般的なフルHDディスプレイと比べて縦の解像度が200ドットも多く、より多くの情報を表示できる。
当然、情報量が増えると作業効率が高まる。単一のアプリ利用時はもちろん、複数のアプリを同時利用する場合でもそれぞれに多くの領域を確保できるため、生産性を大きく高められる。
また、試用機のディスプレイは10点マルチタッチおよび、オプションの「HP Pro Pen」などのスタイラスペン入力にも対応していた。標準仕様のディスプレイはタッチ非対応だが、カスタマイズでタッチ対応ディスプレイを選択することで、タッチ操作やペン対応が不可欠な業務にも対応可能だ。
そして、従来モデルから引き続き搭載しているのが、プライバシー保護機能「HP Sure View Reflect」だ。HP Sure View Reflectをオンにすると、ディスプレイの視野角が大幅に狭まり、横からの覗き込みを防止できる。もちろん正面からの視認性にはほとんど影響がないため、利用者の作業効率を大きく低下させることもない。
ハイブリッドワークが一般的となり、外出先や移動中にPCを利用して作業を行う場面も増えているが、それに伴って覗き込みによる情報流出の事例も増えている。HP Sure View Reflectを利用することで覗き込みを防止し、情報流出の危険性を低減できる点は、企業にとっても大きな魅力となる。
ただ、このHP Sure View Reflectによるものなのか、通常時でもディスプレイの視野角はやや狭い印象。大きく視点を移動させると、明るさが大きく変化する。ディスプレイはグレア仕様で、特に天井の正面などが映り込むと画面全体にギラつきが発生してしまう。
個人的にはもう少し視野角を広く、またギラつきも抑えられているとありがたいと感じるが、企業にとってはやはりセキュリティが優先されるはず。そのため、表示品質とセキュリティ機能のどちらを優先するかによってディスプレイの評価は大きく変わりそうだ。
バックライト内蔵アイソレーションキーボードを搭載
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーション型キーボードを搭載。主要キーのキーピッチは約18.7mmで、ほぼフルサイズと考えていい。Enterキー付近の一部キーでピッチが狭くなっている部分もあるが、その部分も窮屈な印象はなく、配列も自然で、フルサイズキーボードと全く同等の印象でタイピングが可能だった。
キーストロークは1.3mmとやや浅い。ただ、強めのクリック感によってそこまで浅い印象は感じない。タッチはやや硬めで、しっかりキーを押してタイピングできる。標準でキーボードバックライトを搭載しており、暗い場所でもキーを認識しやすく、場所を問わず快適なタイピングが可能だ。
ただ、電源ボタンがキーボード最上段のDeleteキーの左に配置されている点は気になる。電源ボタンは他のボタンよりも堅く、より強い力で押さないと反応しないよう配慮されてはいるが、できればキーボードとは異なる位置に搭載してもらいたいところだ。
タッチパッドはクリックボタン一体型で、サイズもパームレスト部の縦幅をほぼ最大限活用した大型のものを搭載している。ジェスチャー操作も含めて快適に操作できる。ただ個人的には、タッチパッドを本体の中央ではなく、キーボードのホームポジションに合わせて搭載してもらいたかった。
包括的なセキュリティ機能「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」を搭載
HP Dragonfly G4は、ビジネス向けモバイルPCということで、非常に豊富なセキュリティ機能を搭載。先ほど紹介したディスプレイのプライバシー保護機能「HP Shre View Reflect」もそのひとつだが、そちらを含めた「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」という包括的なセキュリティ機能を搭載する点が大きな特徴となっている。
HP WOLF SECURITY FOR BUSINESSでは、OSはもちろん、PCのファームウェアやストレージなどのパーツ、外部接続インターフェイスなど、ソフトウェアからハードウェアまでを網羅する包括的なセキュリティ機能だ。通常のマルウェア対策はもちろん、BIOS書き換えの抑制や、万が一BIOSが書き換えられた場合の自動復旧などの高度な攻撃にも対応でき、高いレベルでPCを保護できる。
また、ユーザーの利便性とセキュリティ性を高いレベルで両立できる機能も多く搭載。Windows Hello対応の顔認証カメラと指紋認証センサーを同時搭載することで、通常は顔認証を利用しつつ、マスク装着時などは指紋認証を利用と場合に応じて使い分けられる。
同時に、近接センサーを利用して利用者の離席や戻りを自動認識し、離席時の画面ロックと戻り時の自動復帰をサポートしている点も特徴だ。この他にも、内蔵ストレージの暗号化に加えて、データの感染消去機能などを搭載している。
近年のPCへの攻撃は高度化かつ巧妙化していることや、万が一攻撃を受けると企業にとって計り知れない損失が発生する可能性があることを考えても、こういった高度なセキュリティ機能を利用できる点は大きな魅力と言える。
5G対応ワイヤレスWANを搭載
試用機の基本スペックは冒頭でまとめたとおりなので、ここからは基本スペック以外を紹介する。
無線機能は、Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)準拠無線LANとBluetooth 5.3を標準搭載。そして、オプションとして4Gまたは5G対応のワイヤレスWANも搭載可能。試用機では5G対応ワイヤレスWANを搭載していた。ワイヤレスWANはSIMロックフリー仕様で、nanoSIMまたはeSIMが利用できる。今回、NTTドコモのnanoSIMを装着してみたところ、問題なく5Gで通信可能だった。なおnanoSIMトレイは左側面に用意している。
外部ポートは、左側面にHDMIとThunderbolt 4を、右側面にThunderbolt 4、USB 3.2 Gen1 Type-A、3.5mmオーディオジャックをそれぞれ用意。ビジネスモバイルPCとしては有線LANも用意してもらいたかったところだが、Thunderbolt 4が2ポート用意されているため拡張性に大きな不安はない。
この他、AIノイズキャンセリング機能や、カメラで捉えた映像で人物を中央に自動トリミングしたり、明るさ調整、背景ぼかしなどを行う機能も用意。これら機能はWeb会議で非常に役立ちそうだ。
ACアダプタはUSB Type-C接続のUSB PD準拠のものが付属する。出力は65Wで、Thunderbolt 4に接続して利用する。サイズは特別コンパクトではなく、付属電源ケーブルが太いこともあってややかさばる印象。重量も電源ケーブル込みで308gと少々重い。本体と同時に携帯する場合には、より小型軽量の汎用USB PD準拠ACアダプタを利用しても良さそうだ。
パフォーマンスは申し分なく、駆動時間も長い
ではベンチマークテストの結果を見ていこう。
まずはPCMark10の結果だが、スペック相応のスコアが得られている。ビジネス向けモバイルPCということで、これだけのスコアが得られていればビジネス系アプリやWeb会議アプリなどを同時利用する場合でも不満なく作業を行えるだろう。プレゼン資料作成時に写真や動画の編集が必要な場合でも、十分快適に作業できるはずだ。
続いてプロセッサの処理能力を計測するCINEBENCH R23の結果だ。こちらもまずまずのスコアで、十分納得できる性能が引き出せている。ただ、CPUクーラーの性能が良ければ、もっと良い性能が引き出せそうだとも感じた。
HP Dragonfly G4では、高負荷時でもファンの騒音がかなり静かだ。これは静かな場所で利用する場面では重宝するものの、高負荷時にCPUの放熱が追いつかなくなる可能性もある。また、本体の薄さも放熱性能に影響する。
それでも、本体の薄さとCPUクーラーの静かさを考えると、このスコアには十分満足できる。特に、ビジネスモバイルPCではベンチマークテストのように高負荷が長時間続くような作業はあまり行われない可能性が高く、通常は申し分ないパフォーマンスが発揮されると考えていいだろう。
次は3DMarkの結果だ。今回はWild LifeとTime Spyを利用したが、こちらもビジネスモバイルPCとしてはまずまずのスコアとなっている。ビジネスモバイルPCでゲームをプレイすることはほぼないと思うが、ビジネスPCで利用するアプリでも3D描画機能を活用する場面は少なくないため、このスコアにも納得だ。
CPU内蔵グラフィック機能のため特別優れた性能というわけではないが、ビジネスアプリでも3D描画機能を利用する場面は少なくないことを考えると納得のスコアだ。
最後にバッテリー駆動時間だ。PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用し、ディスプレイのバックライト輝度50%、キーボードバックライトをオフで計測してみたところ、10時間10分を記録した。
この結果から、通常利用時でも8時間以上はほぼ問題なく利用できるはず。よほど高負荷の作業を長時間行わない限り、1日外出して作業を行う必要がある場合でも電源の確保を考慮する必要はなさそうだ。モバイルPCとしてこの点は大きな魅力となりそうだ。
企業が安心して導入できるビジネスモバイルPCだ
今回見てきたようにHP Dragonfly G4は、申し分ない軽さと、安心して持ち歩ける非常に優れた堅牢性を兼ね備えるだけでなく、現在のビジネスシーンで求められる優れたセキュリティ性も備わるビジネスモバイルPCに仕上がっている。また、アスペクト比3:2で生産性の上がるディスプレイや複数のアプリを同時利用する場合でも十分快適なパフォーマンス、セキュリティ性と利便性を両立できる機能など、PCとしての仕様も申し分ない。
HP Sure View Reflectによるディスプレイの視野角の狭さやギラつきは少々気になるものの、携帯性や性能面、優れたセキュリティ性など、企業が導入するビジネスモバイルPCとして魅力的な存在だ。