子供の教育資金は、老後資金や住宅資金とともに「人生の3大資金」とされ、子供が独立するまでには大きな金額がかかります。そのため、子供が小さいうちから計画的に資金準備を始めるご家庭も多いでしょう。

教育資金を貯めるには学資保険などいくつかの方法がありますが、来年1月から始まる「新NISA」もその選択肢の1つに含めることができます。今回は、新NISAで教育資金を貯める方法や、教育資金目的で活用する時の注意点などを解説します。

  • 子供の教育資金を新NISAで貯めるには? FPが解説

■子供の教育資金、大学まで進学するといくらかかる?

子供を大学まで通わせるとなると、約20年もの期間にわたり教育資金がかかります。中でも、大学の学費は大きな金額になりますので、長期的な視点でコツコツ貯めていくことが重要です。

では、大学まで進学させると、子供の教育資金はどのくらいかかるのでしょうか。文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査の結果について」を参考に、まずは幼稚園から高校までにかかる1年間の子供1人当たりの経費(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)を見てみましょう。

  • 幼稚園から高校まででかかる金額は?

公立幼稚園 16万5,126円(3年間では49万5,378円)
私立幼稚園 30万8,909円(3年間では92万6,727円)
公立小学校 35万2,566円(6年間では211万5,396円)
私立小学校 166万6,949円(6年間では1,000万1,694円)
公立中学校 53万8,799円(3年間では161万6,397円)
私立中学校 143万6,353円(3年間では430万9,059円)
公立高等学校(全日制) 51万2,971円(3年間では153万8,913円)
私立高等学校(全日制) 105万4,444円(3年間では316万3,332円)

仮に全て公立に通った場合は高校までに約576万円、全て私立に通った場合は高校までに約1,840万円もの教育資金が必要になります。

また、日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果(令和3年度)」によると、大学4年間にかかる入学費用・在学費用の合計は以下のようになっています。

<私立大学>
・理系…821万6,000円(入学費用88万8,000円、在学費用732万8,000円)
・文系…689万8,000円(入学費用81万8,000円、在学費用608万円)

<国公立大学>
481万2,000円(入学費用67万2,000円、在学費用414万円)

たとえば、高校まで全て公立に通い、私立大学の文系学部に入学した場合、約1,265万円もの教育資金がかかる計算です。さらに、高校や大学の教育資金は、昔と比べて徐々に費用が高くなってきています。そのため、「どの学校に通わせるか」「私立か公立か」を考えるだけでなく、「どのような方法で教育資金を貯めていくか」を早い段階で計画することが欠かせません。

■新NISAとは? 教育資金を貯められる?

新NISAは2024年1月から始まる新制度で、現行のNISAと同じように、金融商品に投資して得た利益が非課税になるという仕組みです。新NISAには、現行のつみたてNISAに当たる「つみたて投資枠」と現行の一般NISAに当たる「成長投資枠」があり、これらの枠は併用して使えます。

両方を合わせた非課税保有限度額は1,800万円になり、そのうち成長投資枠は1,200万円が上限です。さらに新NISAでは、購入した金融商品を途中で売却するとその分の非課税投資枠が復活し、再度最大1,800万円まで非課税で投資できます。

そのうえ、新NISAは非課税保有期間の制限がなくなり、長期投資に適した制度になりました。つまり、長い時間をかけてコツコツ準備していくべき教育資金の準備にも向いているのです。

特に、先ほどもあったように、大学の学費は教育資金の中でも高くつきます。そのため、高校までの教育資金は家計の中でやりくりし、4年間で多額の費用を必要とする大学の教育資金は子供が生まれたら時間をかけて貯めていくのがベストでしょう。

とはいえ、たとえ子供が小さくても習い事の費用や身の回り品の購入などでそれなりの支出はありますので、新NISAという優れた制度があっても、どうやって投資資金を捻出すればいいのか頭を悩ませる家庭も多いのではないでしょうか。

そこで注目したいのが、「児童手当」です。児童手当は、中学校を卒業するまでの児童1人あたりに1万円または1万5,000円が支給され、これを使わずに貯めていくと総額約200万円にもなります。

総額では決して小さな金額ではないことに加え、たとえ月1万円や月1万5,000円でも、長い時間をかけて投資すれば「複利効果」の恩恵が受けられます。投資資金の捻出に困ったら、児童手当を今使うのをグッとこらえ、大学の教育資金として積み立てていきましょう。

■新NISAで教育資金を貯めるといくらになる? 注意点は

では、新NISAを活用して教育資金を貯めると、どのくらいの金額になるのでしょうか。ここでは、新NISAで月1万5,000円または3万円を5年間、10年間、15年間、20年間積み立てた場合の積立資産額のシミュレーション結果をご紹介します(全て年利4%で計算)。

  • 積立資産額のシミュレーション結果

<5年間積み立てた場合>
1万5,000円…5年後の積立資産額は99万2,685円(投資元本90万円)
3万円…5年後の積立資産額は198万5,371円(投資元本180万円)

<10年間積み立てた場合>
1万5,000円…10年後の積立資産額は220万439円(投資元本180万円)
3万円…10年後の積立資産額は440万878円(投資元本360万円)

<15年間積み立てた場合>
1万5,000円…15年後の積立資産額は366万9,856円(投資元本270万円)
3万円…15年後の積立資産額は733万9,711円(投資元本540万円)

<20年間積み立てた場合>
1万5,000円…20年後の積立資産額は545万7,626円(投資元本360万円)
3万円…20年後の積立資産額は1,091万5,252円(投資元本720万円)

たとえば、児童手当や毎月の収入から投資資金を捻出し、毎月1万5,000円を15年間積み立てると、270万円の投資元本に対し約367万円が受け取れます。投資資金を増額して毎月3万円を15年間積み立てると、投資元本540万円に対し積立資産額は約734万円に増え、私立文系にかかる4年間の教育資金をカバーできる形です。

もちろん、ここでご紹介した金額はあくまでシミュレーションであり、必ずしも同じような結果が得られるとは限りません。それでも、長い時間をかけてお金を積み立てるほど、資金を大きく育てていけることが期待できます。

このように、長期的な視野で資金を準備するのに適している新NISAですが、教育資金を貯める目的で活用する際には注意点もあります。まず、投資であるため元本保証がなく、損をする恐れもあるということ。また、繰り返しになりますが、たとえ損失が発生しなくても、必ずしもシミュレーションで示したような成果が得られるとは限りません。

新NISAは「長期・分散・積立」の投資を基本としており、損失が発生するリスクを抑えられる仕組みになっています。それでも、将来の教育資金は必ず必要になるお金ですので、どうしても不安な場合は元本が保証されている方法と組み合わせることなども検討しましょう。

また、大学の学費は国公立でも4年間で481万円というお金がかかりますので、短い期間で貯めようとすると負担が大きくなる恐れがあります。投資は長い時間をかけたほうが有利ということもあり、できるだけ早いうちから資金の積立をスタートしましょう。

積立金額は途中で変えることもできますので、新NISAの制度開始とともに無理のない金額で始めておくのがベストです。

■新NISAを活用して早くから教育資金の準備を

少子高齢化で子供の数は少なくなっていますが、その分、子供にかける教育費は高くなっています。また、特に私立大学の学費は増加傾向にあります。今後もこの傾向は続くことが予想されるため、早い段階から計画的に教育資金を準備する必要があるでしょう。新NISAを充分活用し、いざ進学を控えて慌てないよう教育資金をコツコツと貯めていきましょう。