いよいよ登場するiPhone 15シリーズ。なかでも注目は、新しい5倍の望遠カメラを搭載した最上位モデル「iPhone 15 Pro Max」でしょう。これまでのiPhoneでは考えられなかった大迫力の超望遠撮影ができ、しかもデジタルズームも実用的に使えて驚きました。超望遠でも手ぶれで失敗することはなく、逆光などの難しいシーンも調整いらずでキレイに仕上がります。iPhoneのカメラに“誰でも手軽に超望遠撮影”が加わったと体感でき、乗り換えに値する1台だと感じました。
5倍になった望遠カメラの表現力に驚く
従来のiPhone 14シリーズと同じく、iPhone 15シリーズは小型軽量のスタンダードモデル「iPhone 15」、大画面だけど軽い「iPhone 15 Plus」、望遠カメラを搭載した「iPhone 15 Pro」、望遠カメラ性能を引き上げた「iPhone 15 Pro Max」の4機種をラインナップします。なかでも、iPhone 15 Pro Maxはカメラ機能の特別感が強く、一番の注目といえます。
特別感の理由は、iPhone 15シリーズで唯一の5倍望遠レンズを搭載したこと。兄弟モデルのiPhone 15 Proや、従来モデルのiPhone 14 Pro Maxは3倍の望遠レンズなので、数字からするとわずかな進化だと思いきや、きわめて大きなインパクトがありました。
5倍の望遠カメラは、広角カメラ(24mm相当)の5倍となる120mm相当での望遠撮影ができます。ちょっと望遠すぎるかな…と思いきや、さまざまなシーンでスナップ撮影が軽快にできました。遠近感が弱くなる圧縮効果も得られ、広角では得られない表現の撮影が楽しめます。ちなみにズームレンズではないので、5倍未満のレンジは広角カメラのデジタルズームとなり、画質が悪くなります。
特に目を引いたのが画質の高さ。光を4回も折り曲げる「テトラプリズム」と呼ばれる独自構造のレンズユニットを初めて採用した5倍レンズ、光を何回も曲げては焦点が少しずつずれて画質がぼんやりするのでは…と心配していたのですが、そんな心配は一切無用のシャープな描写で驚きました。
デジタルズーム併用の超望遠撮影が圧巻、かつ実用的
5倍の望遠レンズですが、デジタルズームがグッと使えるようになり、さらなる超望遠撮影が実用的に楽しめるようになったのも見逃せません。iPhone 15 Pro Maxは、最大25倍のデジタルズームに対応し、最大667mm相当の超望遠撮影ができます。「デジタルズームなんて画質は荒くなって使い物にならないし、そもそも手ぶれでファインダーが安定しないのでまともに被写体を収められない」と思っていたのですが、そのいずれも予想を裏切られました。
667mmの最大デジタルズーム時は、画像処理による拡大とノイズ低減でさすがに仕上がりは多少ぼんやりしますが、SNSなどでは文句なしに使えるクオリティです。これほどの超望遠がiPhoneで撮れるのはインパクトを感じました。
超望遠特有の「ライブビューが暴れて被写体がフレームに収められない」という悩みもありませんでした。667mm相当の超望遠でもライブビューはきわめて安定していて、iPhoneをゆっくり動かせばライブビューも張り付くように動き、目当ての被写体をしっかり収められます。
実は、iPhone 15 ProとPro Maxには、超望遠撮影時のフレーミングをアシストする新機能が備わりました。デジタルズームが8倍(約200mm相当)を超えると、ライブビューの隅に広角カメラがとらえた引きのライブビューの小窓が現れ、現在どこをフレーミングしているかが枠付きで表示されます。小窓を見て大まかにフレーミングしたあと、メインのライブビューでしっかりフレーミングする…というフローで撮影できるので、超望遠でもまごつかずに済みます。
たとえ超望遠でも、撮影者はズームしてシャッターを押すだけでいいのは変わりません。手ブレはしっかり抑えられ、被写体ブレもありません。さらに、逆光の難しいシーンでも狙った被写体にぴったりピントが合い、しかも露出補正なしで期待していた明るさに仕上げてくれました。撮影の専門知識がなくても理想の仕上がりにしてくれるのは、さすがiPhoneだと感じます。
気になったのが、iPhone 15 ProとPro Maxは撮影時に熱を持つこと。エアコンが効いた涼しい室内でもそこそこ熱くなり、晴れた屋外での撮影では「本体を冷ましてください」と警告が出ることもありました。ガンガン撮影したい人は、背面を覆う構造のケースではなく、背面からの放熱を妨げないパンパーの方がいいかもしれません。
ゴースト問題はある程度改善、無印15の2倍モードは便利
それ以外のカメラ機能では、レンズに特殊な反射防止コーティングが施されたことで、ゴーストが低減したことが確認できました。点状のゴーストを自動消去するOS側の機能と合わせ、だいぶ影響が小さくなったと感じました。全体が白っぽくなってコントラストが低下するフレアは、シーンによってはまだ見受けられました。
iPhone 15と15 Plusは、従来と同じ広角+超広角の2カメラながら、撮影画面に「2x」のボタンが備わって48mm相当にワンタッチで切り替えられるようになりました。デジタルズームではなく中央部を切り取るクロップなので、画質劣化の心配がなく、積極的に使えると感じました。
チタン外装により軽量化、角が取れて持ちやすさもアップ
iPhone 15 ProとPro Maxは、ボディの外装にチタンを用いたのがポイント。ステンレスを用いたiPhone 14 Proシリーズから約19gの軽量化が図られており、新旧を持ち比べると明確に「軽くなった」と感じます。iPhoneは、モデルチェンジのたびに重くなる一方だったので、一転して軽量化に転じたのは評価できます。
今回、iPhone 15 Pro Maxはチタン本来の色合いを生かしたナチュラルチタニウムのカラーを試用しましたが、派手さを抑えた質感の高い仕上げは満足できます。指紋は目立ちやすいものの、汚れが素材に浸透することはなく、サッと拭けば美しい輝きが戻ります。
iPhone 15 ProとPro Maxは、側面のスライドスイッチがボタン式の「アクションボタン」に変わり、マナーモードへの切り替え以外に多くの機能が割り当てられるようになりました。ボイスメモやフラッシュライトなども選べますが、やはり便利なのがカメラの起動。撮影モードも指定できるので、いきなり動画モードで起動することも可能。撮影時も撮影ボタンとして機能します。
USB-C化のメリットは充電だけじゃない
iPhone 15シリーズは接続端子がUSB-C(USB Type-C)に変わり、さまざまな機器と充電ケーブルが共用できるようになりました。充電だけでなく、外部ディスプレイや外付けマイク、ストレージなど、多くの機器とつなげるようになったのもメリット。SSDを接続すれば、動画モードでProResの4K/60fps記録が可能になります。
注意したいのがケーブル。製品に付属するケーブルはUSB 2.0までの対応なので、USB 3.2 Gen 2に対応するiPhone 15 ProとPro Maxだと高速転送が利用できません。パソコンとデータのやり取りをする人は、市販のUSB 3.2 Gen 2対応ケーブルを用意しておくとよいでしょう。
iPhone 15 Pro Maxのカメラ機能を中心にチェックしましたが、iPhoneならではの「シャッターを押すだけ」という魅力はそのままに、失敗しやすい超望遠撮影が誰でも手軽にできる点に驚きました。iPhone 15 Pro Maxは、写真や動画のプロに好まれるモデルですが、一般的なカメラを使ったことのない人にもぜひ使ってもらいたいと感じます。