「わんこと一緒にオフィスに出勤できたらいいのにな~」。愛犬家であれば、きっと一度や二度はそう夢想したことがあるだろう。きっと大変なこともあるだろうが、それ以上に高い満足感が得られるに違いない。
そんな飼い主たちの理想を実現したのが、フレッシュペットフード売り上げNo.1の「ココグルメ」を開発・販売するバイオフィリアだ。ペットと同伴出社できる「わんダフル・ワーキング制度」を導入したことで求人の応募数も爆発的に増えたという。また、わんこだけでなく、猫も同伴出社が可能で、社員犬・社員猫として、ポスターのモデルやインスタライブ出演など社員として働いている。
なぜこの制度を導入したのか、そして実際にどのようなメリットが生まれたのか、代表の岩橋洸太さんに話を聞いた。
■愛犬との別れから生まれた「ココグルメ」の魅力
――まず、バイオフィリアの事業内容について教えてください。
バイオフィリアはペット関連の事業に取り組むスタートアップで、2017年創業、2019年以降は主に「ココグルメ」という愛犬のための手作りごはんの製造、販売を行っています。
――ココグルメを展開するようになったキッカケは何だったんですか?
一緒に暮らしていた愛犬たちが病気で立て続けに亡くなってしまったのがキッカケです。当時はペットロスに陥り、悲しみに暮れたのですが、何よりも「もっと何かしてあげられたんじゃないか」「自分の育て方がよくなかったんじゃないか」という後悔の念に苛まれました。
そこで調べていくうちに、食事が原因の一つかもしれないと思ったんです。ある統計によると、市販のフードと手づくりフードとでは、後者のほうがわんちゃんの寿命が平均して3年ほど長かったそうです。私がもっと食事に気をつけていれば愛犬たちはもっと長生きしたかもしれないし、他の飼い主さんにもできるだけ後悔をせずにお別れのときを迎えてほしい。そんな思いでココグルメの開発に乗り出しました。
――ココグルメはかなり評判がいいとお聞きしています。
現在の会員数は20万頭で、国内では約800万頭のわんちゃんが飼われているそうなので、計算上は全体の約2%にココグルメをご利用いただいていることになります。
品質としては人間が食べている食品とまったく同じなので、安心・安全にご利用いただけますし、獣医師、栄養士、大学教授の3名が監修した総合栄養食なので、必要な栄養はすべて摂取できます。低温調理で香りや美味しさを引き立てており、完食率も90%と大変ご好評いただいています。
■「わんダフル・ワーキング制度」で求人応募数が10倍に!?
――バイオフィリアが導入している「わんダフル・ワーキング制度」について教えてください。
簡単にいうと、ペットと同伴出社できる制度です。私はもともと証券会社に勤めていたのですが、当然、会社にわんこを連れて行くことはできませんでした。だから毎朝家を出るとき、わんこが玄関で悲しそうにしている姿をみて、とても申し訳なく感じていました。そのときに、「自分がいつか会社を作ったら、ペットと一緒に出勤できる体制にしたいな」と思ったんです。
――そのときに描いたビジョンを実現したんですね。
会社の仲間たちも同じ思いだったので、オフィスを現在の場所に移転したタイミングで「わんダフル・ワーキング制度」を導入しました。
――制度を導入して以降、どんな変化がありましたか?
ある日、私が“犬吸い”(犬の体などに顔をうずめながら深呼吸すること)している姿を社員が公式SNSにアップしたところ、それがなぜかバズってしまって、テレビやネットニュースなどで取り上げられたことがあったんです。そのときに「オフィスにわんちゃんがいるんだ」と話題になって、求人の応募数がそれまでの10倍に増えました。やはり多くの飼い主さんにとって、ペット同伴可というのは大きなメリットなんだと思います。
――他にどんなメリットが感じられましたか?
まず、人間側のメリットとしては、わんちゃんを自宅でお留守番させなくていいという安心感がありますよね。ひとりで寂しい思いをさせてしまうという罪悪感もなくなりますし、留守中に大地震などがあったら本当に大変なことになってしまいますから。オフィスでも一緒にいられることの喜びは仕事中の満足感の向上にも繋がりますし、飼い主以外の社員もたくさんのわんちゃんに触れることで癒やされています。
――わんちゃん側のメリットはいかがでしょう?
他のわんちゃんと遊べるので社会化が進みます。例えば噛み合うことで痛みがわかったり、どうすれば他のわんちゃんに喜んでもらえるかといったことも学べます。人見知りするわんちゃんもいますが、徐々に人間とフレンドリーになっていますし、見ていてすごく成長を感じますね。また、仲間たちと走ることで運動不足の解消にもなりますし、ココグルメの試食ができることもわんちゃんたちは喜んでいると思いますよ(笑)
――職場にわんちゃんがいることで、大変なこともあるのでは?
わんちゃん同士がヒートアップしすぎて止めに入らなきゃいけないときなどはありますね。そこで私たちの集中力が途切れてしまったり、余計な工数が増えてしまったりすることは今後の課題として残っていますし、犬アレルギーなどを持つ社員などへの配慮も進めていきたいと考えています。ただ、仕事で疲れたときなども、わんちゃんたちの無邪気な姿を見ることでリフレッシュできますから、やはりメリットのほうが全然大きいと感じています。
――何か、わんちゃん側の規則などはあるのでしょうか?
そうですね。わんちゃん同士で強く噛んじゃうような子や、まだちゃんとトイレができない子はちゃんとトレーニングしてから来てくださいね、といったルールはあります。あとは一般的なマナーは守りましょう、ワクチンは打ちましょう、散歩したあとは足を拭いてから入室してくださいね……といった一般的な規則なども設けています。
■よりペットフレンドリーな社会を実現するために
――この制度、社員からの評判はいかがですか?
非常に満足度が高く、喜ばれているという実感があります。海外ではこういった制度を持つ大企業も多いのですが、日本ではまだ両手で数えられるほどの企業しか導入していません。だからこそ、「バイオフィリア以外では働きたくない!」と言ってくれる社員もいますね。
――よりペットフレンドリーな環境をつくるために、今後取り組もうと考えていることがあれば教えてください。
今後の大きな方針としては、もっと広義な意味でペットフレンドリーな社会づくりに貢献していきたいと考えています。日本ではまだまだ人間と動物の間に壁がありますが、このオフィスは、そんな人間と動物の壁を取り払うための象徴でありたいと思っています。
社内的には今後、他の企業や信頼できるトレーナーさんと連携し、わんちゃんたちのトレーニング支援をしたいと考えています。また、社員が長期旅行などを楽しめるよう、安心してわんちゃんを預けられるホテルやシッターを紹介する制度も作りたいですね。あとはわんちゃん連れのアクティビティや社内イベントも増やしていきたいですし、オフィスが大きくなったらわんちゃん用のフリースペースなども作ってみたいと思っています。