長野県市町村自治振興組合は2023年4月、「クラウドサインforおまかせ はたラクサポート ~自治体向けプラン~」を採用、長野県内の自治体に共同調達として導入した。クラウドサイン選定の経緯とその効果について伺ってみたい。
クラウドサインを採用した長野県市町村自治振興組合
2021年のデジタル庁発足を機に、総務省は地方行政のデジタル化を目標とし、さまざまな取り組みを進めている。長野県はこの方針を受け、県内77市町村の電子自治体を推進。2023年4月に、電子契約サービス「クラウドサインforおまかせ はたラクサポート ~自治体向けプラン~」の共同調達を行った。
長野県 企画振興部 DX推進課とともに、このクラウドサイン共同調達を推進したのが、長野県市町村自治振興組合とNTT東日本 長野支店。長野県市町村自治振興組合は自治体のDX支援を主な業務とし、市町村における事務の電子化・効率化を目標として、企画立案、システム共同構築・運用、デジタル人材の育成などを担当。NTT東日本 長野支店は、同組合をネットワーク面から支える役割を担っている。
クラウドサイン導入の経緯と目的について、長野県市町村自治振興組合 電子自治体推進部門 電子自治体企画・推進担当 主事 小林歩氏、およびNTT東日本 長野支店 第一ビジネスイノベーション部 第一バリュークリエイトグループ バリュークリエイト担当 主査 宮坂等氏に聞いてみたい。
長野県が推し進めるDX戦略
長野県は「長野県DX戦略」のもと、県内のさまざまな分野においてDXを推進している。その中心となっているのが、長野県先端技術活用推進協議会だ。同協議会において設置された自治体DX推進ワーキンググループでは毎年いくつかのテーマをもとに課題を抽出し、対策を検討している。2022年度、そのひとつとして電子契約が挙がり、共同調達の候補として選出されたのがクラウドサインとなる。
長野県内では、2022年度から長野県、中野市、高森町などがクラウドサインを導入し、電子契約の利用が進んでいた。とくに長野県は、運用開始から5カ月で対象となる契約の約60%を紙から電子へと切り替え、契約に関わる人件費や印紙代などのコスト削減を実現している。
長野県市町村自治振興組合の小林氏は、「他の電子契約サービスも検討されていましたが、勉強会でクラウドサインの方にご説明いただいたこと、すでに県内に先行導入事例があったことが大きなきっかけになりました。また、先行導入されている3つの自治体さんから『共同化によるメリットが見込まれればクラウドサインを推進してほしい』という要望があったことも大きいです」と話す。
こうして長野県市町村自治振興組合はNTT東日本 長野支店に相談。2023年4月の電子契約サービス導入を目標として取り組みを進めることになった。
クラウドサイン導入の課題はコストとサポート
クラウドサインの共同調達を実現するにあたり大きな課題となったのは、コストとサポート。77市町村の中には人口1,000人に満たない自治体も存在する。共同調達によって小規模な自治体でも負担にならず、かつ必要なサポートを受けられることは必須条件といえた。これに応えたのがNTT東日本 長野支店と、弁護士ドットコムだ。
NTT東日本 長野支店の宮坂氏は「当時すでに埼玉県でご利用いただいており、長野県内77市町村で使ってもらえると事業者さんもだいぶ楽になるだろうと感じていました。これを実現するために、通常のクラウドサインのサービスにサポートデスクを加え、自治体向けプランとしてご提供しました」と、共同調達への対応について語る。
これに対し長野県市町村自治振興組合の小林氏は、NTT東日本の柔軟なサポートへの感謝を伝えるとともに、77市町村をまとめるハードルの高さを振り返った。
「我々は基本的に情報部門の方々と繋がりがありますが、今回は財政課さんや契約課さんなどともやり取りを行いました。それぞれ独自に電子契約に向けての動きがあるなかで共同調達を進めていったので、案内が行き届かないこともありました。ですが、NTT東日本さんや弁護士ドットコムさんが県内自治体を周り、課題を聞いたり説明をしたりとご対応いただいたことで、検討される自治体も増えたと思っています。ありがとうございます」(小林氏)
広がりを見せる長野県内のクラウドサイン利用
電子契約によって自治体の契約事務は簡略化され、その業務負担も軽減されるだろう。だが、それ以上にメリットを享受できるのは事業者だ。とくに収入印紙の貼付が不要となり、印紙代を削減できることは大きい。また郵送の手間や代金も減らせるため、より効率的に業務が行えるようになる。
「今回は長野県さんにも共同調達に参加いただいていますので、事業者さんも採用しやすいのでしょうし、信頼できるサービスとして認識もいただけるかなと思っています。『県内の事業者さんにとってもメリットが大きい』と引き続き伝えていきたいところです」(小林氏)
2023年4月に共同調達がスタートした時点で、長野県、阿智村、阿南町、高森町、豊丘村、中川村、中野市、箕輪町がクラウドサインを採用。そのうち、6団体が共同化に参加している。さらにいくつかの自治体が導入を検討しており、共同化に参加したいという自治体は徐々に広がりを見せている。
「電子契約サービスはひとつではなく、各団体さんには比較検討や契約等の"調達業務"をしなくてはならないという手間があるでしょう。それに対し今回は共同調達ということで、長野県市町村自治振興組合さんに申込書を送るだけで契約できるため、導入のハードルが下がっていると思います。来年度にはまた導入が増えてくるでしょうし、早いところでは年内というお話も伺っているので、確かな手応えはあります」(宮坂氏)
長野県市町村自治振興組合は、今後も電子契約を始めとしたDXを県内の自治体に広めるための活動を続けていく。だがまだまだ県内ではそれほど知られていないのが現状だ。同組合は昨年度、ロゴを刷新したそうだ。こういった活動が、同組合の認知度向上につながることを期待したい。
「NTT東日本さんには、これまでも自治体業務の標準化などでいろいろと相談させていただいています。今後も県内の自治体さんに還元できるような体勢をとっていきたいと思いますので、引き続きご協力をお願いしたいと思います」(小林氏)