四天王寺大学と、大阪大学の研究グループは、赤ちゃん顔の「かわいさ」は、上下を逆さまにしても変わらず知覚できるという研究結果を発表した。この研究成果は、学術誌「Perception」のオンライン早期公開版に、9月4日付で掲載された。これがネットで「可愛すぎる研究」「面白い」などと話題となっている。
人の顔に対する印象はこれまで、「顔を上下逆さ」に提示すると顔を見分けることが困難になる「顔倒立効果」が知られていた。この現象は、顔を知覚するときに、個々のパーツの特徴ではなく、パーツ間の位置関係が重要である証拠とされてきた。一方、動物行動学者のコンラート・ローレンツは、「かわいさ」の知覚には、丸みを帯びた顔や大きな目といった個別の要素的な特徴が影響すると提案している。同研究グループは、もしローレンツのこの考えが正しければ、これまで成人の顔で報告されてきた顔倒立効果が、赤ちゃん顔の「かわいさ」の知覚には当てはまらないかもしれないとして、本研究に乗り出したという。
本研究では、20歳から71歳の日本人男女299名を対象にオンライン実験を実施。コンピュータで合成した赤ちゃんの顔画像を作成し、「かわいさ」の平均評定値が高かった顔と低かった顔を、上下逆さに提示してそれぞれの「かわいさ」を判断してもらった。次に、顔画像の上下が正しく提示されている顔(正立顔)を判断する群と、上下逆さに提示されている顔(倒立顔)を判断する群に分かれて、「かわいさ」の程度を増減させた別の合成顔を2枚ずつ見せて、どちらの顔がよりかわいいと感じるかを選択してもらった。
結果、赤ちゃん顔に対する「かわいさ」の評定値は、正立顔でも、倒立顔でも差がなかったことが明らかとなった。また、2つの顔からよりかわいい顔を選択する実験でも、有意な確率で2つの顔からよりかわいい顔を選んだそうだ。
同研究グループは、赤ちゃんの顔の「かわいさ」は、おとなの顔の魅力とは異なり、顔のつくり(パーツ間の微妙な位置関係)よりも、輪郭の丸みや目の大きさといった赤ちゃん顔によく認められる個々のパーツの物理的特徴に基づいて知覚されることを示すものだとしている。
また今回の知見から、「『かわいい』と感じられるロボットやイラストを創作するときには、顔パーツの配置を工夫するよりも、『かわいい』と感じられる個々の要素を組み合わせるのがよい」とコメントした。
ネット上では「なんだこの可愛すぎる研究」「これは、感覚的に理解できるし、研究的にも面白いなぁ」「何これ可愛い。赤ちゃんは全方位から見てもかわいい」「大人だと逆さまになると、可愛いが可愛くないに、可愛くないが可愛いになるの⁈」などの声が寄せられている。