セブン銀行は9月12日、2019年から順次配備している新型ATM(第4世代)を活用したサービス「+Connect」を発表しました。第1弾として、9月26日から「ATMお知らせ」「ATM窓口」機能を提供します。

  • セブン銀行ATM(第4世代)とモデル・タレントの谷まりあさん

    セブン銀行ATM(第4世代)とモデル・タレントの谷まりあさん

身近なコンビニATMが銀行の窓口代わりに

「ATMお知らせ」と「ATM窓口」は、従来なら各金融機関が窓口やダイレクトメールで行ってきた案内や各種手続きを、いつでもどこでも使えてユーザーが触れる機会も多いコンビニATMで一手に引き受けるサービスです。

9月26日のサービス開始時点では、セブン銀行自身に加えて、ATMお知らせは静岡銀行、ATM窓口は群馬銀行/東日本銀行が対応します。2024年5月頃までにいずれかの機能に対応予定の金融機関としては、PayPay銀行、北陸銀行、沖縄銀行、広島銀行が挙げられています。

  • 「ATMお知らせ」「ATM窓口」機能を9月26日から提供する

    「ATMお知らせ」「ATM窓口」機能を9月26日から提供する

  • 導入スケジュール

    導入スケジュール

まず「ATMお知らせ」については、対象金融機関のキャッシュカードをセブン銀行ATMに入れて入出金などの機能を通常通り利用する際に、「登録されている住所はお変わりありませんか?」というような届出情報の確認、金融商品の提案などといったお知らせを表示するものです。

連絡事項を伝えるだけであれば一見さほど目新しい機能ではないかもしれませんが、そのお知らせを見てユーザーが必要と気付けばその場でセブン銀行ATMを通じて手続きを済ませられるところがポイント。

  • 「ATMお知らせ」機能では取引時に、各金融機関からセブン銀行ATMを通じてユーザーへのお知らせを表示するだけでなく、必要に応じて手続きも受け付ける

    「ATMお知らせ」機能では取引時に、各金融機関からセブン銀行ATMを通じてユーザーへのお知らせを表示するだけでなく、必要に応じて手続きも受け付ける

たとえば先述の住所変更の例でいえば、実は引っ越しをしたけれど銀行の住所変更の手続きは忘れていて、日頃はコンビニATMやネットバンキングで完結しているため支店に足を運ぶ機会がなく、DMでの定期的な確認もスルーしてしまっている……というような既存の方法ではアプローチしにくかったユーザーに対して、日常的に触れるコンビニATMを使う際に案内して気付いてもらうことができます。

とはいえ、コンビニATMで急いでお金を下ろしている時に住所変更の案内をされても、きっと時間がかかる面倒な手続きだろうとつい後回しにしてしまうというユーザーの心理もあるでしょう。

そこがまさにセブン銀行の第4世代ATMの実力が発揮されるところで、実はこの新型ATMには本人確認書類の読み取りや顔認証などの機能が備えられており、窓口やWebで手続きするよりもずっと手短に済みます。登録内容を変更する場合なら、名前の漢字や新住所はマイナンバーカードなどの本人確認書類から読み取って自動で入力するので、手打ちで入れる必要がある情報は名前の読みがなや連絡先電話番号など数点だけです。

  • 「ATM窓口」機能では口座開設も含めた各種手続きをコンビニATMで済ませられる

    「ATM窓口」機能では口座開設も含めた各種手続きをコンビニATMで済ませられる

ATMお知らせの説明の後半と少し重複しますが、もうひとつの新機能「ATM窓口」はそういった各種手続きをコンビニATMでいつでも手短に済ませられる機能です。

対応手続きは各金融機関で異なりますが、セブン銀行や北陸銀行(11月開始予定)なら新規の口座開設までコンビニATMで済んでしまいます(キャッシュカードなどは後日郵送)。

この話を聞いて「コンビニATMで口座開設まで出来るようになったら、後ろに並んでしまった時に待ち時間が長そう」と一瞬不安になりましたが、新規口座開設のモデルケースでの所要時間はなんと、たったの3分。新型ATMに備えられた本人確認書類読み取り機能や顔認証機能を活用しながら、なるべくユーザーの操作を減らして手間取らせないよう練られたユーザーインターフェースとなっています。所要時間3分というのは既存の手続きメニューの中で最も長い振込手続きと同程度だそうで、コンビニATM本来のオペレーションを乱さないことを大前提に作り込まれています。

「ATMお知らせ」と「ATM窓口」のどちらの新機能も、窓口の営業時間内に来られない人や地方銀行の場合であれば主営業地域外に引っ越した人、そしてそもそも店舗を持たないネット銀行の場合など、どうしてもユーザーとのコミュニケーションを取りにくかった部分に対して、新たなタッチポイントを創出するサービスといえます。

新型ATMの機能を活かした金融機関向けの機能としては今後、顔認証取引に対応する予定。顔認証情報を一度登録すれば次回からキャッシュカード不要で入出金取引ができるというもので、まずはセブン銀行ユーザー向けに2024年春のリリースを目指しています。

  • 2024年春には顔認証による入出金取引を実現予定

    2024年春には顔認証による入出金取引を実現予定

「銀行の窓口代わり」に留まらない、「+Connect」の壮大な構想

さて、第一弾として提供される2つの機能だけを見ると、「銀行の受付機能をATMが担う」というある種自然な組み合わせゆえに、まだ+Connectの革新性は見えてこないかもしれません。

しかし、本質的には+Connectは決して金融機関だけの利用を想定したものではなく、全国27,000台のセブン銀行のATMネットワークを次世代の受付プラットフォームにするという、大きな新ビジネスを描いたものなのです。

  • セブン銀行は47都道府県に計約27,000台のATMを設置しており、国内最多のゆうちょ銀行に次ぐ規模となっている

    セブン銀行は47都道府県に計約27,000台のATMを設置しており、国内最多のゆうちょ銀行に次ぐ規模となっている

そもそも、一般的な銀行であればATMというのはコストセンターにすぎない、しかし廃止もできないというどちらかと言えば消極的に語られることが多い存在ですが、セブン銀行はネット銀行という側面も持ちつつメインは「ATMで稼ぐ」珍しいビジネスモデルです。

それは単なる手数料ビジネスに留まらず、たとえば新生銀行などは自前のATMを廃止してそのロケーションをセブン銀行に託し、そのうえでユーザーに対しては提携ATMでの出勤手数料を無料にする、つまり事実上「自社ATMをやめる代わりにセブン銀行ATMを使わせる」判断をしています。そこまで大胆な施策に限らずとも、沖縄銀行のように自社の本支店内に設置するATMの一部をセブン銀行ATMに置き換えてサービス向上を図った事例もあります。

もはやセブン銀行のATMは「コンビニの一機能」ではなく、実質的に多くの金融機関が相乗りする巨大プラットフォームとなっており、先述の27,000台という設置台数をとっても首位のゆうちょ銀行に迫る規模ですし、年間の総利用件数は約10億件にのぼります。なお、総設置台数のうち、現時点で新機能の前提となる第4世代ATMへの置き換えが完了しているのは15,000台ほどです。

  • 先代となる第3世代ATM導入前後からの機能強化の歴史

    先代となる第3世代ATM導入前後からの機能強化の歴史

ほぼ日本全国どこでも、いつでも使えると言っても良い規模に成長したこのATMを活かし、既存のATMの枠を超えたサービスを提供していこうという試みは以前から行われています。たとえば、クレジットカードを持たない人にもキャッシュレス決済の利用を促進できる「電子マネーの現金チャージ」機能や、キャッシュバックキャンペーンなどで企業から個人に送金する場面でよく見かけるようになってきた口座不要の現金受取サービスなどがあります。

これまでは銀行ATM以外の機能といってもやはりお金にまつわることが基本でしたがその枠を超え、全国どこでも24時間365日、本人確認が求められるものを中心にあらゆる手続きをこなせる汎用窓口としてATMというプラットフォームを他業種に売り込む試みが+Connectです。

  • 「+Connect」第一弾は金融機関向けだが、本質としてはより大きなビジネスの創出を目指している

    「+Connect」第一弾は金融機関向けだが、本質としてはより大きなビジネスの創出を目指している

セブン銀行の第4世代ATMはマイナンバーカード/運転免許証/在留カードの読み取り機能を備え、顔写真などと来店者を照合する程度の簡単な本人確認から、銀行やクレジットカードなど犯罪収益移転防止法に基づく金融レベルの厳重な本人確認まで対応できます。

また、そもそも無人の自動窓口でありながら、スマートフォンなどを使ったオンライン手続きが難しい人でもそれなりに使える程度には生活に溶け込んでいる、あるいはそういった層にも迷わず使ってもらえるようなユーザーインターフェースを作り込む知見を持っているということも稀有な点でしょう。

まずは第一弾として9月26日から金融機関向けのATM窓口サービスが始まりますが、今後の展望としては、クレジットカードの申込、ホテルのチェックイン、保険加入、チケット購入、行政手続きなど、幅広い用途での活用が検討されています。

  • 第4世代ATMと+Connectサービスの導入により、ATMがあらゆる手続き・認証の窓口を担うプラットフォームに進化する

    第4世代ATMと+Connectサービスの導入により、ATMがあらゆる手続き・認証の窓口を担うプラットフォームに進化する