今回は、「おこなう」の表記が「行う」「行なう」でどちらが正しいのかを解説します。「行う」も「行なう」もよく目にするので、公文書や公用文ではどちらが正しいとされているのか気になりますよね。ぜひ最後までチェックしてください。
「行う」と「行なう」、正しい表記は? 公文書・公用文ではどっち?
「行う」と「行なう」は、どちらも「〇〇をする(行動・動作をする)」「実施する」「なす」という意味をもちます。そして、「行う」「行なう」は、どちらの表記でも間違いではありません。
一般的には「行う」を使用することになっており、小学校の教科書でも「行う」の表記に統一されています。
これは、1973年に改定された『送り仮名の付け方』で示されている「活用語尾を送る」の法則に従うと、「行なう」ではなく「行う」になるからです。教科書と同様に、公用文では「行う」の表記が基本とされています。
活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は,活用語尾を送る。
〔例〕 憤る 承る 書く 実る 催す
生きる 陥れる 考える 助ける
荒い 潔い 賢い 濃い
主だ[文化庁:送り仮名の付け方]
文化庁「送り仮名の付け方 通則1」
一方で、「行なう」の表記も許容されているので間違いではありません。基本的には「行う」と記載し、必要に応じて「行なう」を使用するのが良いでしょう。
許容
次の語は,( )の中に示すように,活用語尾の前の音節から送ることができる。
表す(表わす) 著す(著わす) 現れる(現われる) 行う(行なう) 断る(断わる) 賜る(賜わる)
[文化庁:送り仮名の付け方]
文化庁「送り仮名の付け方 通則1」
「行う」と「行なう」の使い分け・例文
ここでは、「行う」と「行なう」の使い分け方を解説します。それぞれに適した場面や使い方について、例文を挙げながらみていきましょう。
「行う」を使用したほうがいい場面
前述の通り、「行う」が公的な場面で使われる一般的な表記です。以下のような場面では「行なう」ではなく「行う」を使った方が無難です。
法令
新聞や雑誌
教科書
論文
ビジネスにおける文書
「行なう」を使用したほうがいい場面
「行う」という送り仮名が主流である一方で、「行なう」もまた許容されている表記です。現在では、「行く」との混同を防ぐ目的で、「行なう」を意図的に取り入れていることもあります。
例えば、「〇〇さんが行った」と表記したとき、「いった」なのか「おこなった」なのか、読み手を混乱させる可能性があります。そのようなときは、あえて「行なった」とすることで文意が伝わりやすくなります。
「行う」と「行なう」はどちらも正しい
「行う」と「行なう」には、意味上の違いはなく、いずれも正しい日本語表記です。ただし、現在では「行う」の方がより一般的であることを覚えておきましょう。