「快方に向かう」という慣用句がありますが、病気やけがで療養中の人へのメッセージとして使う際は、具体的にどのように使えばいいのでしょうか。
本記事では、「快方に向かう」の詳しい意味や成り立ち、正しい使い方を紹介。お見舞い状やお見舞いに対する返事の書き方に、「快復」「回復」との違い、類語に対義語もまとめました。
「快方に向かう」の意味と成り立ちとは?
「快方に向かう(かいほうにむかう)」とは、病気やけがの状態がだんだん良くなっていくこと、また良くなっている状態を指す言葉です。
「快」という漢字は気持ちがよい、速やかに、などの意味の他、病気が治るという意味を持ちます。
そして「方」という漢字は、むきという意味や、むかって行く、という意味を持ちます。
したがって「快方に向かう」とは、病気などが治る方向へ向かっていることを表現しています。
敬語表現は「快方に向かわれる」
「快方に向かう」の敬語表現は、「快方に向かわれる」です。
目上の人の病状が良くなっていることを報告したり、目上の人の病状が良くなるように願ったりするときに使用されます。
例えば、以下のように表現できます。
- ◯◯社長は、快方に向かわれているそうです。
- どうか快方に向かわれますように願っております。
「頑張って」と伝える代わりに「快方に向かわれますように」などを使用することで、早く良くなってほしいと願う気持ちや、心配している気持ち、自分も応援しているといった気持ちが伝わるでしょう。
「快方に向かう」の正しい使い方と例文
「快方に向かう」の正しい使い方や例文について解説します。
この言葉は病状やけがの状態を述べるときや、お見舞いの言葉にもよく使われます。かしこまった手紙やメールでも使用できる言葉です。
「快方に向かう」の一般的な使い方と例文
- 入院中の○○さんだが、もう快方に向かっているそうだ。
- 取引先の○○さん、早く快方に向かうといいですね。
- 一時はICUに入るほどだったが、その後快方に向かった。
- ○○さんの病状が快方に向かっているのは、奥様の献身的な支えのおかげだろう。
- 病状は快方に向かっているため、来週には出社できそうです。
- 快方に向かっているとはいえ、無理は禁物です。
相手へのお見舞状(手紙)・お見舞いメールでの使い方と例文
お見舞いの手紙やメールでは、例えば以下のように表現しましょう。
前略
日頃からお元気な姿を拝見していたため、入院されたと伺い、大変驚いておりました。
ですがご家族から、すでに快方に向かわれているとお聞きし、安堵しております。
(主文)
どうぞご無理なさらず、この機会に十分にご静養くださいませ。 草々
相手からのお見舞いに対するお礼状(手紙)・お礼メールでの使い方と例文
自分が病気を患っており、相手がお見舞いに来てくれたことに対するお礼の手紙やメールを送るときにも使用できます。
お礼状では、自分の病状が良くなっていること、もしくは良くなった報告をするときに使用しましょう。
例えば以下のように表現できます。
拝啓
◯◯の候、○○様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
先日はご多用の中、お見舞いに来てくださり誠にありがとうございました。
大変ご心配をお掛けいたしましたが、おかげさまで無事快方に向かっており、今月◯日には退院予定です。
退院してからは自宅療養が続きますが、全快の際には改めてご挨拶させていただければと存じます。
まずは略儀ながら、書中にて御礼かたがたご挨拶申し上げます。 敬具
「快方に向かう」をメールで送る際の注意点
病気や大けがで入院している人にメールを送る場合は、いくつかの点に気を付ける必要があります。
1つ目は返信不要である旨を記載し、相手に配慮することです。メールの返事を送るだけであったとしても、病人やけがをしている人にとっては大きな負担です。気を使わせないようにする必要があります。
2つ目は、病状を詳しく詮索しないことです。快方に向かっているかどうかという情報自体も、わざわざ詮索して聞き出さないようにしましょう。
無理に話を聞き出そうとせずに、「回復をお祈りしております」「また会いたいな」など、ポジティブな言葉を選びましょう。
3つ目は、病気の程度に応じて慎重に言葉を選ぶことです。病状が快方に向かっているのか、悪化しているのかは、相手から聞くまで分かりません。もし家族や親しい友人から状況を聞き出せた場合は、その状況に合った言葉を選びましょう。
そしてメールの内容は、相手が前向きになれるように心掛けることが重要です。
「終わる」「途絶える」などの忌み言葉や、「度々」「ますます」などの重ね言葉は、病気やけがをしている人にとっては縁起が悪いので避けましょう。
「快方」と、「快復」「回復」との違い
「快方」と似た言葉に「快復」「回復」があります。
「快方」は前述のように、病気やけがの状態がだんだんと良くなっていくことを意味する言葉です。
「快復」は病気が治ることを意味します。「病気から快復する」のように使います。
「回復」は病気を含め、一度悪い状態になったもの、失ったものが、元の状態に戻ることを意味します。
「病気から回復する」「元気が回復した」「信用を回復する」などのように使われます。
似ている言葉ですが意味やニュアンスは異なるため、状況に応じて使い分けましょう。
「快方に向かう」の類語・言い換え表現
「快方に向かう」の類語や言い換え表現を紹介します。語彙を豊かにし、使用する相手や場面に応じて使い分けましょう。
軽快する
「軽快する」は、軽々として素早いこと、軽やかで心地いいこと、という意味の他に、病気が良くなり症状が軽くなること、という意味があります。
以下は「軽快する」を用いた例文です。
- 長期間のリハビリによって軽快した。
- 手術のおかげで軽快した。
好転する
「好転する」は、良い方へ向かうことを意味する言葉です。状況が良い方向に転じること、以前より具合が良くなることを表します。
病状以外の状況にも使用される言葉です。
以下は「好転する」を用いた例文です。
- 手術のおかげで病状が好転した。
- 時局が好転することを祈っている。
持ち直す
「持ち直す」は、一度悪くなった状態が良い方へ向かうことを意味します。
病状以外にも、景気や株価などにも使用される言葉です。
以下は「持ち直す」を用いた例文です。
- 手術をし、なんとか持ち直した。
- 生死をさまよう状態から持ち直し、今は快方に向かっている。
- 今日になって株価が持ち直した。
なお荷物などについて、物理的に改めて持つという意味でも「持ち直す」は使われます。
「快方に向かう」の対義語
「快方に向かう」の対義語を紹介します。セットで覚えておくと、表現をする際に役立ちます。
悪化する
「悪化する」は、物事の状態が次第に悪くなることを意味します。
病状以外の状況にも使用される言葉です。
以下は「悪化する」を用いた例文です。
- 昨日運ばれた患者の容体が悪化した。
- 祖父の水虫は悪化しているらしい。
- 両国の関係は悪化した。
ぶり返す
「ぶり返す」は、一度良い方向に進んでいたものが、再び悪い方向に戻ってしまう様子を表します。
病状以外に、気候などにも使用できます。
以下は「ぶり返す」を用いた例文です。
- 昨日薄着をしたせいで、風邪をぶり返した。
- けがが完治していないのに仕事に復帰したから、また痛みがぶり返した。
- 春一番が吹いたと思っていたが、ここ数日寒さがぶり返した。寒の戻りだ。
再発する
「再発(さいはつ)する」は、一度おさまっていた病気が再び悪くなることです。「再発」は「さいほつ」と読む場合もあります。
病気だけでなく、事故や事件などに関しても使用します。
以下は「再発する」を用いた例文です。
- 完治したと思っていたガンが再発した。
- この病気は再発の恐れがあるため、定期検診が欠かせない。
- 事故の再発防止に取り組みます。
「快方に向かう」を正しい意味で使用しよう
「快方に向かう」とは、病気やけがが良くなっている様子を表します。
自分のことにも相手のことにも使え、お見舞いなどで使用されることもあるフレーズです。
「快方に向かう」の正しい表現方法を身に付け、さまざまなシーンで活用しましょう。