次に、光らないAkalucマウスまたはoFlucマウスを「Pdx1-Creマウス」と交配させ、脳のような関門のない膵臓が標識された。すると、Akalucを用いたマウスとoFlucを用いたマウスで、同程度の発光シグナル強度が得られることが確認されたうえ、標識する細胞や組織によっては、oFlucもAkalucと同程度に生体深部組織の非侵襲的なBLIに利用できることが明らかになったという。

  • (左)膵臓の発光イメージング。(右)膵臓からの発光色の違い。

    (左)膵臓の発光イメージング。Pdx1-Creマウスを使い膵臓をoFlucまたはAkalucで標識した場合に、腹部から検出された発光シグナル。異なる露光時間で撮影して比較しても、oFlucとAkalucのシグナル強度は同じくらいであった。(右)膵臓からの発光色の違い。膵臓で発光する左のマウスを家庭用デジタルカメラで体外から撮影した。oFlucマウスは黄色、Akalucマウスは深赤色を呈する。(出所:理研Webサイト)

そして今度は、多色イメージングを実現できれば、複数の生体現象を同時に可視化できて単色よりも多くの情報を得られることから、oFlucとAkalucの発光色の違いを利用して2色同時BLIの可能性が検証された。

先の光るマウスの胎児が左右2つの子宮にいる妊娠マウスに、D-luciferinとAkaLumine-HClが段階的に投与された。すると、最初の基質に対応する胎児が発光し、追加の基質を投与すると、その基質に対応する胎児が発光した。2色同時発光中の妊娠マウスに対しては、光学的フィルターを用いれば光る胎児をそれぞれ明瞭に区別でき、2色同時BLIが可能であることが確認された。

  • 2色同時の発光イメージング。

    2色同時の発光イメージング。(左)CAG-oFlucの胎児を左の子宮で、CAG-Venus/Akalucの胎児を右の子宮で育てている妊娠マウス(胎生期14.5日齢)に対し、D-luciferinを投与して撮影された(上)。その後に、AkaLumine-HClを投与して撮影された(下)。下段では逆の順番で投与して撮影された。投与された基質に対応した胎児から発光シグナルが検出されるようになる。先に投与された基質に対応する胎児も、発光シグナルを出し続ける。(右)光学的フィルターを使うと、発光色の違いを利用してどちらのルシフェラーゼを持つ胎児であるかを識別可能。緑がCAG-oFlucの胎児、マゼンタがCAG-Venus/Akalucの胎児。(出所:理研Webサイト)

さらに、全身で「光るマウス」の臓器を調査したところ、調べた全臓器から発光シグナルを検出できることがわかった。研究チームによると、今後、身体を構成する多様な「光る細胞」を取り出し、別の個体へ移植する実験に使用すれば、移植細胞が生体深部でどのように振る舞うのか、BLIで非侵襲的に可視化できるようになるという。

また、異なる色で発光する同種あるいは異種の細胞を移植して2色同時BLIを行うことで、同種の細胞同士の競合関係や、異種の細胞同士の協調関係など、従来のイメージング手法では観察できなかった、生体内でのダイナミックな関係を解明できる可能性もあるとする。

加えて、今回作出されたマウス系統はCre-loxPシステムの部位特異的組み換え技術が導入されているため、多種類のCreマウスと組み合わせることで、さまざまな細胞や組織の生体内での振る舞いをBLIでリアルタイムに追跡可能になるという。このように、今回開発されたBLIマウス系統は、生命科学研究の広い分野で利用される非常に有用なバイオリソースになることが期待されるとしている。