「そちら」は、丁寧なイメージを持つ言葉ですが、目上の人に使える敬語なのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「そちら」の意味を解説するとともに正しい使い方や例文を紹介します。また、言い換え表現についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

「そちら」は敬語? 意味は?

  • 「そちら」は敬語? 意味は?

「そちら」は、「そっち」「そこ」「その」などを丁寧な表現に改めた「改まり語」です。「そちら」の意味は、辞書で以下のように説明されています。

そち‐ら 【其方】
① 話し手が「それ」と指せる方向。
1.話し手から見て相手が居る方向。
2.相手の関心の向いている方向。

② ①に当たる側。
1.その場所。そこ。
2.相手または相手方の人が居る場所。
3.そちらの方のもの。二つ以上ある時、相手に(物理的・心理的に)近いものを指す。
4.やや丁寧な言い方として相手方を指す語。

引用:『広辞苑 第七版』

方角や事物・場所などを指す「指示代名詞」・人を指す「人代名詞」の一つで、聞き手に近い方を表す際に使います。

目上の人に使うのは失礼?

「そちら」自体は敬語表現ではありません。しかし、改まり語は丁寧な表現であるため、上司や先輩など目上の人にも問題なく使えます。

人を指す際により丁寧な表現にしたい場合は、敬称の「様」を用いて「そちら様」とすると良いでしょう。

「そちら」のビジネスでの使い方・例文

  • 「そちら」のビジネスでの使い方・例文

ここからは、ビジネスシーンでの「そちら」の正しい使い方や例文を紹介します。

方向や場所を指す場合

聞き手に近い方を指したい場合、「そっち」「その」「そこ」を使うこともできますが、ややカジュアルな表現のため、失礼な印象を与える可能性があるでしょう。かしこまった場や相手が目上の人である場合は、「そちら」を使った方が丁寧な印象になります。

【例文】
・田中様の席は、そちらのテーブルでございます
・新商品の見本は、そちらの棚に並べております
・そちらのお店を曲がった場所にお手洗いがございます
・沖縄はもう真夏の暑さです。そちらはいかがですか

人や物を指す場合

方向や場所と同様に、人や物を指す場合も「そちら」を使う方が丁寧です。例えば、「そっちの方」よりも「そちらの方」の方が丁寧な印象を受けませんか? 丁寧な言葉遣いが求められる場面では、なるべく「そちら」を使いましょう。

【例文】
・まずは、そちらの見解を伺いたいです
・ご一緒におられるそちら様のお名前を教えていただけますでしょうか
・そちらの方は社長のご子息でいらっしゃいますか
・そちらを押していただくと、画面が立ち上がります

「そちら」の言い換え表現

  • 「そちら」の言い換え表現

「そちら」は、部下など目下の者に対して使うにはやや不自然です。丁寧すぎる言葉遣いは、よそよそしい印象を与えることがあります。目下の者に対しては、「そっち」「そこ」「その」などの言い換え表現を使った方が良いでしょう。

ここでは、それぞれの使い方を紹介します。

そっち

目上の人に使う場合→「在庫はそちらの棚にあります」
目下の人に使う場合→「在庫はそっちの棚にあります」

目上の人に使う場合→「機材はそちらに置いていただけますでしょうか」
目下の人に使う場合→「機材はそっちに置いてください」

そこ

目上の人に使う場合→「資料はそちらにございますか」
目下の人に使う場合→「資料はそこにありますか」

目上の人に使う場合→「提出先はそちらです」
目下の人に使う場合→「提出先はそこです」

その

目上の人に使う場合→「伝票はそちらのボックスの中にあります」
目下の人に使う場合→「伝票はそのボックスの中にあります」

目上の人に使う場合→「書類はそちらの上に重ねてあります」
目下の人に使う場合→「書類はその上に重ねてあります」

「そちら」をビジネスシーンで正しく使おう

  • 「そちら」をビジネスシーンで正しく使おう

「そちら」の正しい使い方・例文や言い換え表現について紹介しました。

「そちら」は敬語ではありませんが、「改まり語」と呼ばれる丁寧な表現にあたるので、目上の人に対しても使える表現です。ビジネスシーンで上司など目上の人を相手に「そっち」「そこ」「その」と言いたい場合は、「そちら」を使いましょう。