「懸案事項」とは、ビジネスや公的なシーンでたびたび見聞きする言葉です。しかし「懸念点」「課題」など、よく似たニュアンスを持つ言葉も複数存在するため、使い分けに悩まれる方もいるでしょう。

本記事では「懸案事項」の詳しい意味や読み方、使い方と例文を紹介。「課題」などの類語や、対義語もまとめました。

  • 懸案事項とは

    「懸案事項」の意味や使い方と例文、「懸念事項」「課題」との違いなどを解説します

「懸案事項」の意味と読み方とは

「懸案事項」とは、かねがね問題視されていながら、まだ解決されていない事柄を意味します。

まだ解決されていない問題を意味する「懸案」と、物事の一部となっている一つ一つの事柄を意味する「事項」が合わさった言葉です。

ビジネス、またはオフィシャルなシーンで耳にすることが多く、会議中の発言やスピーチ、議事録、新聞、ニュースなどでよく使われます。

「けんあんじこう」と読みます。

「懸案事項」の使い方と例文

ここからは、「懸案事項」の例文を参考に、使い方のイメージを捉えましょう。

ビジネスの場における例

  • あのプランには懸案事項があった。
  • 新規ビジネスの懸案事項が、ようやく払拭(ふっしょく)された。
  • このプロジェクトを進めるためには、複数の懸案事項について協議する必要がある。
  • (上司から部下に対して)今週中に、懸案事項をリストアップしてください。

かしこまった表現や、新聞・ニュースなどにおける例

  • 先日、A国とB国は、両国間の貿易上における懸案事項について協議した。
  • 終戦から80年近くたった現在でも、米軍基地に関する懸案事項は残っている。

「かねてからの懸案事項」などの重複に注意

「懸案」は「以前から問題視されてきた事柄」を表すため、「かねてからの懸案事項は~」「以前からある懸案事項の~」などとすると、意味が重複してしまうので気を付けましょう。

「懸案事項」と「懸念事項」の違い

  • 「懸案事項」と「懸念事項」の違い

「懸案事項」と「懸念事項(けねんじこう)」は、一字異なるだけなので意味を混同してしまいがちですが、それぞれの言葉が表す対象には違いがあります。

「懸案事項」は「既に問題視されている事柄」を表し、「懸念事項」は「この先問題が出てくるであろう、気掛かりな物事、不安な物事」を指します。

どのような違いがあるのかを、例文を用いて詳しく見てみましょう。

  • 地球温暖化がもっぱらの懸案事項である。

こちらの例文は、地球温暖化のように、既に問題視されているにもかかわらず、まだ解決できていない事柄を表しています。

  • 地球温暖化による異常気象が懸念事項である。

こちらは、地球温暖化がこの先もたらすであろう異常気象による被害に対して、不安や心配を示しています。

「懸案事項」と「課題」の違い

  • 「懸案事項」と「課題」の違い

「課題」も、「懸案事項」と意味合いやニュアンスが非常に似ており、新聞やコラムなどでもよく目にする言葉です。

課題は「解決すべき、またはしなければいけない問題」「取り組む必要がある問題」「問題を解決するための取り組み」などを意味します。

例文を用いて、「懸案事項」と「課題」の違いを見ていきましょう。

  • 少子高齢化が懸案事項である。

こちらの例文では、既に生じている少子高齢化の問題そのものを示しています。

  • 少子高齢化対策が課題である。

こちらの例文で示しているものは、解決すべき問題が少子高齢化であること、その対策への取り組みが必要であることを示します。

「懸案事項」は未解決の問題自体を表し、「課題」はより具体的に、問題解決に向けて動く必要があることを表しています。

また、「懸案事項」が使用できる場面は「既にある、解決されていない問題」を示す場合に限られますが、「課題」は「これから起きる問題」を指す場合にも使用できます。

「懸案事項」の類語・言い換え表現

  • 「懸案事項」の類義語

ここでは「懸案事項」の類語の意味を、「懸案事項」との違いと共に紹介します。

懸念点

「懸念点」は「この先問題が出てくるであろう気掛かりな点、不安に思っている項目、心配事」などを意味します。

「懸念点」も「懸案事項」と同様に、ビジネスシーンやオフィシャルな場でよく用いられる言葉です。

しかし「懸念点」は「今後、将来に向けての不安な事柄」を表します。したがって「既に存在する問題」を指す「懸案事項」と、「この先問題になる可能性がある物事」を指す「懸念点」では、使い方が異なります。

例文は以下の通りです。

  • 冬にかけて、感染症の流行が懸念点である。
  • 懸念点がございましたら、お気軽にお申し付けください。

わだかまり

「わだかまり」は「解消できずにいる不満や疑念、嫌な気分」を意味します。

「懸案事項」と似たような意味合いですが、懸案事項は「事柄」を示し、わだかまりは「感情」を示します。

例文は以下の通りです。

  • 友人と口論になり、きちんと仲直りができていないため、わだかまりが残っている。

気掛かり

「気掛かり」は「心に引っかかっている事柄」「事態が悪い方に行くのではないかと、不安に思うこと」を意味します。

「不安の要因である事柄」と「不安に思う感情」のどちらにも使用できる言葉です。

公的なニュアンスの強い「懸案事項」とは異なり、日常会話によく使用される言葉です。

例文は以下の通りです。

  • メッセージを送った友人から3日も返事がなく、何かあったのではないかと気掛かりだ。

「懸案事項」の対義語

  • 「懸案事項」の対義語

ここからは、「懸案事項」の対義語を紹介します。

解決

「解決」は「問題のある物事をうまく片付けること」「疑問を解消し、納得の行くようにすること」を意味します。

「懸案事項」は「まだ解決されず問題視されている事柄」を表すため、反対の意味を指す言葉です。

既決事項

「既決(きけつ)」は「既に決まっている」ことを表すことから、「既決事項」は「既に決定した事柄」を意味します。

「懸案事項」は「まだ解決していない事柄」「どうするかが決まっていない事柄」を表すため、対照的な言葉と言えるでしょう。

「懸案事項」の意味や使い方をマスターしよう

「懸案事項」は「以前から解決できていない事柄」を指す言葉で、ビジネスシーンや公的な場面においてよく用いられます。

「懸念事項」や「課題」と混同しやすいため、意味合いや使用場面をよく理解することが重要です。

ビジネスシーンにおいて情報や自分の意思を正確に伝えるために、正しい意味や使い方を理解しておきましょう。