JR東日本と日立製作所は5日、共同で開発したフルデジタル変電所システムを2025年度以降に導入すると発表した。変電所構内の伝送路と保護・制御機能の二重化が可能となり、電力の安定供給による鉄道の安定輸送に貢献するほか、設備のスリム化で工事の省力化も可能になる。
現行の保護・制御システムは、変電所構内で受け渡しを行う情報1つに対し1本のメタルケーブルを必要とするため、二重化するには同じ設備を設ける必要があり、実現が困難だった。フルデジタル変電所システムは、光デジタル通信を活用することでネットワーク装置から現場ユニットまで多くの情報を1本の光ケーブルで送ることが可能になり、二重化を容易に実現するという。
JR東日本と日立製作所は、共同で変電所のシステム構成と運用方法の検討を行ったほか、JR東日本の変電所に試験用機器を設置し、実際の環境下で通信状況の確認などを行うフィールド試験を実施。実用化のめどが立ったことから、運用設備への導入を決定した。
フルデジタル変電所システムを導入し、変電所構内の伝送路と保護・制御機能の完全二重化が実現すると、変電所構内において一方の設備で故障が発生しても、もう一方の設備で継続的な稼働が可能に。従来以上に電力の安定供給を行える。
このシステムは監視操作盤・保護リレー盤を統合ユニット(日立製作所開発)に集約・小型化することにより、盤の数量を大幅に削減。ネットワーク装置から現場ユニットまで大量の制御ケーブルを必要としない光デジタル通信を採用することで、制御ケーブルの約9割削減も可能になった。これにより、省スペース化や工事の省力化を実現する。
JR東日本は、フルデジタル変電所システムに国際規格IEC61850を適用することで、機器調達リスクを低減。事業継続性を確保する。なお、IEC61850を適用したデジタル変電所システムの導入は国内鉄道事業者では初めてとのこと。
導入は2025年度以降、小岩交流変電所にて行われる。2024年度から機器を順次搬入し、2025年度に2万2,000ボルト設備をの使用を開始。2026年度に2万2,000ボルト旧設備の撤去と6万6,000ボルト設備の機器搬入、2027年度に6万6,000ボルト設備の使用開始を予定している。