「もしも! のときのためにも『不労所得』の方法を知ることが大切です」と話すのは、ファイナンシャル・プランナーとして、5000名以上のクライアントに運用指南を行ってきた杉原隆さん。
万が一のときのために、穏やかな老後のために、そして家族のために必要な「不労所得の方法」を杉原氏が解説します。
■元気で働ける! という前提が崩れたとき
考えたくもないことですが、「自分が働けなくなった」ということが起きないとは言い切れません。職場の方、学生時代の友人が倒れるとは…。若いのに病気が見つかり、職場への完全復帰は難しい…そんな経験はありませんか。
病気になっても、治療費は高額療養費制度が存続する限り一定の自己負担で済みますが、差額ベッド代や食費は対象外です。休職中、給与の一定額は保障されるでしょうが、治療費以外の出費が増えることは間違いありません。お子さまの教育期間中であれば、希望する進路を断念せざるを得ないかもしれません。
そんなとき、給与所得以外の「所得」があったなら、どれだけ心に余裕ができるでしょうか。
■「2つの所得」と「2つの期間」
「労働所得」と「不労所得」。「短期所得」と「長期所得」。みなさんは今、それぞれどちらの「所得」で生活していますか?
「労働所得と短期所得」と頭に浮かんだ方が大半ではないでしょうか。給与が毎月自分の銀行口座に振り込まれ、その中から生活費や教育費に充てている。
この場合、上述の「元気で働ける」という前提が崩れたとき、多くの場合ピンチに陥ります。身体だけでなく、現代病となったこころの病に罹患し、身体を動かして思うように働けなくなったときに短期の不労所得、できれば「長期の不労所得」を手にできる状態にしていれば、経済的にご自身やご家族を守ることができます。
元気な内に「長期の不労所得」を得られる仕組みを作り始めましょう。
退職の際に自分都合と会社都合があるように、元気にも「自分元気」と「会社元気」があります。事業を取り巻く環境が急変し想定通りの業績が上がらなかったり、取引先が倒産し売上金の回収不能になったり、今後は銀行の貸しはがしで資金繰りが悪化し業務縮小、黒字倒産になってしまうことも想定内です。
自分は元気で働けるのに、会社の元気が衰えたことで収入が減少することも多々あります。自身も会社も健康なうちに不労所得の仕組みを理解してほしいと思います。
■すぐに始められる主な「不労所得」の作り方
では、どんな不労所得があるのでしょうか。主なものを4つ挙げてみました。それぞれにメリットデメリットがあるので、みなさんの環境に応じた相性の合う不労所得を一日も早く作り始めてください。
賃貸不動産:
「賃貸不動産」のメリットは「相続課税資産評価」の減額可能性は大きく、税制で優遇されています。売却することも可能で、購入時より市場が上昇していれば譲渡益を得ることも可能です。
デメリットは初期投資金額は大きく、固定資産税の負担が発生します。空室、不良入居者、近隣住民等のリスクはゼロになることはなく、経年で物件老朽化の修繕費は必要となり、相続発生の際には分割が難しく争族のタネになることも少なくありません。
株式:
「株式」のメリットは短期で収益を得ることが可能です。
デメリットは膨大な銘柄の中から投資する株式を選ぶことは容易ではありません。短期で株価高騰のメリットはある反面、暴落の可能性もあります。また、利益を確定する場合20.315%の源泉課税があるので、手にする利益は実際の約8割となります。
生前贈与:
「生前贈与」には多くのメリットはありますが、やはり相続税の課税対象資産を一瞬にして圧縮できることは大きいです。また、渡す方(主に両親)の意思が反映されるので、相続財産として遺し争族になる(法定相続人が遺産分割協議してもまとまらない)ということを未然に防ぐことができます。一定金額以内であれば非課税です。加えて、「相続時精算課税」という生前贈与の方法を選択することで、今後(2024年1月からルール変更予定)ますますメリットは大きくなります。
デメリットは大前提として親に資産がなければ生前贈与はできません。そして、手元の現金が少なくなることで親の心理的不安が大きくなることもあります。
現金がなくても土地という資産を基にリバースモーゲージ(※)を活用し現金化、その後に生前贈与という方法もあります。
※リバースモゲージ:自宅を担保に資金を借入れし、自らの持ち家に継続して住み続け、借入人が死亡したときに担保となっていた不動産を処分し、借入金を返済する仕組み
変額保険・変額年金という生命保険:
生命保険に変額保険、変額年金という商品があります。メリットは投資信託(運用するファンドを選択)に似ていますが、手にする運用益は一時所得となり税制的には大変優遇されています。
受取利益が「支払総額+50万円」になるまでは非課税で、超過した場合でも超過分の半分にしか課税されません。また、生命保険のひとつなので死亡保障があり、死亡保険金は「受取人固有の財産」という黄金のカードあります。 元気な内は運用利益を優遇税制で受取り、最後は自分の意に沿った方へ遺すことができます。しかも受取人には500万円の非課税枠がもれなくついてきます。
デメリットは中長期の運用が目的の商品なので、株のように短期での利益を求める方には不向きかもしれません。また、選択されたファンドが暴落し、預けた資金が元本割れする可能性もあります。
■不労所得、発電のごとし
「不労所得」の作り方は、エネルギーの作り方に似ています。発電には火力、水力、風力、原子力等ありますが、開発コストを抑え、効率よく発電し、無駄なく送電し利用することが大切です。
開発コスト×発電効率×送電技術
これを不労所得に置き換えると、
初期投資×運用効率×優遇税制
不労所得はあくまでもサブで、メインの所得ではありません。初期投資額を抑え、高い運用効率を目指し、優遇税制を利用して手取り額を最大化することこそ「不労所得」では大切です。
給与以外にある数々の不労所得の方法。
上記のなかで、将来に向け、元気な内に何か始められそうなものを見つけてほしいと思います。
文/杉原隆