里見香奈白玲に西山朋佳女流三冠が挑戦するヒューリック杯第3期白玲戦七番勝負は9月2日(土)に東京都港区の「グランドニッコー東京 台場」で開幕。対局の結果、相振り飛車の力戦を124手で制した里見白玲が防衛に向け好スタートを切りました。
五冠と三冠の直接対決
女流棋戦最高賞金を誇る白玲戦は第1期が2021年に実施されました。A級~D級の4つのリーグに分けられた全女流棋士が通年の順位戦を戦い、A級優勝者が白玲への挑戦権を獲得する仕組みです。昨年このタイトルを里見白玲に奪取された西山女流三冠は、A級を8勝1敗の好成績で駆け抜けてこのリターンマッチを実現しました。
振り駒が行われた開幕局は先手となった西山女流三冠が初手に三間飛車を宣言して幕を開けます。対する里見白玲は向かい飛車に構えて対抗。角を自陣四段目に上がったのが積極策で、先手が素直に応じればこの角が先手陣に直射する点を評価しています。実戦は西山女流三冠がこの作戦に真っ向から対立し、盤上右方から戦いが始まります。
里見白玲が受け切り勝ち
4筋の歩を伸ばして角を追った西山女流三冠は、右側の銀を上がってこの角の捕獲作戦を展開。この折衝が一段落したところで今度は左辺からの敵陣攻略に方針を切り替えますが、結果的にひとつのチャンスを見送ることに。控室の羽生善治九段らが指摘していた通り、感想戦ではここは強気に角の捕獲を目指す歩突きが優ったと結論付けられました。
後手の手損に着目した西山女流三冠の二正面作戦ですが、里見白玲の手厚い受けを前に徐々に息切れし始めます。角との交換で手にした金を後手陣に打ち込んだのは後手の角を詰ます狙いですが、生け捕りするはずだった角のために先に角を切らされるのでは変調の感は否めません。ここから里見白玲の反撃が始まります。
優位に立った里見白玲は左辺で作った馬を自陣に引き付ける手厚い指し回しを披露。こうなると序盤の乱戦で先手玉周辺が痛んでいる点が大きく、後手優勢は明らかです。終局時刻は18時4分、最後は先手玉を即詰みに討ち取った里見白玲が快勝で開幕戦を飾りました。注目の第2局は9月9日(土)に鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)