9月1日からドイツのベルリンで開幕した「IFA 2023」にて、パナソニックのブースを取材しました。パナソニックは2023年、欧州で「Holistic Wellbeing」というテーマのもと、人々の身体を内側・外側の両面から健康にする調理系や理美容系の生活家電、住まいの環境を心地よく変えるオーディオ・ビジュアル家電、そしてデジタルカメラやペットを見守るスマート家電など、コミュニケーションを豊かにする多彩な製品を展開しています。

地球と暮らしを考えた「サステナブルな家電」に注力

パナソニックは世界規模で二酸化炭素の削減と循環型経済に関して、業界をリードするソリューションの確立に力を入れています。製品の製品設計思想にも積極的に見直しをかけています。

例えば、欧米中心に販売している男性向けのモジュール式パーソナルケアシステム。ワンタッチのヘッド交換構造によって、1台のボディで電動のシェーバーや歯ブラシとして使えるなど、パーソナルケアツールとして幅広く活用できる新形態を採用しています。

  • 欧州にも投入したモジュール式パーソナルケアシステム

    欧州にも投入したモジュール式パーソナルケアシステム

  • 先端に装着するモジュールを付け替えることで、複数の使い方ができるように

ドイツなど欧州の一部地域では、2023年夏からスターターキットの「CKN1」「CKL1」(Nがニッケル水素電池、Lがリチウム電池)を70ユーロ前後(約1.1万円)で発売しました。欧州では長めのヒゲを蓄える男性が多いことから、スターターキットのヘッドはトリマーを基本としていますが、単品売りやセット売りなどを予定する「交換式ヘッド」を付け替えると複数の使い方ができるようになります。

1台の製品でユーザーが求めるさまざまな使い道をカバーすることによって、エコフレンドリーであり、かつユーザーの懐にも優しいモノづくりを提案する製品でもあります。パナソニックのモジュール式パーソナルケアシステムは、欧州でも発売直後から話題を呼んでいるそうです。

IFAの開幕に先駆けてオンラインで実施されたプレスカンファレンスでは、パナソニック 代表取締役 社長執行役員 CEOの品田正広氏がスピーチ。「私たちの目標は、多くの人々のウェルビーイングと、地球規模の持続可能性(サステナビリティ)のバランスを取りながら、企業のさまざまなな事業を発展させること。このビジョンを実現するため懸命に努力しています」と語りました。

  • オンラインプレスカンファレンスに登壇したパナソニックの品田社長

欧州の生活スタイルに根付いた製品も人気

白物家電は、それぞれの地域に暮らす人々の生活様式、文化・風習と深く結びついているものであり、商品の研究開発についても地域に根付いた体制を敷くことが大切です。パナソニックは、欧州ではドイツとイギリスに拠点を置いて、コンシューマーに近い距離で生活をリサーチ。集めたデータをグローバルモデルの設計開発に生かしています(この設計開発は日本国内)。

一例であるヘアドライヤーには、欧州にも多い「くせ毛」のユーザーが髪をほぐしながら乾かせるように、大きな櫛(くし)のようなアタッチメントが同梱されています。頭のツボを刺激するマッサージ器が大きくなったような外観に、一瞬びっくりしました。

  • 巨大なアタッチメントが付属する欧州のヘアドライヤー

調理器具はホームベーカリーが人気です。パナソニックのスタッフによると、欧州の人々にとって毎日の食事に欠かせないパンは、作る手間もかかることから「お店で買うもの」でした。しかし、新型コロナウイルス感染症が広がり始めた2020年以降は、いわゆる巣ごもり需要が高まってホームベーカリーが飛ぶように売れたそうです。ホームベーカリーにのラインナップには、固めのパンを好む人が多い「フランス専用機」があります。

  • コロナ禍以降、ホームベーカリーが欧州の人々の生活により深く密着したそうです

    コロナ禍以降、ホームベーカリーが欧州の人々の生活により深く密着したそうです

オーディオについても、欧州ではポータブルラジオの需要が根強くあるとのこと。ついついレトロなと表現してしまいますが、懐かしさを感じるアンテナ付きのポータブルラジオ「RF-D15」は、欧州のデジタルラジオ(DAB+)に対応する最新鋭のモデルです。

また、完全ワイヤレスイヤホンやワイヤレスヘッドホンは、これから普及の拡大が期待できる地域もあります。パナソニックブランドのモデルを投入する国や地域が広がっていくでしょう。

  • 欧州のデジタルラジオ放送を受信できるポータブルラジオ

  • パナソニックブランドからエントリー価格帯のイヤホンも発売されます

中国発、欧州初上陸のスマート家電

中国を拠点に開発されたユーザーのウェルビーイングを高める生活家電が、欧州にも展開を広げるパターンがあります。ひとつは、油を使わない調理家電のエアフライヤーです。

欧州でも健康に気を配った食事への関心が高まっていることから、2023年には2つの新製品を投入します。家族構成に合わせた、5リットルと6リットルのエアフライヤーです。

  • 中国で先行発売し、人気を獲得したというエアフライヤーが欧州に上陸します

余談ですが、筆者の印象として欧州では、ブラックを基調とした調理家電が多いようです。例えばオーブンやエスプレッソマシンだと、特にプレミアムな価格帯の製品で目立ちます。

パナソニックの担当者いわく、欧州でも家族が使う家電を買うときの最終決定権は女性にあることが多いそうですが、それでもブラックの人気が高いところに、「白物」家電が浸透している日本との違いを感じました(現在は日本でも、本体が白ではない生活家電もだいぶ広まりました)。

そしてもう1つの中国発プロダクトは、ペットを見守るスマート家電。パナソニックは日本でもHDペットカメラ「KX-HDN215」を展開していますが、欧州では2023年末から、先に中国で人気のスマートペットフィーダー(ご飯をあげる機器)とスマートドリンクファウンテン(お水をあげる機器)を投入します。低い消費電力で長時間、ペットを驚かせないよう25dB以下のノイズ性能で静かに駆動するスマート家電です。

  • ペット向けのスマートフィーダー(左側)とスマートファウンテン(右側)

ゲーミング用ワイヤレススピーカーがワイヤレス対応に

筆者が注目した、パナソニックのオーディオ・ビジュアル製品の展示をピックアップしましょう。

1つはネックスピーカーの「Sound Slayer(SC-GNW10)」です。欧州では12月の販売を予定しています。日本国内でも、9月21日から開幕する「東京ゲームショウ」に出展するそうです。

  • ワイヤレス対応になったネックスピーカー「SC-GNW10」

同じカテゴリの製品として、パナソニックから有線タイプの「SC-GN01」が発売されています。新製品のSC-GNW10は専用のトランスミッターと組み合わせて、音声の遅延やノイズ混入が少ない2.4GHz帯デジタル無線を採用しています。

  • 2.4GHz帯デジタル無線による遅延のないワイヤレス伝送を実現

また、Windows 11とWindows 10のパソコン、PS5とPS4、そしてNintendo Switchのテレビモードとの互換性を確保しています。パソコンユーザー向けには、本体の詳細設定を行う「Sound Slayerアプリ」が用意されます。

4基のスピーカーユニットを内蔵する本体は、人間工学に基づくデザイン。本体の容積を約60%拡大して力強い鳴りっぷりを実現しました。音声モードには「ロールプレイングゲーム」「FPS」「ボイス」の3種類があり、再生するサウンドに合わせてLEDライトがフラッシュするギミックもあります。

重さは400g前後で肩にかけたときの負担が少なく、筆者も実機で試聴しましたが、自分の周りを迫力あふれる音がふわっと包み込むような心地よい感覚が楽しめました。Intelligo Technologyとの共同開発により、AIを活用したノイズリダクションおよびエコーキャンセル付きのマイクも内蔵。明瞭な声を伝えながら、ゲーミング中のボイスチャットにも対応します。

テクニクスやテレビの注目製品

ポータブルオーディオではテクニクスのブランドから、新たにLDACとマルチポイントに対応したノイズキャンセリング搭載の完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ40M2」がありました。価格は149ユーロ(約2.3万円)。また、アメリカで先行発売した349ユーロ(約5万円)のワイヤレス・ノイズキャンセリングヘッドホン「EAH-A800」の欧州展開もあるようです。

  • テクニクスの「EAH-AZ40M2」を含む完全ワイヤレスイヤホンのラインナップ

  • 日本未発売のノイズキャンセリングヘッドホン「EAH-A800」

ビジュアル系ではフラグシップモデルの有機ELテレビ。欧州の期待に応える形で「ゲーム推し」のデモンストレーションを見せていたことが印象的でした。

テレビに関しては、日本では船井電機とAmazonのコラボによるFire TV搭載テレビが発売されていますが、欧州ではパナソニックなど複数のメーカーから同じFire TV搭載テレビが販売されているようです。欧州は地域によって求められるチューナー構成(地上波/衛星/CATV)などが異なるため、一括してニーズに応えるために「5種類のチューナー」をビルトインしたテレビも展開しています。

  • Fire TV搭載のスマートテレビも欧州で展開中

パナソニックのように、日本を代表するエレクトロニクスメーカーが世界の各地域で暮らす人々の生活に寄り添う独自の製品を作り、多くのユーザーから支持と信頼を得ている様子を目の当たりにできることも、海外のイベントを取材する醍醐味だと筆者は感じています。