ソニーが新型スマートフォン「Xperia 5 V」を発表しました。ハイエンドの「Xperia 1」に近いハイエンドスペックでありながらコンパクトで買いやすい価格を実現した「Xperia 5」シリーズの最新モデルです。
ここでは、実機には触れてみた印象をお届けします。
コンパクトで持ちやすいデザイン
「Xperia 5 V」は、本体サイズH154×W68×D8.6mm、182gのスマートフォン。上位モデルの「Xperia 1 V」がH165×W71×D8.3mm、187gなので、10mmほど縦の長さが小さく、68mmという片手でも持ちやすい横幅が魅力です。
従来との一番の違いは、その「立ち位置」かもしれません。今までの「Xperia 5」シリーズは、「Xperia 1」に近いハイスペックでコンパクトなモデル、というような位置づけでしたが、今回はターゲットユーザーを明確にして、20代の男女がiPhoneではなくハイエンドAndroidを試してほしいという打ち出し方にしています。
とはいえ機能としては従来のハイエンド路線は変わらず、フルステージ・ステレオスピーカーの搭載による高音質なスピーカー、LDAC対応、構成のDAC・アンプの搭載など、こだわり抜いた音の良さ、リアルタイムHDRドライブを搭載した高画質なディスプレイ、新型センサーを搭載したカメラ性能などをアピール。
新アプリ「Video Creator」で「1分以内に簡単なVlogが作成できる」という点も、若者にターゲットを当てたアピールポイントでしょう。
SoCは最新のSnapdragon 8 Gen 2を採用し、128GBまたは256GBのストレージと8GBのメモリを採用。ミリ波非対応ではあるものの、当然5Gにも対応。バッテリー容量は5,000mAhで、3年間使っても劣化しにくい長寿命設計となっています。
こうした各種機能を、単に機能としてアピールするのではなく、「毎日がもっと特別に」なる音楽/撮影の体験や、「好きをとことん楽しむ」ためのVlogやゲームの機能といった形で、「Xperia 5 V」で日常にどういった変化があるのかを打ち出していこうとしています。
メインカメラは最新イメージセンサーになったが、望遠カメラは搭載せず
全体に製品としては順当なバージョンアップですが、大きな変化点として「カメラ」があります。
ハイエンドの「Xperia 1 V」は、広角/超広角/望遠ズームという3つのカメラを搭載しており、望遠側は35mm判換算85~125mmという光学ズームを実現しています。「Xperia 5 IV」では、望遠ズームはないものの、広角/超広角/望遠の3カメラを搭載していました。
今回、「Xperia 5 V」ではこれが広角と超広角の2カメラとなりました。超広角の35mm判換算16mm/有効画素数1,200万画素カメラは従来通りで、「Xperia 1 V」とも同じでしょう。「Xperia 5 IV」から進化したのは広角カメラで、「Xperia 1 V」と同じく新世代センサー「Exmor T for mobile」を採用しました。
このセンサーは、センサーサイズが従来比約1.7倍に大型化し、従来の積層型の裏面照射型の構造に加えてさらに画素を2層構造にしたもので、低ノイズ/広ダイナミックレンジを実現します。
「Xperia 1 V」と同じく4,800万画素のセンサーで、ピクセルビニングを使って4画素を1画素として利用するため、ピクセルピッチも十分大型のサイズになります。
今回、このピクセルビニングが利用できる点が望遠カメラの廃止に繋がったようです。メインカメラをデジタルズームして2倍相当の画角になった段階でピクセルビニングを解除し、4,800万画素の中央を切り抜くことで、35mm判換算48mmという2倍ズーム相当の範囲を切り出します。
ピクセルビニング時より1画素の面積は小さくなるので画質は低下しますが、デジタルズームよりは画質が向上する、というのがソニーの判断です。
実は「Xperia 5 IV」の望遠カメラはピクセルピッチが1.0μmでした。それが新型センサーだと、ピクセルビニングを行わない4,800万画素の状態でも1.12μmとなります。もともと薄いボディに望遠カメラを詰め込むのが難しかったことから、画質が犠牲になっていた望遠カメラですが、高画質なメインの広角カメラのレンズやセンサーを使えることから、中央切り出しでも「Xperia 5 IVの望遠カメラよりもきれいに写る」としています。
「Xperia 5 IV」では60mm相当の画角(ズーム倍率は2.5倍)だったのに対して「Xperia 5 V」では48mm相当の画角(同2倍)になるので、少し物足りない感じがしますが、画質面で向上しているというのはポイント。必要なデバイスが減ったことによるスッキリしたデザインやコスト削減といった面も見逃せません。新型センサーは従来よりもさらに大型化しているので、内部スペース的に難しかったという理由もあるかもしれません。
超広角/広角/望遠の3つの画角をタッチで切り替えるようなUIで、48mm相当の画角を望遠カメラのように利用できます。あくまで切り出しですが、使い勝手は変わらないようになっていました。いずれにしても、ファーストインプレッションとして触れた限りは、以前より画質が低下している印象はなく、1つの手法としてはありかもしれないと感じました。
「Xperia 1」と「Xperia 5」は、主にサイズ感と一部の機能が違う、同じハイエンドスマートフォンという位置づけですが、今回は機能の違いで訴求するのではなく、ターゲット層を明確にしたコミュケーション手法をとっています。それがどの程度効果を発揮するか、実際の動向が気になるところです。