ワコムは8月30日、公式YouTubeチャンネルにて無料講座「ワコムオンラインセミナー【印象的な瞳を描くには?】加川壱互先生のイラスト講座【液タブ】」を開催しました。
キャラクターの顔の決め手となる“瞳”ですが、プロはどのような描き方をしているのでしょうか?ライブ配信には300名ほどの視聴者が集まりました。
どこから描いていく?
今回のセミナーには、キャラクターイラスト、デザインを中心に、最近はVtuberのキービジュアル、ライトノベルのイラストなども手掛けているイラストレーターの加川壱互先生が登場。透明感のあるキラキラとした印象的な“瞳”の描き方をレクチャーしていきました。
加川先生は、液晶ペンタブレット(液タブ)をほぼ垂直に立ててイラストを描いていくスタイル。当日はタブレットスタンドを使いましたが、自宅の作業環境ではアームで吊っているそうです。配信の後半には、視聴者から「手は疲れないんですか」などの質問が寄せられました(後述参照)。
さて、この日の配信では完成予想図を横に置き、ラフの状態から色を塗り始めました。
まずは瞳の上半分を濃い色でベタ塗りに。こうすることで「ハイライトが映える」と解説します。この日の瞳のベースとなる配色にはネイビー×薄緑を選択。本来であれば同系色で揃えるところですが、加川先生のなかでは今「面白い配色を試す」のが流行っているとのこと。
黒目の真ん中=瞳孔については「最後まで位置を調整できるように」、別レイヤーで描いているそう。色合いは少し紫がかったものにしました。
「瞳は、なるべく色の情報数を増やしたいんです。でも、あまりガチャガチャしすぎても良くない。全体的には同系色を意識しながら、敢えてほかの色も入れるようにしています」。
わりと早い段階で瞳の斜め上にハイライトを入れました。「目標があったほうが描きやすいので、試しに入れてみました。最近はガラスっぽい瞳を描くのが好きです」。
ここで、まぶたと瞳の間にも1色だけ線を引きます。
「まぶたのラインをはっきりさせるためです。反射光が入るようなイメージで。目線が分かりやすくなります。光を入れることで、宝石のような表現にもなりますね」
瞳の描き方について、自分の「型」が決まってきたのはここ2、3年前のことです、と加川先生。瞳の下の方にハイライトの斑紋をいくつか足したあと、虹彩を表現するために中心から外に向かって放射状に伸びる線を入れていきます。
ここで瞳孔の下部にも薄緑の光を入れると「視線が定まった」感じになったほか、眼球の下半分に少し濃い目の緑を入れることで立体感がはっきりします。
目尻は赤く着色。「このあたりは、メイク動画を見ると良いと思います。瞳を描くときの参考にしてみてください」と続けます。
そして、まつげの表現に悩む、と加川先生。「最近、ボクが好きなのは軽いタッチで線を入れて、バサバサしているように見せるやり方。下まつげも描きたいんですよね。まぶたの表現の幅が広がるので、表情がつきやすくなるから」。
表情に複雑さを求めるときは左右の目を非対称にすると良い、という金言もありました。
「片方の目だけ隠すと『やれやれ』という顔、もう片方の目だけ隠すと『安心感』、そんなバランスにすると複雑な表情ができあがります。嬉しい×不安のブレンドと言いますか。目の表情をわざと不揃いにすることで、奥のあるというか、単純ではない笑顔になるんですね」
行きすぎない範囲で左右の目を非対称にしてみてください、と加川先生。ここで視聴者からは「ちょっとした違和感が目を引くということですね」というコメントが見られました。
漫画を読んでいるとき、良い表情を見つけたらスクショして自分でも描いてみる、と加川先生。「イラストレーターよりも漫画家のほうが、表情をつくるのがうまいですね」と話します。これにMCも「ストーリーを追って、キャラクターの情緒がコマごとに変化していくからですかね」と応じました。
瞳に小さな四角いハイライトを加えると「こうすることでツヤ感が増すんです。カメラのレンズか何かが反射しているのか、そんなイメージです。表面にテカリの情報が加わって、ガラス細工っぽさが増します」。
そして「これから、めちゃくちゃラクチンなことをします」としてから、CLIP STUDIO PAINTでプリズムブラシを選択。「目がキラキラ、勝手に輝き出します(笑)。これだけで瞳の情報量が増えてリッチになる。便利ですね」。
そして目尻と外の頬にチーク。「泣き顔メイクに近いのでしょうか、ボクはこういうメイクが好きなんですよね」と話します。頬には細いざらついたペンで斜線を引き「こうすることで爛漫さが出ます」としました。
加川先生が考える“絵の上手さ”とは?
ここで作業環境についての話題となります。加川先生は普段、どんな仕事場でイラストを描いているのでしょうか?
「Cintiq Pro 16で描画しながら、資料用モニタ1に画像を表示させていて。資料用モニタ2の用途は検索です。すべてのモニターをアームで吊るしています。椅子は、オカムラのバロンチェア(Baron)です」
「結局、絵の上手さ=線の上手さだと思うんですよ。そして上手い線を引くコツは、良い姿勢を保つことじゃないかと思ってて」と加川先生。
手は疲れないんですか、という質問には「モニターに手をつけながら描くこともありますし、バロンチェアの手すりにクッションを敷いていることもあって。アームレストもあるし、そこまで手は疲れないです」としました。
視聴者から、流行りのメイクは意識するんですか、と質問されると「以前はよく見ていました。そろそろ情報を更新しなくては、とも思っています。もともと、好きなイラストレーターさんが描く顔の表現を集めていたんですが、あるときメイク動画を見たら、同じことをしていて。一緒なんだと思って、そこからメイク動画を見るようになりました」と回答しました。
予定していた1時間半を使って、瞳はほぼ完成。コメント欄は、お疲れ様でした、参考になりましたという書き込みで溢れていました。なおセミナーの様子は現在、アーカイブでも視聴できるようになっています。