冗長測定システムによる安全性/信頼性の向上
EVの航続距離伸長や安全性の確保のためには、万が一測定システムに故障などが発生した際に、異常を正確に検知する機能が必要となる。
新製品のBM-ICおよびPM-ICでは、素子や機能ブロックが電気的に独立した2重の測定システムを搭載し、冗長性を確保。2つの測定結果を照らし合わせることで、メイン・サブどちらかに発生した異常を正確に把握し、アラートを発することができるとする。
また双方向リング通信を用いることで、データ通信における異常が発生した際にも途切れることはなく、堅牢性の高いシステムを構築可能だとしている。
車両駐停車時のチップセット単独でのバッテリ異常監視
EVの安全性向上のためには、走行時だけでなく車両の駐停車時にもバッテリの監視を行うことが求められる。しかし従来のBMSで駐停車時にバッテリ監視を行う場合には、マイコンから発出された監視の指示を、通信ICを介してそれぞれのBM-ICへと伝える必要があり、消費電力の増大が課題とされていた。
そこで新製品では、駐停車時にチップセットが単独でバッテリを監視する方式を採用。異常を検知した際に限りマイコンを再起動させ、BMSによる異常への対応を開始するという。
これにより駐停車時にマイコンを起動させる必要が無く、必要最低限のシステム電力によって異常を監視することが可能になり、EVのあらゆる利用シーンにおける高い安全性を実現するとしている。
電圧と電流の同期測定によるBMSの劣化状態の高精度推定
EVの動力源であるバッテリは、使用することによりその電力を消費し、充電率(SOC)が低下する。また一方で、充放電を重ねることでバッテリ自体が劣化し、いわゆる“満充電時”の充電量が低下していく。このような、新品バッテリの満充電時と比較した場合の満充電の割合をSOHと呼び、バッテリの劣化状態の指標として用いられる。このSOHは、システム内を流れる電流と電圧から算出されるインピーダンスをもとに算出されるという。
今回ヌヴォトンが量産を開始するチップセットでは、BM-ICで電圧を、PM-ICで電流を測定することが可能。また同社は、この2つの計測を同一システム内かつ高精度で同期測定できる点に強みがあるとする。
インピーダンスの算出には、電流および電圧の変化を計測する必要があり、その値を照らし合わせることで算出される。ヌヴォトンの新製品では、この測定の同期幅を10μs以内まで短縮したとのこと。これにより、電流や電圧の変化量をより正確に把握したうえで照らし合わせることができ、より高精度なインピーダンスおよび電池劣化状態の推定が可能になるとしている。
チップセットとしては2024年に販売へ
なお新チップセットの販売について、BM-ICおよび通信ICは9月から順次開始するとのことで、2024年1月~3月ごろにはPM-ICも販売を開始する見通しだという。
販売計画としては、前世代製品の販売を続けていきながら、新製品の顧客を獲得することで販路を拡大していきたいとしており、今後のEV市場拡大を見据えて、バッテリメーカー各社とも調整を行いながら新たな技術の開発を目指していくとしている。