フォルクスワーゲンで最も売れている電気自動車「ID.4」の最新モデルが日本にやってきた。これまでよりもフル充電で走れる距離が伸び、鮮烈な赤のボディカラーが新たに追加となって、ますます商品力が向上した印象のID.4。実際に乗ってグレード間の違いも体験してみた。

  • フォルクスワーゲン「ID.4」

    新色として追加された「キングズレッドメタリック」をまとった「ID.4 Pro」

走行距離が短い「Lite」でも満足できる?

ID.4はフォルクスワーゲン(VW)が2020年に発表した電気自動車(バッテリーEV=BEV)のSUVだ。日本では2022年に発売となり、導入記念の特別仕様車「ID.4 Launch Edition」がすぐに完売となるなど好評を博している。

2023年モデルでは新色「キングズレッドメタリック」が追加となり、走行距離も伸びている。納車に関しては、2023年8月から安定した供給が見込めることになったそうだ。

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    リアは無駄な装飾がなくスッキリとまとめられている

ID.4は「Pro」と「Lite」の2グレード展開。主な相違点は走行距離だ。

2023年モデルが搭載するバッテリーの容量はProが77kWh、Liteが52kWh。数値は2022年モデルと変わっていないのだが、走行距離は伸びている。具体的にはProで561kmが618kmに、Liteで388kmが435kmに長くなった。車体を制御するブレーキ関連を調整し改良することで、減速時のエネルギーをより多く電力に変えることができるようになったため、走行距離の延伸が実現できたという。価格はProが648.8万円、Liteが514.2万円となる。

ProはID.4の中核モデルとして、積極的に売り出していきたいというのがVWジャパンの考え。ただ、走行距離は控えめでも価格を抑えたいというユーザーも一定数いることから、あえてエントリーモデルとしてLiteも用意しているそうだ。

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    「Lite」の内装はシンプルだが必要最低限にまとめられていてスッキリしている。ナビやエアコンの操作もしやすい

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    こちらも「Lite」の後席シート。非常に広く、足を組んでも座れるほど。シートは若干硬めだが座り心地は悪くない

今回は2023年モデルのLiteに試乗してみたが、Proと比べても遜色のない車内の質感の高さには驚かされた。急な登り坂でアクセルを踏み込んでも、もたつくことなく加速はスムーズ。一見するとかなり大きなクルマに見えるが、乗り込んでみると大きさをあまり感じない点にも好感が持てた。

気になった点を挙げるとすれば、路面からの振動だ。平坦な道では乗り心地がいいものの、マンホールや道路の接目などに乗り上げると、思った以上の振動が感じられた。悪路での乗り心地には改善の余地がありそうだ。

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    シフトチェンジは一般的なシフトレバーやボタンではなく、メーターパネル右上のグリップのような部分を回して行う。操作には慣れが必要かもしれない

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    足元のペダルには動画の一時停止や再生のようなマークがデザインされている。遊び心も忘れていない

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    トランクスペースの開口部は広くて大きな荷物の出し入れがしやすそう

試乗するまでは「ID.4を買うなら絶対にProだ」と思っていたが、試乗してみると案外、Liteでも満足できた。長距離(といっても400km級の)を走らないということであれば、Liteでも不足を感じることはないだろう。ProとLiteでは100万円以上の価格差があるため、目的や予算に応じて選ぶことをおすすめする。

全国19都市で「ID.4」に触れる! 乗れる!

2023年モデルの登場を機にVWジャパンでは、全国19都市をまわり、さまざまなユーザーにID.4の魅力を知ってもらうためのイベント「Volkswagen ID.4 Caravan」を開催する。

キャラバン開始に合わせたイベント(@東京ミッドタウン)に登壇したVWジャパン 広報・マーケティング本部ディレクターのトマ・ビルコ氏によれば、ID.4には以下の3つのポイントがあるそうだ。

「ひとつ目は新色の導入や走行距離の延長などにより、商品と技術を進化させたことです。ふたつ目のポイントは、大きすぎず小さすぎず、あらゆるニーズに対応できるボディサイズであり、リーズナブルな価格設定とし、高い安全性能の確保を実現して、世代を問わないみんなのためのEVになったこと。そして最後は、環境負荷低減を実現し、社会に対する責任と人への配慮を行ったことです。この3つのポイントを押さえたID.4は、VWの全世界的な戦略『Love Brand』(愛されるブランド)を達成するために必要不可欠なことだと考えています」

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    VWの戦略を説明するトマ・ビルコ氏

2022年におけるID.4の納車台数は世界で約17万台。購入者層は「若い世代から孫をかわいがっている世代まで」幅広いという。ID.4はVWのBEVラインアップで最も売れているモデルだ。販売台数増加に向けた戦略について、VWジャパン 広報・マーケティング本部 広報課 スペシャリストの山崎信雄氏は次のように説明する。

「ID.4を多くのお客様に届けるため、そして届けたあとにも満足してもらうためにサポート体制を整えました。例えば『ID.4 360°サポート』では、全国200拠点以上で購入後のアフターサービスを受けられます。また、充電スポットの拡充などにも尽力しました。特に充電については、いつでもどこでも充電できるようにするため、VWの販売店だけでなく、同じVWグループであるポルシェやアウディなどの販売店でもID.4を充電できるようにしました(一部条件あり)。ID.4の2023年モデルは走行距離が伸びたことで、より安心して長距離移動ができるようになりました」

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    「ID.4」の商品としての魅力を解説する山崎信雄氏

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    会場には「ブルーダスクメタリック」カラーの「ID.4」も展示

VWジャパン 広報・マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション課 シニアマネージャーの後藤孝也氏は、ID.4の供給体制について次のように話す。

「2023年夏以降はID.4の供給体制を最大化しています。つまり、購入を希望されるほぼすべてのお客様に即納できる体制が整いました。ぜひ、今回のイベント『Volkswagen ID.4 Caravan』や全国の販売店でID.4に乗っていただき、その魅力を体感してほしいと思っています」

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    新ブランド戦略などを説明する後藤孝也氏

持田香織さんが語るVW愛

会場にはVWユーザーのシンガーソングライター 持田香織さんが登場。20歳で免許を取り、一目惚れしてすぐに購入した「ゴルフ カブリオレ」が20年以上の愛車というから、VW愛は筋金入りだ。何度も整備や点検、修理を重ね、大切に乗り続けてきたという。VWが掲げる世界戦略「Love Brand」を体現している持田さんのVW愛が炸裂したトークショーとなった。

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    持田香織さん(右)とトークセッションをしたドイツ本社認定トレーナーの金子陽一氏(左)

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    一目惚れで購入した「ゴルフ カブリオレ」を20年以上にわたり乗り続けていると話す持田さん。最近追加で購入した新型「ゴルフ」(ムーンストーングレーのボディカラーが気に入ったとのこと)でも毎日ドライブを楽しんでいるという