第9期叡王戦(主催:株式会社不二家)は、段位別予選九段戦の佐藤康光九段-郷田真隆九段戦が8月28日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、144手の熱戦を制した郷田九段が森内俊之九段の待つ次回戦に進出しました。
クラシカルな矢倉戦
本予選(九段戦)は3つの山に振り分けられた29名の九段棋士がトーナメント形式で争い、これを勝ち抜いた3名が本戦に進出するもの。郷田九段はこの日の午前に行われた中村修九段との矢倉戦を制しての登場です。振り駒が行われた本局は両対局者の息が合った結果、クラシカルな相矢倉の戦型に落ち着きました。
1筋の位を取って持久戦を望む先手の佐藤九段に対し、後手の郷田九段は素早く右銀を活用して揺さぶりをかけます。これを受けた佐藤九段が角の大きな活用で後手陣をけん制したのは自然な受けですが、郷田九段が今度は9筋・3筋・6筋の歩を連続でぶつけて打開。先手の角筋を逸らす狙いがあります。
郷田九段が粘り勝ち
適当な受けはないと見た先手の佐藤九段は右辺からの端攻めに綾を求めます。相居飛車らしく盤面全体を使った攻め合いが繰り広げられたのち、佐藤九段は持ち駒の香で後手陣の守備の要となる金をはがすことに成功。その後も細かくポイントを稼ぎながら、佐藤九段が形勢をリードしたまま局面は終盤戦に突入しました。
敵陣に竜を作って好調の佐藤九段ですが、郷田九段も玉を自陣三段目に逃がして決め手を与えません。両者秒読みの時間が続く中、佐藤九段に後悔の一手が出ます。後手からの飛車交換の提案に対して歩を打って拒否したのがそれで、局後の検討では筋悪でも二段目に金を打てば先手からの攻めが続く形とされました。
終局時刻は16時41分(14時対局開始、持ち時間各1時間)、自玉の受けなしを認めた佐藤九段が駒を投じて熱戦に幕が引かれました。中盤以降は守勢の時間が続いた郷田九段ですが、決め手を与えない指し回しが光りました。
水留 啓(将棋情報局)