第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、二次予選決勝の稲葉陽八段―佐々木勇気八段戦が8月25日(金)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、154手の熱戦を制した佐々木八段が自身初となる王将リーグ入りを果たしました。
リーグ入りを賭けて
本棋戦の二次予選は一次予選を勝ち抜いた8名にシード棋士を加えた計18名を6人トーナメントに分け、これを勝ち抜いた3名が挑戦者決定リーグに入るもの。これまでに菅井竜也八段がリーグ入りを決めています。振り駒が行われた本局は、先手となった稲葉八段が角換わり腰掛け銀の定跡形に誘導して幕を開けました。
仕掛けをめぐる間合いの計り合いが続いたのち、稲葉八段が4筋の歩をぶつけて戦いが始まります。これによってできた空間に自陣角を打ったのはこの角のにらみで盤面全体を支配する狙いですが、一方の後手の佐々木八段もこれを許さじとすぐに反発。数で足りない6筋に桂を跳ねて銀交換を挑んだのがその手始めです。
佐々木八段が二転三転の終盤制す
手番を得た佐々木八段は先手陣に角を打ち込んで攻撃を続行。稲葉八段がこの金取りを手抜いて攻め合いで応じた結果、局面は一触即発の終盤戦に突入します。盤面全体を使った押し引きが続いたのち形勢をリードしたのは先手の稲葉八段でした。駒の損得はほぼ互角ながら自陣四段目に逃げ出した稲葉玉にはすぐの寄り筋がありません。
後手玉に対する早い攻めもないと判断した稲葉八段は敵陣への入玉による優勢拡大を目指しますが、佐々木八段はここで勝負手を用意していました。取られそうな自陣の香を起点に銀を打って足がかりとしたのがそれで、こうなると稲葉八段の入玉も容易ではありません。その後も一手ごとに形勢が入れ替わる攻防が繰り広げられます。
難解なねじり合いが続いたのち、最後に抜け出したのは佐々木八段でした。香を打って先手玉の進入を食い止めたのが決め手。持ち駒の銀を手放すと佐々木玉への詰み筋がなくなるため稲葉八段は手段に窮しています。終局時刻は17時5分、最後は自玉の詰みを認めた稲葉八段が投了。佐々木八段が熱戦を制して自身初となる挑戦者決定リーグ入りを決めました。
リーグ入りをめぐる残り1席は渡辺明九段と横山泰明七段の間で争われます。
水留 啓(将棋情報局)
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