第36期竜王戦2組昇級者決定戦(主催:読売新聞社)は、3回戦の糸谷哲郎八段-増田康宏七段戦が8月24日(木)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、113手で快勝した糸谷八段が1組昇級まであと1勝としました。
糸谷八段の陽動四間飛車
2組昇級者決定戦は7人からなるトーナメントを勝ち抜いた2人が1組に昇級するもの。糸谷八段はここまで鈴木大介九段・藤井猛九段という振り飛車党の先駆者を破っての登場です。振り駒が行われた本局、先手となった糸谷八段はまず雁木囲いの枠組みを作りますが、すぐに四間飛車に振り直す陽動作戦を披露しました。
教科書通りの雁木囲いに組んで様子をうかがう増田七段に対し、糸谷八段はここから奔放な指し回しでリードを奪います。自陣の囲いも完成しないうちに飛車を上下に動かしたのがうまい揺さぶり。飛車の成り込みを見せるこの動きによって敵飛を狭い場所に封じ込め、糸谷八段は自らの攻めに専念することができるようになりました。
糸谷八段が快勝
手番を握る糸谷八段は、今度は角筋を生かしたライン攻めで後手陣の直接攻略に乗り出します。逆転を目指す増田七段が先手陣深くに銀を打って飛車金両取りをかけたのに対し、追われた飛車を右辺に転戦したことによって糸谷八段の全軍躍動がはっきりしました。こうなってみると増田七段の打った銀は完全に遊び駒になっています。
豊富な持ち駒を手にした糸谷八段の寄せは明快でした。後手陣深くに角を打ち込んで飛車銀両取りをかけたのが単純ながら厳しい決め手。終局時刻は17時35分、増田七段の王手ラッシュをかわしきった糸谷八段が持ち時間を2時間あまり残して快勝。糸谷八段は次局で1組昇級をかけて菅井竜也八段と対戦します。
水留 啓(将棋情報局)
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