「作品を通じたキャッチボールができることがずっと好きで、今でもずっと続けたいと思っています。その気持ちは変わらないですし、仕事が自分の生きる意味というか」。そう語るのは、主演作の連続ドラマW 湊かなえ『落日』(WOWOW)が9月13日(日)に放送・配信開始を控え、今年の10月でデビュー20周年を迎える北川景子だ。
雑誌『Seventeen』のモデルとしてデビューし、結婚や出産も経験しながら俳優としてのキャリアを積み重ねてきた北川だが、過去には仕事を「やめたい」と思ったこともあるという。果たして彼女は何を原動力として仕事を続けてきたのか?そして母となった今の彼女を支えている存在とは?10代から30代に至るまでのマインドの変化と併せて語ってもらった。
――放送を控える連続ドラマW 湊かなえ『落日』では、15年前に起きた「笹塚町一家殺害事件」の真相に迫る映画監督・長谷部香を演じられました。『落日』におけるモチーフの1つが映画です。香が作ろうとするだけでなく、あるキャラクターの心の支え・原動力のような存在でもありますが、北川さんにとってそういった存在はありますか?
仕事をする上での原動力は、今年で20年目になるんですけど、本当に応援してくださるファンの方ですね。もともと『Seventeen』っていう雑誌のモデルから始まったんですけど、読者の方が雑誌の中に挟まっている葉書で「誰がいい」っていうのを投票してくださって、それで自分がデビューできているんです。そういう始まりだったこともあって、ファンの方との関係性はすごく大事にしています。
皆さんが見てくれると思うから作品も頑張れるということがあるので、ファンの方が応援してくれること、ほぼそれだけですね。それがなければ、やっぱり辛い仕事なので、ときどき「もうやめたい」みたいなこともありましたけど、次回作を楽しみにしてくださっている方がいらっしゃるなあって。顔見知りになっているファンの方や、(顔が)浮かぶ方たちもいらっしゃるんです。いつも来てくださる方は、若い頃から出待ちとかに来てくださっていて。同じように結婚して子供ができてみたいに、一緒に成長されてきた方の姿が原動力になったりします。
プライベートだと、普通においしいものを食べたいです(笑)。ご飯を食べることですね。あとは子どもと外に出て遊ぶこと。家にいると鬱々としちゃうときがあるので、子どもと外で遊んだりするのが、今は自分に合っています。じっとしていない方がいいんだなって。割と引きこもれるタイプなんです。じっと家で座っていられるので。でもやっぱり、外に出て太陽を浴びる方がいいなあって。コロナとかを経験して「外って大事なんだ」って思いました。最近は子どもと動物園に行ったり、そういうのも楽しいです。
仕事が好きという気持ちは変わらない
――お話にあったように、今年の10月にはデビュー20周年を迎えることになるんですよね。10代、20代、30代とキャリアを振り返って、変化した部分と変化していない部分をそれぞれ教えてください。
基本的にほとんど変わっていない気はするんです(笑)。仕事が好きという気持ち。演じることもすごく好きですし、モデルの経験もあるから写真撮影とかもすごく好きです。なにか作品を通じて世の中に問題を投げかけて、それに対して皆さんが反応してくださったりして、作品を通じたキャッチボールができることがずっと好きで、今でもずっと続けたいと思っています。その気持ちは変わらないですし、仕事が自分の生きる意味というか。こうやって皆さんが求めてくださるのもこの仕事を通じてだから、自分の価値を感じられるのは、仕事をしている時がすごく大きいなと思います。
変わったのは……デビューしたときはどんどん自分のことを知っていただきたいじゃないですか。有名になりたいし、ちょっとでも名前とか顔とか自分の考えとかを人に知っていただきたいっていう気持ちが強かったんですけど、今はときどき自分の考えとかを言うのが怖いです。それは「こうやって言うと、こう思われるんじゃないか」「北川景子がこういう風に言ってて引くよね」とか。インタビューで話した言葉を、全部読んでいただいたら、もしかしたらわかっていただけるかもしれないですけど、2行くらいしか読まれない方は、「そういうことをあの人は言っていたけど、なんかちょっとがっかりした」というように思われるんだろうなあって。
ちょっとでも知っていただきたいから、なんでもオープンに自分の気持ちを発信していました。最初の方は、インタビューを受けられることもありがたかったので、何でも話していたんですけど、今はどこかで言葉を選んでいる自分がいます。そこはすごく変わったところです。立場とか今置かれている環境に伴って、それが悪い変化ではないのかもしれないですけど、そうするしかないというか、そうなってしまったのかもしれないです。でも本当はもっと激しいものを持っていますし、言ってもいいなら言いたいことって山ほどあるのは変わらないから、ちょっと減らすようにしました(笑)。そこがちょっと違うところかもしれないです(笑)。
――『落日』は家族の物語でもありますが、北川さんはご家族と向き合ううえで大切にしていることはありますか?
考えていることを隠したりはしないようにというか、普通にオープンマインドで接するようにはしているんですけど、それくらいですかね。あとは、あまり家で仕事のことはしないというか、全然しないんですけど(笑)。「仕事のことは仕事の現場だけ」みたいな感じです。夫の前でとか子どもの前で台本を覚えるとか、そういうのは全然しないようにしていたり。「今日、仕事場でこんなことがあった」とか、そういう話もほとんど家ではしないというか。それはそれ(笑)。マネージャーと車で行き帰りのときに話したりとかしますけど、「家庭に仕事は持ち込まない」みたいな感じにはしています。
■北川景子
1986年8月22日生まれ。兵庫県出身。ファッション誌『Seventeen』のミスセブンティーンとしてキャリアをスタートさせ、特撮ドラマ『美少女戦士セーラームーン』ではセーラーマーズ役を務める。『モップガール』で連続ドラマ初主演を務め、これまでに『HERO』『家売るオンナ』など多数の作品に出演。映画では『間宮兄弟』で初出演を務め、近年では『スマホを落としただけなのに』『ラーゲリより愛を込めて』などに出演してきた。2023年の10月にはデビュー20周年を迎える。