今回は「おめでとうございました」について解説します。結婚式などの挨拶で聞くことがありますが、なんとなく「おかしいのでは」と違和感を抱く人も多いのではないでしょうか。違和感を抱く理由なども紹介しているので、ぜひチェックしてくださいね。
「おめでとうございました」はおかしい? 過去形なのはなぜ?
「おめでとうございました」は、嬉しい出来事があった相手に対して祝意を伝える言葉です。また、そのような状況の相手に対して挨拶のように使用する場合もあります。
おめでたい場面で使用されることが多い言葉ですが、「なぜ過去形なの?」と違和感を抱く方も少なくありません。
ここでは、「おめでとうございました」という表現は間違っているのかとうことや、違和感を抱く理由などを解説します。
「おめでとうございました」は間違い?
「おめでとうございました」は「おめでとう」の丁寧語であり、決して間違った表現ではありません。結婚式のスピーチや、スポーツ選手へのインタビューなどでもよく使用される言葉です。
丁寧語でもあるため失礼にはあたらないのですが、一方で、違和感を抱く人は少なくないでしょう。「なぜ過去形なのか?」という疑問が生じてしまうためです。
以下で、「おめでとうございました」は過去形なのかどうかを解説します。
「おめでとうございました」は過去形?
「おめでとうございました」は、過去形ではなく「認識の完了」の意味を表す言葉です。「そんなことがあったんだね、おめでとう」という、認識の完了の意味で「た」が用いられています。
「あ、ここにあった」や「見つかってよかった」などの表現と同様に、過去形としてではなく完了としての「た」が用いられているのです。
「おめでとうございました」に違和感を抱く原因とは
多くの人が、「た」で終わる文章については過去形の印象を持つでしょう。「走った」「座った」など、さまざまな過去形の表現に「た」は使用されます。
一方で、「出会えてよかった」「ここにあった」のように、完了の意味で自然に用いられている表現もあります。「おめでとうございました」もその一つだと捉えると、文法的には間違っているとはいえません。
しかし、「ございました」として「た」が使われる場合、その多くが過去形の表現になります。そこで、「おめでとうございました」も過去形の印象に引きずられ、相手に違和感を与えてしまうのだと考えられます。
「おめでとうございました」の地域ごとの違い
「おめでとうございました」に違和感を抱くかどうかは、地域によっても差があります。
例えば、挨拶に「おばんでした」を使う東北地方の人々は「おめでとうございました」に対しても違和感を持つ割合が少ないというデータがあります。
また、中国四国地方でも違和感を抱く人は少なく、関東甲信地方では多いという統計も出ており、地域に応じて使用を判断するとよいでしょう。
「おめでとうございました」の使い方・例文
「おめでとうございました」は、結婚式や卒業式などお祝いの場でも使える言葉です。
この章では、「おめでとうございました」の使い方を例文とあわせて紹介します。さまざまな場面で使いこなせるようにしましょう。
「おめでとうございました」を年賀状で使う場合
年賀状では「おめでとうございました」という表現を使いません年賀状や新年の挨拶においては、「あけましておめでとうございます」に統一しましょう。お正月に使われる挨拶として定着しているためです。
お返しの年賀状であっても、新年の挨拶である以上「おめでとうございました」を使用するべきではないでしょう。初仕事の挨拶などでも一般的には使用しません。
「おめでとうございました」を結婚式のスピーチで使う場合
「おめでとうございました」は結婚式の挨拶としてよく使われるフレーズであり、使用しても問題はありません。
ただし、「おめでとうございました」の許容度については地域によって差があるため、違和感を抱かせそうな場合は「おめでとうございます」という言いまわしに切り替えたほうが無難でしょう。
以下は結婚式で使える例文です。
- 「新郎新婦、ならびに両家の皆さま、本日は誠におめでとうございました。おふたりの末永い幸せを心よりお祈りいたします」
「おめでとうございました」をスポーツ選手へのインタビューで使う場合
「おめでとうございました」は、スポーツ選手へのインタビューやその記事などでもよく見聞きする表現です。優勝や昇進、個人賞の受賞などがインタビューの時点で既に確定している場合は、完了の意味合いを込めて「おめでとうございました」を使っても違和感はないでしょう。
ただし、「おめでとうございます」と表現しても意味に大きな差は生まれないため、前後の文章に応じて使い分けるとよいでしょう。
以下はインタビューで使える例文です。
- 「〇〇選手、MVPの獲得おめでとうございました」
「おめでとうございました」を誕生日に使う場合
誕生日の祝福を伝える場合、当日であれば「おめでとうございます」と表現し、後日の場合は「おめでとうございました」としてもよいでしょう。
完了の意味を表す「おめでとうございました」は、当日の挨拶に使用しても本来は問題ありません。しかし、違和感を覚える人もいるため、当日には使わないほうが無難です。
職場の取引先など、誕生日の当日に祝えない相手には、後日「おめでとうございました」と伝えても問題はありません。
以下は誕生日で使える例文です。
- 「社長、先日はお誕生日おめでとうございました」
「おめでとうございました」の類語・言い換え表現
この章では「おめでとうございました」の類語、言い換え表現について解説します。
祝意を伝える言葉には多くのバリエーションがあります。さまざまな言い換え表現を身につけ、シーンにあわせて使い分けましょう。
おめでとうございます
「おめでとうございます」は、祝意を伝える表現においてもっとも一般的な言いまわしです。
どの場面で使用しても違和感を抱く人は少ないため、文脈に応じて「おめでとうございました」や「おめでとうございます」を使い分けることがおすすめです。
また、「おめでとうございます」は定番のフレーズであるため、現在より前のことに使用しても違和感を抱く人はほとんどいないでしょう。
お祝い申し上げます
「お祝い申し上げます」は祝意を謙譲語で表現し、相手を敬う気持ちを表します。かしこまった場に適しているため、結婚式やおめでたい場でのスピーチに使用できるフレーズです。
結婚式や祝賀パーティでは目上の人も多く、謙譲の姿勢で話すことは謙虚さや慎ましさを伝えることができるため、「お祝い申し上げます」を活用してみましょう。
お慶び申し上げます
「お慶び申し上げます」も、「おめでとうございます」の謙譲語として使える言葉です。
公式の場のスピーチなどで使用可能なことはもちろん、手紙やメールなどの書き言葉でも使えます。
目上の人に祝意を伝える場合に重宝するフレーズでしょう。
また、「お喜び」と表記しても問題ありませんが、お祝いごとや新年の挨拶には「お慶び」を使用することが一般的です。
「おめでとうございました」はおかしい表現ではない
「おめでとうございました」は完了の意味を表す正しい表現方法です。しかし、過去形の意味で受け取られる場合も多く、違和感を抱く人もいるでしょう。
間違った表現方法ではありませんが誤解を与える恐れもあるため、相手や状況に応じて使い分けることがおすすめです。
意味や表現方法を正しく理解し「おめでとうございました」を使いこなしましょう。