日本テレビ系大型特番『24時間テレビ46』(26日18:30~)。夏休みの終わりの風物詩として長年にわたり親しまれてきたチャリティー番組だが、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年に、対面募金の中止やそれに伴うキャッシュレス募金の導入など、転機を迎えた。
その年に“新しい日常での1回目”を掲げ、今年再び総合プロデューサーを務める日本テレビの吉無田剛氏は、コロナ禍を経ての『24時間テレビ』を“第3ステージ”と位置づけ、新たに“未来志向”というコンセプトを盛り込んだ。その狙いとは――。
■子どもたちにスポットを当てた企画を選定
1978年にスタートした『24時間テレビ』。吉無田氏は「都築(忠彦)さんが立ち上げて、欽ちゃん(萩本欽一)がパーソナリティーをやっていた初期が“第1ステージ”。そこからちょっと下火になったときに、よりたくさんの人に見てもらおうとマラソンが始まり、『サライ』が生まれた1992年からの時期が“第2ステージ”。その後、コロナという外的要因があって、なんとか途絶えさせずにつないでいく2020年、21年、22年を越えたときに、“第3ステージ”になるんじゃないかと思うんです」と、その変遷を捉える。
新たなステージに移行するということは、そこから先の5年・10年を見据えた土台を作ることだ。
「『24時間テレビ』がこれからもずっと続いていくためには、第1ステージ、第2ステージで築き上げたものを礎にしながら、10代や20代の若い世代が、この社会をより良くしていくことを考える番組にしなくちゃいけないというのが、パーソナリティーの選考とテーマ設定の根幹にあって、メインパーソナリティーはなにわ男子の皆さん、1人目に発表したチャリティーパーソナリティーは芦田愛菜さんにお願いし、テーマも『明日のために、今日つながろう。』という“未来志向”のメッセージを掲げました」
その要素はもちろん、各企画を選定する際にも重視。オープニングは、なにわ男子全員が参加する「車いすの少年となにわ男子が挑むウォーターショー」からスタートし、藤原丈一郎の「難病に立ち向かう25歳の女子大学生 声を失う前に届けたいメッセージ」、長尾謙杜の「骨肉腫になった少年 仲間と決めた奇跡のゴール」、小泉孝太郎の「心臓病と闘う“翔平ちゃん”と大谷翔平 二人の翔平がつないだ命のバトン」、有働由美子の「5年ぶりに会いたいウガンダの少女」、YOSHIKIの「防空壕で歌う少女 YOSHIKIと届ける平和への願い」など、子どもたちにスポットを当てた企画が数多くラインナップされている。
吉無田氏は、従来支援してきた福祉を中心とした分野にプラスして、今年は「子どもの未来」「環境」といったものを大切にしていくとコメントしているが、これは近年よく耳にし、テレビ各局も企業として重視する「SDGs」の理念にもつながる。そこに、「ただ“SDGs”とだけ言うと少し硬い感じがあるので、なるべく日常の中に落とし込んでいく企画や入り口にすることを考えました」と、多くの人に分かりやすく伝えるテレビというメディアの役割を意識した。
■パーソナリティー発表が『news zero』だった理由
今年の姿勢を象徴する1つの事例が、なにわ男子と芦田愛菜のパーソナリティー就任を、ニュース番組『news zero』で発表したことだ。これまでは、ゴールデンタイムのバラエティ番組で華々しく発表するのが通例だったが、平日深夜23時台という場を選んだのは、なぜか。
「これまでは、92年から脈々と続いていた“お祭り的”な部分を大事にしていたところがあって、実際にそれが視聴者の皆さんが『24時間テレビ』に求めていたものとリンクしているところもあったと思うのですが、この3年間でチャリティー番組というのを根本から考え直す中で、この第3ステージは“地に足がついた”ところにより重きを置いていかないと、視聴者の皆さんとの温度感に差が出てくるのではないかと思っているんです。今年は特に“視聴者との温度感のレベル合わせ”というのを大事にしているのですが、その分かりやすい例が、あの発表だったと思います」
発表が行われた4月17日の『news zero』では、なにわ男子の西畑大吾が、地域の子どもたちに安心できる温かい居場所を提供する東京・荒川区の「子ども村ホッとステーション」を取材する模様が放送されており、「ニュース番組が日々扱っているものの地続きの中でチャリティー番組があるべきだと。そして、後に有働さんにもチャリティーパーソナリティーをやっていただくということも見据えて、絶対に『news zero』で発表したいと思いました」と、その狙いを明かした。