藤井聡太王位に佐々木大地七段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、第5局が8月22日(火)・23日(水)に徳島県徳島市の「渭水苑」で行われました。対局の結果、横歩取りのねじり合いを95手で制した藤井王位が防衛に成功。4連覇を達成しました。
横歩取りの力勝負
3連勝からの1敗で迎えた本局、先手となった藤井王位は佐々木七段の注文に乗って横歩取り青野流の作戦を採用。2筋に歩を垂らされたところは手が広い局面ですが、藤井王位は短考で右金を上がる受けを選びました。少数派ともいえるこの受けの一手ののち、藤井王位は積極的な攻めを披露します。後手の飛車頭に歩を叩いたのがその第一歩。
藤井王位の研究手を前に、盤上は1日目の午前にして前例のない局面を迎えています。後手の飛車先を押さえた藤井王位は首尾よく8筋に飛車を回って左辺の制空権を掌握しました。一方的に攻めて好調のようですが、後手の佐々木七段も一歩を持ち駒に残していることを主張点としつつ双方不満ない持久戦の攻防が続きます。
明暗分かれた自陣角
佐々木七段の記した封じ手が立会人の中村修九段によって開封されて戦いは2日目へ。佐々木七段が1筋に放った遠見の角で先手玉のコビンを狙えば、先手の藤井王位も負けじと盤上中央の自陣角を打って8筋突破を目指します。我が道を行く攻め合いの結果、藤井王位はこの角を失う代償として後手玉近くの急所にと金を作ることに成功しました。
受けてばかりいてもキリがないと見た佐々木七段は先に打った角を銀と刺し違えて攻め合いを目指しますが、藤井王位は丁寧な受けを基調に徐々にペースをつかみます。玉の早逃げで自玉を安全にしておいてから遊び駒の左桂を成り捨てたのが決め手。手順に飛車筋が通ったことで、眠っていた飛車で質駒の金を取る手が生じています。
終局時刻は18時39分、この飛車切りによって自玉が受けなしになっているのを認めた佐々木七段が投了。これで藤井王位はスコアを4勝1敗として王位4連覇を達成しました。勝った藤井王位は「自分に足りない部分が明確になり勉強になった」、敗れた佐々木七段は「初めての2日制で序盤から濃密な長考もできた。さらに精進したい」とシリーズを総括しました。
水留 啓(将棋情報局)
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