外国船でのクルーズ旅といえば、「豪華な非日常の楽しみ」といったイメージかもしれませんが、通常の外国船とは違った仕様で「日本人にとって過ごしやすい工夫」を施された客船もあります。
今回は、海外旅行に近い非日常体験と過ごしやすいサービスの数々、その両方を味わえる「ダイヤモンド・プリンセス」の魅力を実際に味わってきました。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」とは?
ダイヤモンド・プリンセスは、世界三大クルーズ会社の一つである「プリンセス・クルーズ」が所有し、「南国リゾート 沖縄・台湾クルーズ」や「日本・韓国 4つの世界遺産の地巡り」といった日本と海外を一緒に楽しむプランを提供。
日本発着の外国客船としては、乗船客数最多を誇ります。客室はスイートから内側まで5種類あり、好みや人数に合わせて選ぶことができます。
利用客の約半数は外国人ですし、レストランのウェイターや客室係など、船内で働いているスタッフもほとんど外国人ということもあり、船内滞在中は海外旅行で味わえる非日常感と近いものを味わえます。
とはいえ、ダイヤモンド・プリンセスは日本人が多く利用するということから、外国客船ではありながらも日本人が船上で快適さを感じられるような意外なサービスも提供されています。
船内で堪能できるさまざまな和食
まず、驚きだったのは、船内で提供されている食事についてです。クルーズ代金にはコース料理を楽しめる「メイン・ダイニング」やビュッフェレストラン「ホライゾンコート」での食事が含まれていますが、そのメニューの中には予想していた以上に日本食が多く含まれていました。
ビュッフェでは、ご飯やお味噌汁、納豆など、定番の和食のラインナップがそろっていました。他にも、メンマやゆで卵を自分でトッピングできるラーメンコーナーや、寄港地の関西に合わせたたこ焼きなどの名物料理が提供されるというサービスも見られました。
さらに「メイン・ダイニング」は朝食会場でもあり、毎日和定食の提供が行われています。焼き魚と卵料理に副菜とお漬物という形ですが、内容をアレンジすることも可能となっていて、朝は和食を外せないという方でも、十分に満足した朝食をとることができますよ。
なお、提供されている和食は種類が多いだけではなく、日本の飲食店で普段食べているものと遜色ないくらいおいしく、日本の味が恋しくなることもありませんでした。
少し特別感を味わいたい場合には、「スペシャリティ・レストラン」の利用がおすすめ。
今回筆者は日程の都合上縁がありませんでしたが、本格的なイタリア料理が楽しめる「サバティーニ・イタリアン・トラットリア」(カバーチャージ35米ドル/1名)や、日本酒や焼酎など各地のお酒も用意されている寿司レストラン「海(Kai)寿司」(料金はメニューによる)では、本格的な握り寿司を楽しめますよ。
アフタヌーンティーのサービスも見逃せません。ミニハンバーガーやサンドイッチなどの食事メニューに加えて、特においしかったのは船内で焼き上げているスコーン。焼きたてで温かく、外はカリッとしつつも中は香ばしくてふんわりしているという食感は、病みつきになるほどで、いくつも食べてしまいました。
ジャムやクリームを付けて食べるスタイルも本場イギリスのもの。甘いお菓子の中には、ケーキだけではなく、どら焼きなどの和菓子も用意されているので、紅茶と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
展望浴場「泉の湯」で極上の癒やし体験を
食の面だけではありません。ダイヤモンド・プリンセスならではの設備の一つが大浴場です。海側バルコニー以下の部屋にはシャワーブースが付いていますが、展望浴場「泉の湯」(有料:25米ドル/90分)では、屋内の大浴場と屋外のスパプールや足湯などを利用できます。
泉の湯の営業時間は6~22時となっており、利用する時間が決まっている場合には、事前に予約しておくことも可能となっていますが、貸し切り利用になるわけではない点にはご注意ください。
どこにも寄港しておらず一日中船が動いている終日航海日の日中は混雑が予想されます。
スパプールや足湯がある屋外のエリアは男女混浴で水着着用が必須ですが、屋内の大浴場は水着を着ても着ていなくても利用が可能となっています。
航海中であれば、オーシャンビューであることはもちろんのこと、タイミングによっては日の出や夕焼けを見ながらの贅沢な入浴を楽しむことができますよ。
実際に航海中の昼頃に利用したところ、遠くに水平線が見えているだけという大浴場での体験は、船上ならでは豪華な癒やしの時間となりました。
室内浴場には洗い場はもちろん、打たせ湯やサウナも設置されています。銭湯などと変わらないほどの設備があるので、なかなか機会のない海上での「整う」体験ができたのも、このサービスがあったからこそ。
ドライサウナとミストサウナの二種類があり、屋外のスパプールの周りには自由に使える屋根付きソファが並んでいるので、最高の外気浴も味わえました。
不慣れな船内での滞在中は、なくし物などのトラブルやさまざまな不明点が出てくることも珍しくありません。そんな時に助けになるのが「ゲストサービス・デスク」です。
ここには基本的に日本語を話せるスタッフが常駐し、日本語でのやりとりもできるようになっているので、英語に自信がないという方でも気軽に問い合わせすることができます。
エンターテイメントプログラムも充実
エンターテイメントの面での魅力に関しては、エンターテイメント部門を担当するディレクターの池元美紀子さんにお話を伺いました。
「さまざまなプログラムがあるダイヤモンド・プリンセスですが、その中でもぜひ一度は見ていただきたいのは、プリンセス・シアターで行われるショーですね」。
「ラスベガススタイルのダンスショーやピアノコンサート、マジックショーなどを日替わりで公演しており、日本発着クルーズでは落語や日本在住のミュージシャンによる演奏も予定しています。特にプリンセスオリジナルのプロダクションショーでは、キャストの演技や歌声の魅力はもちろん、プロジェクションマッピングを活用した演出が各場面の臨場感を増しているので、そんな点にも注目してほしいと思います」。
乗客に人気なのは、ダンス系のプログラム
「乗客のみなさんご自身が参加されてスタッフと一緒に楽しめるプログラムも多く用意しています。特に人気があるのは、ダンス系のプログラム。『クラブ・フュージョン』ではバンドの生演奏、『スカイウォーカーズ・ナイトクラブ』ではDJの音楽と、クラブとして楽しめる場所もありますし、社交ダンス教室なども多くの方に参加していただいています。他にも、朝のプールサイドでは講師と一緒に汗を流すズンバなどのエクササイズも人気で、朝から晩までさまざまなダンスのプログラムがあるので、好みのものを選んで参加いただきたいですね」と語ってくれました。
その他にも、スタッフの方々をより身近に感じられるようなものもあったことがとても印象的でした。
例えば「料理の実演と厨房見学ツアー」では、レストランの総支配人と総料理長を交えての会話をメインに進められるため、料理についてだけではなく、総料理長はすでに40年近くダイヤモンド・プリンセスで働いていることや、休暇中はバイクに乗る趣味を持っていることなど、MCとのやりとりを通じてその人柄も知ることができました。
また、月に一度ほどは、整備士や医療班などのチーム対抗での「乗務員の綱引き大会」といったユニークなプログラムもあります。
船上に滞在していても、サービススタッフの方以外と接するタイミングは基本的にないのがクルーズ旅ですが、ダイヤモンド・プリンセスでは、こういった形で船の裏方のスタッフの方々の姿を見ることができるのです。
「メダリオン」によって船内の滞在はより便利に
ダイヤモンド・プリンセスでは、船内での滞在がより便利になる「メダリオン」というメダル型端末と専用アプリを使ったサービスも提供されています。端末を身に着けていれば客室のドアの開錠は近づいただけできますし、アプリでは当日のスケジュールなどの情報をいつでも確認できます。
位置情報と連動しているので、食事やドリンクをアプリから注文をすれば、現在自分がいる場所まで運んでもらうことができます。プールサイドや自分の部屋など、好きな場所で注文をするだけなので、わざわざレストランやバーまで行く必要がなくなります。※一部プランにより有料
また、これまでには広い船内で同行者と合流しづらいといった問題も発生していましたが、予め設定しておけば位置情報を共有することもできるので、より簡単に待ち合わせができるようになっています。
無制限高速Wi-Fi「メダリオン・ネット」(有料)の導入によって、船内のネット環境も改善されました。
これまでは海上では弱い電波しか使えず、メッセージのやりとりだけでも時間がかかっていましたが、「メダリオン・ネット」を利用することによって現在では航海中にオンライン会議を行うことも可能に。そのため、船上でのワーケーションという形での利用もストレスなくできるようになりました。
実際に乗る前までは、撮影した写真のアップロードなどができるかが心配でしたが、クラウドへのデータのバックアップ保存やリアルタイムでのSNS投稿も全く問題なく進めることができました。
初めてのクルーズ船での取材ということもあり、最初は敷居の高さを感じていましたが、乗ってみるとフレンドリーなスタッフの方々のおもてなしや、日本人に合わせた多くのサービスのおかげで、とても居心地が良い滞在となりました。
海外の非日常感を楽しめることはもちろんですが、英語でのやりとりは少しだけで済むので、海外旅行に行ったことがない方にもおすすめです。海外旅行と快適な滞在を手軽に満喫できるダイヤモンド・プリンセスでのクルーズ旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。