NTT東日本-北海道、北海道電力、北海道銀行、パーソル ホールディングスの異業種4社が、昨年10月に開設した「北海道 地域応援プラットフォーム」は、今年6月1日より「HOP(Hokkaido Open Platform)」としてリニューアルされました。
さらに今秋、札幌で開催される「NoMaps2023」との連携も発表。これまでにない協働型のプラットフォームと、産官学で行う大型イベントのコラボには、一体どのような狙いがあるのでしょうか。
北海道のビジネスシーンの盛り上げ役に
オンライン上で「仕事の悩みごと」に関するコミュニケーションの場を提供するプラットフォーム「HOP」。NTT東日本-北海道、北海道電力、北海道銀行、パーソルホールディングスの4社が協働で運営するビジネスコミュニティです。
ブラウザやスマホアプリから誰でも無料で参加できるため、多様な出会いの場、交流の場として期待と注目を集めているようです。
そのHOPが新たに打ち出したのが、NoMaps実行委員会との連携でした。
NoMapsとは、北海道を舞台にアイデアや技術によって次の社会・未来を創ろうとする人たちのためのベースキャンプ。2016年のプレイベントを経て2017年からスタートし、民間企業・官公庁・大学などが連携する「ALL HOKKAIDO体制」で運営されています。
例年は10月に開催されていましたが、7回目となる今年は初めての9月開催。9月13日から17日の5日間、札幌市内の中心部の各所でカンファレンス、展示、イベント、交流、社会実験など、さまざまな催しが実施されるのです。
「ジャンルを問わず、セミナーやトークセッションなど様式も問わず、新しい何かを仕掛けるというベクトルならなんでもあり。いろんなものをかき集めたフェスティバルです」と説明してくれたのは、NoMaps事務局長の廣瀨岳史さん。プロジェクトの企画からスケジュール管理、マネジメント、コーディネートまで一手に引き受けています。
今回実現したHOPとNoMapsの連携については、こう話します。
「NoMapsは基本的に年に1度のお祭り的な事業で『点』に過ぎませんが、本来はその点を活かして、年中、経済が活性化するような環境をつくるのが理想です。これまで会期以外でも人と人をつなぐような取り組みをしてきましたが、通年で交流できるコミュニティがあれば……と考えていました。つまり、NoMaps実行委員会にとっては人のネットワークがあってもツールがない状況で、一方、HOPさんはツールができたのに参加者がまだ足りない状況。お互い持っていないものを補い合えるのではと、すぐに合意形成に至りました」
まずはNoMapsの実行委員や関係者をHOPに誘導。NoMaps2023のコンテンツが固まって参加者を募集し始めてからは、申込者にHOPへの参加を働きかけ、NoMaps参加イコールHOPにも参加という流れをつくるようにしていると言います。
「コミュニティにNoMaps2023の予告を案内したり、イベントに登壇していただいたゲストを交えて後日、振り返りのトークイベントを企画したり、継続的な展開ができたらいいなと思っています」と廣瀨さん。
特別な行事であるハレ(NoMaps)と、日々の日常であるケ(HOP)を組み合わせたビジネスコミュニティの活性化を思い描いているようです。
お互いの持つリソースを組み合わせて
HOP運営側である、NTT東日本-北海道の河井潤さんも思いは同じです。
「HOPは匿名のSNSではなく、名前と所属を明らかにして参加していただくビジネス版のソーシャルコミュニケーションツールです。我々はNoMapsさんのように花火を打ち上げるのは不得手ですが、地道なサポートならお任せください。チャートルームで事業課題について相談したり、トークスレッドでディスカッションしたりと、日常的にご活用いただけます」
現在HOPの参加者は400名ほど。必要に応じてトークスレッドや分科会のようなグループをつくりながら、やりとりしているそうです。実際に成果も上がっていて、例えばクライアントにセキュリティ対策を要求されたアプリ制作会社がHOPで相談し、専門技術者とつながった事例もあったと明かします。
「地域課題を解決するコラボが生まれれば素晴らしいですけど、もっとシンプルに、こんなことやったら楽しそう、面白そうという動機でもいいと思うんです。一人のアイデアをみんなでサポートして実現させてしまう、NoMapsはそういう場でありたい」と廣瀨さん。
HOPについても企業経営者や投資家に限らず、フリーランスや学生、地域おこし協力隊などをどんどん輪の中に招き、情報交換を加速させたいと考えているそうです。
新しいことがどんどん生まれる北海道に
「スタートアップ」という言葉がまだ一般的でない頃から積極的に関連セッションを行い、北海道におけるスタートアップ育成の地盤づくりに貢献したというNoMaps。
それ以外にも、早くから宇宙産業の可能性に着目し、毎年セッションを設けるなどして、大樹町を中心に進む北海道スペースポートにつながるムーブメントへの寄与や、小中学生にプログラミングの楽しさと価値を伝える「ジュニアプログラミングワールド」も、NoMapsから派生して大きく発展したのです。
今回HOPとの連携により、どのような化学反応が生まれるのは未知数ですが、期待せずにはいられません。
「まず半年はトライ&エラーを重ね、知見を得た上で2024年に向けて整理するような感じで進めたい」と廣瀨さん。
HOP運営側の河井さんも「相談したい、つながりたいというニーズは札幌だけではなく道内各地にあると思うので、HOPが新たな挑戦や課題の解決に役立てるよう、きめ細かくサポートするのが我々のミッション」と、意気込みます。
二人の理想は「新しいことがどんどん生まれる北海道」「知らないうちに何かが動いているHOP」です。
さて、今回のコラボの核となるNoMaps2023の開催は、もう目の前に迫っています。事務局長の廣瀨さんが今年の見どころを次のように紹介してくれました。
「今年からコンテンツを、ソーシャル、ビズ、スポーツ、ウエルネスなどのカテゴリーで分類。それぞれの興味関心に応じて集まれるようになっています。さらに、それらのカテゴリーを全部ひっくるめたミートアップも仕掛ける予定です」
なるほど、興味のある分野をきっかけに深く突っ込んでいくスタイル、楽しみです。
「今年の会期はさっぽろオータムフェストやさっぽろレインボープライドとも重なります。NoMapsでは駅前通りの歩行者天国でスポーツイベントを予定していますが、南1条のスクランブル交差点にステージを設置。レインボープライドのパレードの参加者や、オータムフェストから流れるファミリー層が混じり合うカオスになりそうです」
多様な人を包摂するダイバーシティ&インクルーシブな社会を可視化するNoMaps2023の新しい試み。がぜん面白くなりそうです。