Intelは8月21日~25日に掛けて、マレーシアにあるIntelのKM1~3及びPG8/15などの工場見学を見学するIntel TECHtour.MYを実施した。筆者は前半の8/21~23に参加したので、その内容をちょっとご紹介したい。
そもそもマレーシアではIntelは1972年から操業を開始しており、今年で51年目になる。基本はアセンブリ&テストということで、いわゆる後工程を担う形だ(Photo01)。拠点としてはペナンキャンパスとクリムキャンパスの2か所で、ペナンキャンパスは名前の通りペナン島に、クリムキャンパスは本土のほうに拠点がある(Photo02)。2つのキャンパスは直線距離で36Kmほど離れている。正確に言えばペナンキャンパスの方は2か所に分散しており、この間は4Km弱離れている格好だ。2021年にIntelは70億ドルの追加投資を行って拠点拡充を行っており、FalconおよびPelicanという新しい製造拠点がペナンとクリムの両キャンパスで現在建設中である(Photo02)。ちなみに70億ドルがFalconとPelicanの建設だけか? というのは後で気が付いた質問であり、現在問い合わせ中である。ちなみにGoogle Mapなどで衛星写真を見て頂くとわかるが、周囲にはほかのメーカーが割と密集しており、それもあってFalcon/Pelicanともに頑張って広げました、という感じである(Photo03)。
ところでIntelの後工程拠点は複数存在するのだが、なぜ今回マレーシアか? というと、ちょっとマレーシアが特殊なポジションにあるからだ。Photo04が同社の製造拠点一覧であるが、水色がWafer Fab、つまりウェハを製造する前工程である。そしてオレンジがいわゆる後工程であり、グリーンがAdvanced Packagingである。このAdvanced Packagingとは何か? というと、Foverosの実装である。IntelのPackagingに関する話は以前こちらで説明しているが、この図でいうところのFoveros以降が、このPhoto04でいうところのAdvanced Packagingに相当する。そしてAdvanced Packagingと後工程の両方に対応しているのは、そもそもFoverosの技術を開発したOregonのD1(ここは技術開発がメインで生産量は極めて少ない)とマレーシアのみである。そんなこともあり、このFoverosをメインに使ったPonte Vecchioとか、まもなく登場するMeteor Lakeはマレーシアが生産の中核になっている格好だ。多分このあたりを勘案して、Advanced Packagingと後工程の両方を一度に紹介できるという事でマレーシアが選ばれたのだと思う。
実際の製造工程の詳細はまた後日改めて説明するというか、基本的には後工程のやることはどこでも同じであり
- ダイシング(Die Preparation):ウェハをカットしてダイにする
- Die Sort:カットしたダイに対して最初のテストを行い、不良品を弾いて良品のみをトレイに格納する
- Assembly:良品ダイをパッケージに実装し、チップ抵抗などを実装した後でヒートスプレッダを装着する
- Test:完成した製品に対して様々なテストを行う
という流れであり、これはIntelでも変わりはない。この辺はどこのOSATでも提供されるサービスである。今回はこの一連のラインでMeteor Lakeが流れていることが大きなポイント(Photo05)であり、実際に完成した製品も多数示された(Photo06)。
で、今回はこのツアーの際に行ったQ&A Sessionからちょっとだけ気になる話題をご紹介したい。それはIntel 4の立ち上がり状況である。すでにIntel 4は昨年に技術開発が終わって量産体制に入っており、ただし"Ramping Production Today"という微妙な表現である。んじゃその"Ramping"というのはどういう状況にあるのか? をいろいろ確認した結果
- 現在Intel 4の量産はOregonのD1でのみ行われている。これはD1C/D1D/D1Xのすべてを含んでおり、トータルで月に4万枚が製造されている。ただしこれはすべてのノードのMixでの合計であり、Intel 4だけで4万枚というわけではない
- IrelandのFab 34は現在テストチップを流している状態
- SiFiveと共同で製造予定のHorse CreekはIntelから見ればテストチップ扱いではあるのだが、こちらが年内に量産に入れるかどうかは即答されなかった(持ち帰りで後日回答)
- Intel 4のEnhanced VersionがIntel 3なわけだが、これとは別にIntel 4+的なもの(Alder LakeのIntel 7に対するRaptor LakeのIntel 7+に相当するもの)があるかを確認したが無いとの事
- Intel 4がマスクにペリクル(保護膜)を使っているかどうかは回答できないとの事 といった回答が返ってきた。
実のところMeteor Lakeの構成は
- Intel 4で製造のCPU Tile
- TSMC N5で製造のGPU Tile
- TSMC N6で製造のIO Tile(PCIe)とSoC Tile(PCH)
- Intel 22nmで製造のBase Tile
の5つからなる。Base Tileの上に4つのTileがFoverosで載る形だ。Photo06でいえば左上がCPU Tile、その下にIO Tileがおかれ、中央の巨大なのがSoC Tile、右がGPU Tileとなる。正確な寸法測定は行っていないが、CPU Tileのサイズは100平方mmを切ると思われ、300mmのウェハからは600~700個程度のダイが取れる計算になる。
ただしIntel 4のYieldがどの程度か? は現時点では不明である。仮に50%だとすれば300~350個程度は取れる計算になるが、そこまでとれるかどうかはかなり怪しい。またD1からどの程度のIntel 4のウェハが生産されているかも不明だが、仮に1割程度だとすると月に4000枚。そこから300個取れるとすれば、月あたり120万個のMeteor Lakeが生産できることになるわけで、この仮定が正しければ確かに量産開始として差し支えない数量になるわけだが、実際どこまで行くかはちょっと謎である。もしTSMCとかSamsungの当初のEUVのYield(10%台)だとすると生産量は24万個/月。またIntel 4の量産が月産1000枚程度だとすると、6万個/月程度に落ちることになる。実のところ現状EUV露光機が設置されているのはD1Xのみの筈なので、Intel 4の製造はD1Xで行われている、というのが正確なところであり、どの程度のウェハ生産量があるのかは想像がつかないが、1ラインだと1000枚/月は厳しい様に思われるし、4000枚/月はかなり無理がある。
このあたりは明確な数字がないので、いずれ始まるであろうMeteor Lakeの出荷動向から判断するしかないのだが、過去のMobile向けのIce Lakeの様に「量産は始まったけれど、出荷量はごく少数」という事例があるだけに、あまり楽観的にみるのも危険かと思う。
ただ一応Meteor Lakeの量産のためのテストラインまで完全に稼働しているのは今回確認できたのは大きな収穫だったといえる。ついでに余談であるが、テスト工程で使うためのテスターの製造テストライン(これも当然Intel内製である)に、明らかにLGA-4710と思しきテスターが置かれ、実際に(テスターそのものの)テストが実施されているのも確認できた。来年にはSierra ForestとGranite Rapidsが投入される予定だから、当然テスターがあってしかるべきであり、そうした準備が行われているのも確認できたのは収穫だったといえる。