サントリーは8月22日、ビール事業マーケティング説明会を開催した。2023年1-7月の実績について、登壇したサントリーの多田寅氏は「各ブランドにおいて、市場を上回る実績で着地しています。特にビールカテゴリーが大きく伸長しました」と報告。主力商品の今後の展開についても解説した。

  • サントリーがビール事業マーケティング説明会を開催。写真は、サントリー ビールカンパニー マーケティング本部長の多田寅氏

■主力ビールが絶好調の上半期

サントリーによれば、主力の「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドが前年比111%と大きく伸長した。コロナ禍が落ち着いたことに加え、発売から20年という節目を迎えて中味・デザイン・コミュニケーションを刷新した効果があったと分析する。また、食事との相性の良さを訴求した「パーフェクトサントリービール」も前年を上回る実績を記録。そして競合他社では新ジャンルカテゴリが軒並み苦戦を強いられるなか、サントリーの主力商品である「金麦」ブランドは101%と好調に推移した。これに加え、2023年4月に発売した「サントリー生ビール」が3か月で200万ケースを突破するヒット商品となり、業績の押し上げに貢献した。

  • 2023年1-7月のビールカテゴリーの実績。2023年2月にリニューアルした「ザ・プレミアム・モルツ」などが好調だった

  • ザ・プレミアム・モルツ、サントリー生ビール、パーフェクトサントリービールの商品イメージ

ザ・プレミアム・モルツについて、多田氏は「リニューアルをきっかけに『自分へのご褒美になりそう』『幸せな気分になれそう』というイメージが広がりました。リニューアル前後の8週間の推移を見ても、新規購入のお客様が大きく増えたことが分かります」と報告する。実際、リニューアル後の「プレモル」は前年比171%増、「香るエール」は同166%増と大きな購買変化が確認できる。

  • さらなる新規層の獲得を狙うプレモルでは、2023年7月から新たなメッセンジャーとして広瀬すずさんを迎えている

  • 夏最盛期の飲用接点拡大に向けて、東京・名古屋・新大阪の東海道新幹線のホーム内には売店を設置。期間は7月10日から8月31日まで

また、サントリー生ビールについては「20~40代の方々にご愛顧いただいているのが特徴です。通常のビールユーザーと比較しても若年層の構成比が高く、ビールカテゴリーの間口拡大に寄与しています」と胸を張る。購入者からは「ビールのコクもしっかりあって、後味もスッキリしている」「のど越しが良い。とても飲みやすい」と高評価を得ているとのこと。これを受け、同社ではサントリー生ビールの販売計画を300万ケースから400万ケースに上方修正した。

  • サントリー生ビールの購入者には20~40代の若年層が多い

  • シンプルで洗練されたデザインも好評だという。2023年の販売計画は400万ケースに設定

そして、パーフェクトサントリービール(PSB)については「力強い飲みごたえ+糖質ゼロによる爽快な後味、という独自価値を訴求しました。食事との相性の良さを伝えるキーメッセージ『うまいものにはうまいビールでしょ』とともに、食事中も美味しいビールを気兼ねなくゴクゴク飲んでもらおう、ということで展開しております」と紹介。

購入者からは「お好み焼きとPSBの組み合わせは絶対に美味しい」「糖質ゼロで罪悪感も薄まりそう」といった声が寄せられているという。なお、新商品『パーフェクトサントリービール〈黒〉』も10月3日より全国で販売を開始する。こちらは数量限定となる。

  • パーフェクトサントリービール。今秋より、パーフェクトサントリービール〈黒〉も限定発売する

  • 料飲店限定のパーフェクトサントリービール樽詰も好調。取扱店数は7月末時点で4,500店舗となっている

■下半期のビール事業販売計画は?

2023年10月には2度目の酒税法改正が実施され、ビールの酒税がさらに引き下げられる。これを受け、同社では「ビール市場は2023年も伸長が見込まれる」と期待を寄せる。多田氏は「このタイミングで、特にビールカテゴリーに徹底的に注力していきます。各ブランドの世界観、認知拡大のためにコミュニケーション施策やキャンペーンを打っていく。お客様のニーズを捉えたトライアルを実施し、また業務用の飲用接点を強化することで家庭用の需要拡大にもつなげます」と意気込む。

  • 2020年10月の1度目の酒税法改正以降、ビール市場(缶)は好調に推移してきた

ザ・プレミアム・モルツについては10月17日よりデザイン缶・限定品を発売。店頭を華やかにし、ビール市場の活性化を図っていく。

  • 金色の”ごほうび感”が増したプレモルのデザイン缶(中)、爽やかな世界観をコラージュで表現した香るエールのデザイン缶(左)と、冬限定のジャパニーズエールの限定品(右)

PSBについては、既述の通り、パーフェクトサントリービール〈黒〉を発売。同社では「黒ビールで糖質ゼロを実現した国内で初めての商品」と説明する。容量は350ml / 500mlで、大瓶換算8万ケースの限定販売となる。

また来春には、業務用に「サントリー生ビール」(瓶・樽)を発売する。これは2023年の春夏シーズンに、空港、全国のビアガーデン、音楽フェス、各種イベントにおいて「サントリー生ビール」樽生のテストマーケティングをした結果、好評だったことを受けて実施するもの。

  • 10月以降のコミュニケーション施策。ビールカテゴリーに徹底注力し、市場の拡大・新規顧客の獲得を目指していく

2023年のビール事業販売計画については「狭義のビールについては前年比1.3倍を目指します。ザ・プレミアム・モルツについては同107%、PSBについては同114%、サントリー生ビールについては上方修正をした400万ケースを狙っていきます」と説明している。

  • 2023年のビール事業販売計画について

■金麦はどうなる?

質疑応答の時間がもうけられ、多田氏がメディアからの質問に回答した。

酒税法改正については「(狭義の)ビールにとっては追い風です。ビール減税、新ジャンル増税となるので、お客様の嗜好はビールに向いていくのではないか」と解説する。そこで気になるのが、新ジャンルにおける主力商品である金麦の売れ行き。多田氏は「増税した分だけ、店頭価格に転嫁されて商品棚に並ぶのではないか」と懸念する。

  • メディアの質問に回答する多田氏

そのうえで「金麦がお客様にご支持いただいているイチバンのポイントは、毎日飲むに相応しいブランドだと感じてもらえているから。そこでこれからも、店頭でのプレゼンスを落とすことなく広告をしっかりと継続・強化していきたい。いつまでもお客様のニーズを満たせるよう、長く愛していただけるようなマーケティングをしていきます」と説明した。なお今後、新ジャンルカテゴリ全体でもブランドの淘汰が進んでいき、より強いブランドへの集約が加速するのでは、との見方も示している。

プレゼンのなかで、パーフェクトサントリービール〈黒〉については「開発が難しく、醸造家泣かせだった」と説明していた多田氏。これについて詳しい説明を求められると「ビール好きの方にお聞きすると、黒ビール=飲みごたえがある、という回答が返ってきます。一方で、糖質ゼロはすっきりとした味わいが特徴です。そこで、すっきりしているけれど飲みごたえもある、このバランスをどこに置くか、という苦労がありました。実際には、麦芽やホップの配合の比率、醸造における条件を試行錯誤することで解決しました」と説明した。