アドビは8月21日、共同創業者であるジョン ワーノック氏が8月19日(米国時間)に死去したと発表した。82歳だった。
ワーノック氏は1982年、Xerox社での元同僚であるチャールズ ゲシキ博士と共同でアドビを創設。製品の第一弾は「Adobe PostScript」だった。2000年に最高経営責任者(CEO)を退任後、2017年までの期間、ゲシキ氏と共同で取締役会会長を務め、その後も取締役会に在籍していた。
ワーノック氏はその技術的功績として、バラク オバマ元大統領(当時)より「アメリカ国家技術賞」が授与されたほか、IEEEコンピュータソサエティの「Computer Entrepreneur Award」、米国電子工業会の「Medal of Achievement」、情報科学と通信などへの貢献が認められ「マルコーニ賞」が贈られている。
アドビ会長兼CEOのシャンタヌ ナラヤン氏は、ジョン ワーノック氏の死去を伝える以下のメッセージを、全従業員に送付した。
アドビの共同創業者として深く愛されたジョン ワーノック博士が、82歳でこの世を去ったことを、深い悲しみとともにお伝えしなければなりません。
ジョンの才覚と技術革新は、世界を一変しました。この数十年間、彼がインスピレーションを与えてきたアドビのコミュニティと業界全体にとっても、悲しい1日となりました。
ジョンとチャック ゲシキ博士が1982年に設立したアドビは、PostScriptによってデスクトップパブリッシングに革命を起こしました。彼のビジョンと情熱により、アドビはIllustrator、ユビキタスなPDFファイル形式やAcrobat、Photoshop、Premiere Proなどの画期的なイノベーションの提供が可能となり、デスクトップ時代を定義して、何百万もの人々のクリエイティビティと機会を解き放ちました。
私たちの世代を代表する発明家として、ジョンは広く認められた存在であり、言葉、画像、動画によるコミュニケーションのあり方に多大な影響を及ぼしてきました。2008年には、科学者、エンジニア、発明家を対象とする米国最高峰の栄誉「アメリカ国家技術賞」をバラク オバマ元大統領より授与されたほか、IEEEコンピュータソサエティの「Computer Entrepreneur Award」、米国電子工業会の「Medal of Achievement」、そして、情報科学と通信への貢献が認められ、大きな栄誉であるマルコーニ賞を受賞しました。2000年にCEOを退任したジョンは、2017年までの間、チャックと共同で取締役会会長を務めたほか、その後も取締役会に在籍し続けました。
彼のイノベーションが及ぼした影響は計り知れませんが、強いバリューを備えた企業を構築するという、その不屈の精神、情熱、そして信念は、アドビで働くという幸運に恵まれた私たち全員に影響を及ぼしました。お客様に喜びを与えるテクノロジーや、ビジネスバリューを創造するテクノロジーに関するジョンの見識には驚愕するばかりでした。グラフィックアーティストのマーヴァ夫人とともに、彼はアドビ製品を常に使用しており、お客様の共感を得るための基準を示してくれました。
この25年間でジョンと過ごした日々は、私のプロフェッショナルキャリアの中でも鮮明な記憶として残っています。ジョンやチャックとの朝食では、未来に思いを馳せることもありましたが、希少な書籍や芸術、世界史、政治など、幅広いトピックの会話は、真のルネサンスマン(博学者)としてのジョン独自の見識に富んでいました(ウォリアーズの試合を一緒に応援するのも楽しみでした)。彼は私のロールモデルであり、メンターでもありましたが、彼を友人の1人と呼べることは、私にとって最高の喜びです。
私たちの人生に大きな空白を残すであろう今回の喪失を振り返るなかで、私は2カ月ほど前にAcrobatの30周年記念イベントでジョンに会った日のことを思い出します。AcrobatとPDFがコミュニケーションの世界に与えた影響を祝福した後、私たちは、次世代のクリエイティブテクノロジーを変革するFireflyの可能性を話し合いました。彼は目を輝かせ、進捗状況への驚きの言葉を述べつつも、いつものように、さらなる改良に向けたフィードバックを提供してくれました。
私の思いは、マーヴァ夫人やご家族とともにあります。その素晴らしいレガシーを継承することこそが、彼の最大の願いであったに違いありません。ですから、この先も彼にとっての誇りであり続けましょう。
シャンタヌ