「原文ママ」は本やニュースサイト、Web記事や論文などで、時折目にする言葉です。カタカナが使われていて違和感のある言葉ですが、一体どんな言葉なのでしょう。

本記事では「原文ママ」の詳しい意味や、「原文まま」ではなくカタカナである理由を解説。使用シーンや正しい使い方を具体例と共に紹介し、さらに類語や対義語、英語もまとめています。

  • 原文ママとは

    「原文ママ」の意味や使い方、使用する理由などを紹介します

「原文ママ」の意味とは? ビジネス用語なの?

「原文ママ」とは、「本人が書いたを原文をそのまま記載しています、引用しています」という意味を持つ言葉です。

ビジネス用語と言うよりは編集用語の一つで、校正記号です。

引用した文章の中に誤字脱字や言葉の使い方の間違いなどがあっても、「原文のまま載せている」ということを示す目的で使います。

「ママ」はなぜカタカナ? 「原文まま」ではだめなの?

なぜ「原文ママ」の「ママ」はカタカナなのでしょうか。これは、編集用語(校正記号)のルールが関わってきます。

編集用語(校正記号)では、カタカナの使用が一般的です。

例えば文字を削除した際にも、削除後にできたスペースを詰める場合は「トルツメ」、空けたままにしておきたい場合は「トルママ(トルアキ)」とカタカナで記載します。

なぜカタカナで書くのが一般的かと言うと、校正をする対象である文章というのは、漢字とひらがなで書かれていることが多いからです。この記事を読んでいてもわかるように、カタカナというのは日本語の文章の中で比較的登場頻度が低いです。

そのため「原文ママ」とカタカナを使うことで、元の文章との区別がつきやすいようにしている、というわけです。

「原文ママ」を使う理由は著作者人格権の関係

  • 「原文ママ」を使う理由は著作者人格権の関係

さて、なぜ引用元の文章が明らかに間違っている場合でも、修正せずに「原文ママ」と記載してそのまま載せるのでしょうか。

その理由には、著作者人格権が関係します。

著作者は自分の著作物に対して著作者人格権を持っており、その中に同一性保持権というものがあります。これは著作者の同意無しに、他者に内容や題号を勝手に改変されない、という権利です。

そのため、原文が間違っているからと言って勝手に修正すると、この同一性保持権を侵害する恐れがあります。よって、誤りを含めてそのまま引用し、「原文ママ」と記載するのです。

「原文ママ」の正しい使い方を例文とともに解説

  • 「原文ママ」の正しい使い方

ここからは、「原文ママ」の正しい使い方を例文を交えつつ紹介します。

引用文に誤りがある場合に入れる

引用文に誤字や、言葉の使い方に誤りがある場合、その誤った箇所を含めてそのまま表記します。そして「(原文ママ)」と付け加えます。

例えば原文が「彼は全人未到の記録をたたき出した」だとしましょう。「全人」は誤字で、正しくは「彼は前人未到の記録をたたき出した」であるはずですが、修正をしてはいけません。

この文章を使いたければ、引用文の原文をそのまま引用して「彼は全人未到の記録をたたき出した(原文ママ)」と表記しましょう。これにより、同一性保持権に抵触せずに、誤字について注釈が入れられます。

引用文に誤りがない場合に入れることも

引用文に明確な誤りが見受けられなくても、「原文ママ」を使うケースがあります。

例えば、内容の正当性について確証がない場合が当てはまるでしょう。通常文章には正当性が求められますが、自分で書いた文章でなければ、正当性を確かめられない可能性もあります。

「原文ママ」と記載することで、内容の正当性に関する責任は引用元にあると表現できるでしょう。

引用文に不適切な表現がある場合にも

また、引用する文章が書かれた時代には問題無かった表現方法でも、時代と共に不適切だと見なされるようになることもあります。そのような場合にも、「原文ママ」を使う場合があります。

「原文ママ」の類語

  • 「原文ママ」の類義語

ここでは、「原文ママ」の類語を紹介します。

ママ

誤字脱字などがあった場合に、「原文ママ」を短縮して「ママ」と記すことも多いです。

意味を伝えつつ、短く表記できます。場所が限られているときにおすすめの表記です。

イキ

「原文ママ」に似た表現に「イキ」があります。「イキ」も編集用語(校正記号)の一つです。これは「原文を生かす」という意味を持ちます。

「イキ」を使う場面は、文章の校正を行うときです。原文に対して一度赤字を入れて修正を指示した後に、その赤字を取り消して原文に戻す際に使われます。

「イキ」は「原文を生かす」「原文をそのままにする」という意味では「原文ママ」と似ていますが、引用文に使う記号ではありませんので注意しましょう。

「原文ママ」の対義語は「原文パパ」?

  • 原文パパとは

「原文ママ」に、対義語はあるのでしょうか。

よく目にするのが「原文パパ」です。「原文ママ」の「ママ(母の意味)」から、「パパ(父の意味)」を反対の言葉として連想しているようです。しかし「原文パパ」という言葉は実際には存在しません。

「原文パパ」は単なる言葉遊びであるため、「原文ママ」には対義語は存在しないと言えるでしょう。

「原文ママ」の英語表現

  • 「原文ママ」の英語表現

「原文ママ」の英語表現として、「sic」が挙げられます。「sic」は元々ラテン語で「sic erat scriptum(このように書かれていた)」の略語です。

該当の箇所の後ろに「[sic]」と入れることで、「原文ママ」と同じ意味合いで使用することができます。

「原文ママ」の意味を覚えておこう

「原文ママ」は編集用語の一つで、原文のまま引用している、という意味を持ちます。

「原文ママ」の意味を覚えておけば、混乱せずに文章を読み進められるでしょう。