来年2024年から、いよいよ「新NISA」が始まります。最近では、若い世代にも投資が浸透しつつありますので、「新NISAをやってみよう」と考えている20代の方も多いでしょう。これから長い時間をかけて投資ができる20代ですが、では、20代の方は新NISAをどう活用するのがいいのでしょうか。

この記事では、20代が新NISAを運用するメリットやおすすめの活用方法のほか、注意点を解説しています。20代から新NISAを始めた場合の資産額のシミュレーションもありますので、積立額を決める際などの参考にしてください。

  • 20代が「新NISA」を始めたら将来いくらになる?

■新NISAはどんな仕組み?

NISAとは、NISA口座内で株式や投資信託を購入すると、そこから得られる利益が非課税になるという制度です。NISAには、いわゆる「一般NISA」のほか、「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3つの種類があります。

それぞれのNISAが年間に購入できる金額と非課税で保有できる期間は、以下の通りです。

・一般NISA…株式や投資信託等を年間120万円まで、最大5年間

・つみたてNISA…一定の投資信託を年間40万円まで、最大20年間

・ジュニアNISA…株式や投資信託等を年間80万円まで、最大5年間

そして、2024年1月からは、現行のNISAからバージョンアップした「新NISA」がスタート。新NISAには、5つの大きな特徴があります。

1つめは、現行のつみたてNISAにあたる「つみたて投資枠」と現行の一般NISAにあたる「成長投資枠」の2つが創設されること。この2つは併用できるため、投資できる商品の幅は大きく広がります。

2つめは、年間投資枠が拡大し、つみたて投資枠は年間120万円まで、成長投資枠は年間240万円まで非課税で投資できる点です。これらを合計すると、年間投資枠は360万円になります。

3つめは、1,800万円の「生涯投資上限額」が設定される点です。さらに、NISA口座内で購入した金融商品を途中で売却すると、その分の枠が復活して再利用できるようになります。

4つめは、制度が恒久化し、いつでも始められるようになること。そして5つめは、非課税保有期間が無期限化し、これまでのNISAで必要だった「ロールオーバー」のような煩雑な手続きが必要なくなる点です。

なお、現行NISAの新規口座開設は2023年までとなりますが、2024年以降も新NISAと併用することができます。

■20代が新NISAを運用するメリットとおすすめの活用方法

20代で新NISAを始める一番のメリットは、長い時間をかけて運用することで、「複利効果」の大きな恩恵が受けられる点でしょう。複利効果とは、運用で得た利益を再投資することで、利益が利益を生み、雪だるま式にお金が増えていくことです。

複利効果で得られる利益は運用年数が長いほど大きくなりますので、若いうちから新NISAを始められる20代はとても有利なのです。

また、20代は「リスク許容度」が高く、ややリスクのある商品にも投資しやすいメリットがあります。リスク許容度とは、投資において「どの程度のリスクを許容できるか、どの程度の損失なら耐えられるか」を表すものです。

20代はライフイベントが比較的少なく、この先働ける期間も長いため、投資で損失が出たとしても挽回するチャンスが多く残っています。その分、他の年代と比べて積極的な運用がしやすく、リターンも期待できるのです。

では、20代が新NISAを活用して資産形成を始めるなら、どのように運用するのがいいのでしょうか。20代の方は、まずは「つみたて投資枠」を活用し、少額から投資信託を購入していくのがおすすめです。

新NISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つが新設されますが、このうちつみたて投資枠では、「長期・積立・分散投資」に適した一定の投資信託が積立方式で購入できます。いっぽう成長投資枠では、株式や投資信託等(一部除外商品あり)が積立または一括で購入できます。

20代の今から積立を始めれば、長期投資ができ複利効果が大きくなりますし、20代のうちはまだそれほど収入が高くないため、まずは少額から積み立てるスタイルが向いているのです。

なお、20代はこれから長い期間をかけて投資しますので、比較的リスクを高くしてリターンを期待できるよう、たとえば、世界各国の株式に分散投資できる投資信託を購入するといいでしょう。

ちなみに、セゾン投信によると、20代でつみたてNISAを利用している人の毎月の平均買付額は、22,900円となっています。もちろん、無理して同じ金額を積み立てる必要はありませんが、このデータを参考に、できる範囲で積立を始めてみてはいかがでしょうか。

■20代が新NISAを使うときの注意点

新NISAは長い年月をかけて資産を形成していく仕組みですので、特に、20代に適している制度です。だからこそ、新NISAが始まったら、できるだけ早めに運用をスタートさせましょう。

20代から投資を始めると時間が味方してくれることで、30代や40代になってから始めるよりも利益を増やせる可能性が高くなります。

もちろん、投資は生活を圧迫しない範囲で行うのが大前提ですので、自分が毎月無理なく出せる金額はいくらなのか確かめておきましょう。

また、1,800万円の「生涯投資上限額」の使い方にも注意が必要です。中には、生涯投資上限額について、「途中で一部を売却すれば枠を再利用できるのだから、できるだけ早めに使い切ったほうがお得なのでは」と考える人もいるかもしれません。

つみたて投資枠と成長投資枠を合わせると、年間360万円の非課税枠が使えますので、できるだけ早く生涯投資上限額を使い切ろうとすると、最短5年で可能です。

しかし、この5年間に、他の期間と比べて割安に株式や投資信託が購入できるとは限りません。将来のことはわからない以上、やはり定期的に一定額をコツコツと積み立てる長期的な投資スタイルがおすすめです。

そもそも、20代の方が年間360万円もの金額を投資に充てることは現実的ではありませんが、非課税枠を急いで使おうとする必要はないのです。

新NISAには現行のNISAから改良された点がいくつもありますが、投資において心がけるべき基本に変化はないことを忘れないようにしましょう。

■20代から新NISAを始めるといくらになる?

では、20代の方が今から新NISAを始めると、将来どのくらいの資産額になるのでしょうか。ここでは、25歳から65歳までの40年間、年利3%で(1)毎月1万円積み立てた場合、(2)毎月3万円積み立てた場合の2パターンのシミュレーション結果をご紹介します。

  • 40年間年利3%で積み立てた場合のシミュレーション

(1)25歳から65歳までの40年間、年利3%で毎月1万円積み立てた場合

40年間で積み立てた投資元本は「1万円×12カ月×40年間」で合計480万円、40年後の積立資産額は917万1,899円という結果になりました。ただ現金を寝かせておくだけでなく、長い時間をかけて「お金に働いてもらう」ことで、投資元本より430万円以上も増えることがわかります。

毎月1万円でも、長い時間をかけてコツコツ積み立てていけば、65歳のときには大きな金額になっている可能性があるのです。

(2)25歳から65歳までの40年間、年利3%で毎月3万円積み立てた場合

40年間で積み立てた投資元本は「3万円×12カ月×40年間」で合計1,440万円、40年後の積立資産額は2,751万5,698円という結果になりました。こちらも、40年という歳月をかけて、投資元本の倍近くにお金が増えています。

仮に運用がシミュレーション通りにいけば、20代から毎月コツコツ3万円を積み立てていくと、60代の自分に2,700万円ものお金を準備してあげられます。今から新NISAで資産形成に着手すれば、ゆとりある老後も目指せるでしょう。

ちなみに、ここでは40年間一定額を積み立てた場合のシミュレーション結果をご紹介しましたが、まずは月1万円程度から始め、年齢を重ねて収入が上がったタイミングで無理のない範囲で増額していく方法もおすすめです。

なお、ご紹介した金額はあくまでもシミュレーションであり、実際の運用では、必ずしも同じ結果が得られるわけではない点にご注意ください。

■新NISAを始めて投資を経験しよう

長い時間をかけて資産形成していく新NISAは、若い世代の人に積極的に活用していただきたい制度です。「投資できる時間が長い」という20代のメリットを生かすため、少額でも早いうちからコツコツ積み立てましょう。それに、若いときに投資を経験しておくと、将来いざ本格的に取り組もうとしたとき大いに役立ちますよ。