「諸々」とは、ビジネス文書でよく見られる言葉ですが、使い方によっては失礼になるので注意が必要です。

本記事では「諸々」の詳しい意味や場面別の例文、敬語を紹介します。類語や対義語もまとめました。

  • 諸々とは

    「諸々」の意味や使い方と例文、言い換え表現などについて解説します

諸々とは? 意味と読み方を解説

「諸々」とは、「多くのもの、全てのもの」「さまざまなもの」「多くの人」などという意味を表します。

元々「諸」という漢字には「多くの、全ての」といった意味があり、「々」を用いて同じ意味を重ねています。

物や事情が複数あるとき、その説明を省略したり濁したりしたい場合に便利な言葉です。

「多く」「たくさん」「さまざま」などといった表現よりも硬めの印象を与える言葉であり、日常における会話よりも文章やビジネスシーンなどで多く使われる傾向にあります。

「諸々」は「もろもろ」と読みます。「しょしょ」と読むことは誤りのため、注意しましょう。

「諸々」の場面ごとの正しい使い方・例文

「諸々」という言葉は、日常生活や、ビジネスシーン問わず、

  • お礼
  • 連絡
  • 相談
  • 承認
  • 依頼

などの文章の中でよく使われます。例文を参考に、使い方のイメージを捉えましょう。

「お菓子やお洋服など、諸々のものをいただきましてありがとうございます」(お礼)

こちらの例文では「諸々のもの=複数の品、さまざまな品」ということを示しています。

このように「諸々」は、複数の内容が含まれていて、個々の説明を省略して全部をひっくるめて指し示したい場合に便利です。

「諸々の手続きが発生しましたが、本日、全て無事に完了しました」(連絡)

こちらの例文では「諸々の手続き=1つではなく、多くの手続きがあったこと」を示しています。

このように「諸々」は、物事の種類や数量、手順などの内容について明言せず、曖昧に説明するときに使用できます。

「新商品ですが、諸々の事情により発売を延期する運びとなりました」(連絡)

こちらの例文では「諸々の事情=さまざまな事情」ということを示しています。

このように、内容をはっきりと伝えたくない状況でも使用することができます。

「A社の案件について諸々のご相談をさせていただきたいのですが、15分ほどお時間を頂けないでしょうか」(相談)

こちらの例文では「諸々のご相談=さまざまな相談事」ということを示しています。

親しい上司であれば、あらかじめわざわざ相談事項を列挙せずとも、スピード優先でざっくりと「諸々」でまとめてしまってもいいでしょう。

ただしこのとき、単に「諸々のご相談」とすると、何のことだか全くわからず相手も戸惑ってしまうため、「A社の案件について」と付け加えることで、ある程度の内容を予想できるようにしている点がポイントです。

「ご相談いただいた件について、諸々承知いたしました」(承認)

こちらの例文では「諸々承知=複数のことについて承知した」ということを示しています。

相手から先にもらったメールなどに複数の内容が含まれていて、個々の説明を省略して全部をひっくるめて指し示したい場合の用法です。

「先んじて、諸々の準備をお願いいたします」(依頼)

こちらの例文では「諸々の準備=さまざまなことの準備」ということを示しています。

「諸々」の内容について、前のやり取りで双方の認識合わせができている場合は、このように詳細を述べずにひっくるめて依頼することができます。

しかし相手の取りこぼしや、認識のずれがないか不安な場合は、面倒でも再度、「諸々」の全ての内容について、箇条書きなどで明示すると安心でしょう。

「諸々」の注意点 - 目上の人に使うと失礼?

  • 「諸々」を使用しない方がいい場面とは

「諸々」は内容をはっきりと説明しない、あいまいな表現のため、便利な反面、相手や状況によっては不適切な場合があります。

「諸々」の敬語表現とは? 目上の人に使える?

「諸々」自体は敬語ではありません。そのためビジネスの場では、前後に敬語を付けて使いましょう。

「この度は諸々の事柄についてお気遣いいただき、ありがとうございます」といった具合です。

ただし「諸々」は手短に説明したいときには便利な表現ですが、説明すべき部分の具体性を欠いてしまう、丁寧さに欠けるという側面もあります。

「説明するのを面倒くさがっているな」「適当に済まそうとしているな」などと思われてしまう可能性があるため、特に目上の人に使用するのは避けた方がいいでしょう。

特に謝罪などで使用するといい加減な印象に

謝罪の場において「諸々すみません」「諸々申し訳ございません」などと、内容やその経緯をまとめて謝罪してしまうのは、あまり好ましい表現ではありません。

謝罪の場では、具体的に何について「申し訳ない」「反省すべきだ」と思っているのか、なぜそのような事態になったのか、再発防止のためにはどのようにするべきなのかなどを、相手に伝える必要があります。

そのため複数のことを一言でまとめてしまう「諸々」は、誠意が伝わりづらく、謝罪には適していないと言えるでしょう。「本当に理解しているの?」と、相手に疑念や不快感を与えてしまう可能性があります。

謝罪の際は、「○○によって○○になってしまい、申し訳ございません」などと、具体的に説明することが大切です。

「諸々」の類語・言い換え表現

  • 「諸々」の類義語

ここでは「諸々」の言い換え表現とその例文を紹介します。

さまざま(様々)

「さまざま」は漢字では「様々」と書き、「種類が1つではなくいくつかあり、それぞれ違っていること」を指すときによく使われる言葉です。

「諸々」は文章内で使う際に「諸々の」使うことが多いのに対して、こちらは「さまざまな」と表現することが多いです。 例文は以下の通りです。

  • 今の私があるのは、ここに至るまでのさまざまな経験のおかげです。

いろいろ(色々)

「いろいろ」は漢字だと「色々」と書き、「種類が1つではなくたくさんある」という意味の言葉です。

「諸々」はビジネスや書き言葉で使われることが多く、フォーマルな印象です。「いろいろ」は日常の会話や親しい人へ使われることが多く、カジュアルなニュアンスを表します。

例文は以下の通りです。

  • 必要な物が不足していたため、いろいろな備品を注文した。

種々

「種々」は「しゅじゅ」と読みます。「しゅしゅ」「くさぐさ」とも読みますが、「たねだね」とは読みません。

「多くの種類があること」を意味します。

例文は以下の通りです。

  • 今朝、業務に必要な種々の品を注文しておきました。
  • 先に生じていた問題ですが、種々の方法を試した結果、解決いたしました。

多彩

「多彩」は「たさい」と読み、「色の種類が多い、カラフル」という意味から転じて、「種類が多く変化に富む」という意味でも使われます。

「たくさんの」「種類が多い」というニュアンスは「諸々」と共通していますが、こちらには「にぎやか」というニュアンスが含まれることを意識して使いましょう。

例文は以下の通りです。

  • 今回の新商品の特徴は、色や模様に多彩なラインナップがそろっていることです。
  • 多彩な人材がチームにそろっていたおかげで、短期間で大きな成果を出すことができました。

多種多様

「多種多様」は「たしゅたよう」と読み、「種類が多くてさまざまだ」ということを指す四字熟語です。

例文は以下の通りです。

  • あの店には、顧客のニーズに合わせた多種多様な商品が並んでいる。
  • 新発売のゲームには、前シリーズから引き続き、多種多様なキャラクターが登場します。

諸般

「諸般」は「しょはん」と読み、「いろいろな事柄」を指します。

「諸般の事情により」などの形で使用されることが多く、硬いニュアンスがあるため、文書や改まった場で使われることも多いです。

例文は以下の通りです。

  • 誠に残念ながら、諸般の事情により、明日の催しは中止となりました。
  • 本件は諸般の事情を考慮し、今回に限り特別措置といたします。

「諸々」の対義語

  • 「諸々」の反対語

「諸々」の対義語として使われる言葉としては、「一様(いちよう)」や「一律(いちりつ)」が代表的です。

どちらも「全てが同様であること」を指し、「さまざまなものがある」というニュアンスを含む「諸々」とは逆の意味を表します。

「たくさんあり、種類が多様であること」を指す「諸々」とは異なり、見かけ上複数のものが存在していても、その内容が同じである場合に使いましょう。

「諸々」という言葉をビジネスシーンで適切に活用しよう

「諸々」は物や事情が複数あるとき、その説明を省略したり濁したりしたい場合に使い勝手のいい言葉です。

一方で、事情や内容に関する説明を省いてしまうため、目上の人が相手の場合や、詳細を説明して謝罪するべき際には、できるだけ使わないように心掛けましょう。

また、類語や言い換え表現も頭に入れておくと、同じ言葉の多用を避けて読みやすい文章を作れます。