Intelは8月18日、同社のARC Graphics Q3'23 Updateを公開し、Intel Arc GPUの性能を大幅に性能を向上させたことを発表した。

Intel Arc A770/A750は昨年10月に市場投入され、また今年4月にはDirectX 9対応の性能を大幅に引き上げるDriver Updateを行った。性能がどこまで向上したかは記事をご覧頂きたいが、端的に言えばIntel Arc A770でもまだGeForce RTX 3060にちょい追いつかない程度でしかない。とはいえ今年4月のUpdateでそれなりに性能が向上した事もまた事実である。

今回はこの4月のUpdateに続くものである。4月はDirectX 9が性能向上の主眼であったが、今回はDirectX 11の性能向上を実現したとしている(Photo01)。

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    Photo01: 2番目のGPU Busy Metricは単にDirectX 11以外にも貢献しそうな話ではある。

具体的な性能改善のデータがこちら(Photo02)。Version 31.0.101.3490との相対性能がこちら(Photo03)。またDirectX 9でも性能が向上しているとする(Photo04)。

ちなみに性能向上率で言えば、Core i9-13900Kを使った場合よりも、Core i5-13400Fを使った方が大きいとされる(Photo05)。

  • Photo02: 性能比較は昨年のリリース時のVersion 31.0.101.3490との比較で、今年4月の31.0.101.4255とでは無い事に注意。

  • Photo03: 微妙にPhoto02とゲームが異なっているのがちょっと判り難い。今回ベンチマークデータはArc A750LEでの結果のみとなっている。

  • Photo04: こちらは平均フレームレートではなく、99%性能をPickupしている。

  • Photo05: 一般的にこれはゲームの状況がGPU BottleneckではなくCPU Bottleneckになっている状況が多い結果として素の状況ではCore i9-13900Kの方がCPU Bottleneckの時間が短い、と考えられる。

そもそもどうして性能が上がったのかに加え、Photo05の状況が何で生まれるかの理由の一つになるのが、Photo02で2番目に出て来たGPU Busy Metricである。要するに従来のドライバだと、GPUが遊んでいる期間が長く(Photo06)、これが理由で性能が十分に上がりきらなかった。新ドライバではGPUが常にフル駆動になっており(Photo07)、これが性能向上に貢献しているというものである。要するに従来はCPU Bottleneckになっている時間が結構多く、その間GPUは遊んでいるために性能そのものは高くてもそれがゲームのフレームレートに反映されなかった。この辺りを改善したことで、GPUがフル駆動に近い状況まで稼働する様になり、相対的にCPU Bottleneckの状況が解消しているという訳だ。CPU Bottleneckは当然CPU性能の低いCore i5-13400Fの方が深刻で、逆に言えばCPU Bottleneckが解消されると大幅に性能が向上するから、Photo05の様に伸びが大きくなるという訳だ。

  • Photo06: 青がゲーム全体でのフレームタイム、黄色がGPUのフレームタイムである。枠で囲ったところは、青と黄色の乖離が激しいのが判る。

  • Photo07: こちらではほぼゲーム全体でのフレームタイムとGPUのフレームタイムが一致しており、CPU Bottleneckが殆ど見られない(枠の部分を比較するとこれが明確である)のが判る。

Photo08・09はCounter-Strike 2での比較だが、Quality-LowだとGPUの負荷が低いから相対的にCPU Bottleneckになるのはまぁ当然の事である。ただしUltra-QualityになるとGPUの負荷がグンと増える事になる。この場合CPUがBottle-neckになる率は大きく下がる訳で、実際そういう結果になっているのが見て取れる。

  • Photo08: このグラフそのものは概ね理解できるのだが、452.08秒ちょいすぎで、なんでゲーム全体のフレームタイムがGPUのフレームタイムを下回ってるのかが理解できない(データのサンプリングの仕方のせいかもしれないが)。

  • Photo09: こちらも同じく。そもそもやけにフレームタイムが滑らかに推移している辺りは、傾向としては正しくても正確な数字が取れていない(から、GPUのフレームタイムをゲームのフレームタイムが下回るケースが出る)のかもしれない。

こうしたDriverの改良に加え、新たにPresentMonというフレームレートなどの表示ツールも新たに追加された(Photo10,11)。

  • Photo10: 正直言って「やっとか」という感じではある。ログファイルを記録する機能も当然搭載。

  • Photo11: 動作状況。AMDやNVIDIAにこの分野でも追いついた感じだ。

全体としてみれば、やっとAMDやNVIDIAに肩を並べるところまで来たか? という感じである。特にGPU Busyに関しては、これまでこれが実現出来てなかったというのは、それは性能が低く出ても仕方がないなという感じである。ただ気になるのは今回DirectX 12について言及がない辺りだろうか。

これについては「現状はDirectX 11のゲームを多数確認するのに精一杯で、DirectX 12まで手が回っていない」との事。つまり(恐らくは性能向上があるのだろうが)それを確認出来ていない、という話でこのあたりは試してみないと何とも言えない。

またArc A370でのテスト結果も示されていない訳で、何かしらの追試は必要だとは思うのだが、とりあえず性能底上げにつながるUpdateであったことは喜ばしいと思う。