第82期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)B級1組は、4回戦計4局の対局が東西の将棋会館で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた三浦弘行九段―増田康宏七段戦は77手で増田七段が勝利。全勝対決を制して無傷の開幕4連勝を飾りました。
横歩取りの力勝負
両者の初手合いとなった本局、先手の増田七段は迷わず横歩取りの出だしを志向します。後手の三浦九段に駒組みの工夫がありながらも局面は定跡形に合流。2筋を盛り上がっていこうとする三浦九段に対し、増田七段は角交換から2筋への歩打ちで銀取りをかけてとがめに行きます。素直に応じるとこの拠点に角を打ち込む攻めが生じるため三浦九段にも工夫が求められます。
追われた飛車を盤上中央に逃がした三浦九段に対し、手番を握った増田七段は端攻めを起点としてさらに攻勢を強めます。銀による飛車取りにも構わず1筋の香を取ったのが決断良い踏み込みで、ここから形勢の針は徐々に先手に触れ始めました。三浦九段としては自玉近くに控える先手のと金と拠点の歩が怖い存在として残ります。
増田七段が全勝対決制す
後手の三浦九段は真面目に受けていてもキリがないと見て盤上右方を明け渡す方針を採りますが、ここから先手の増田七段の丁寧な攻めが盤上を支配することに。5筋に打った銀と香の協力で敵角を捕獲しておきつつ、2筋で遊んでいたと金を活用したのが「と金の遅早」の格言通りの好手でした。先手の中住まいには予想外に攻めの取っ掛かりがありません。
終局時刻は21時29分、迫りくる三浦九段の反撃をいなしつつ的確な手順で後手玉を寄せきった増田七段が快勝で開幕4連勝を飾りました。敗れた三浦九段は2勝1敗になっています。増田七段-糸谷哲郎八段戦、三浦九段-近藤誠也七段戦を含む次回5回戦は9月7日(木)に予定されています。
水留 啓(将棋情報局)