「一環として」はよく見聞きする言葉ですが、「一貫」「一巻」など漢字の間違いも多いです。

本記事では「一環として」の詳しい意味や使い方と例文を紹介。「一貫」「一巻」などの同音異義語との違い、類語や敬語表現もまとめました。

  • 一環としてとは

    「一環として」の意味や使い方と例文、言い換え表現などを紹介します

「一環として」の意味と読み方とは

「一環として」は、「~の一環として」という形で使用され、「~の中の一つとして」という意味を持ちます。

そもそも「一環」には二つの意味があり、一つは「鎖など、つながっているものの一つの輪」という意味です。「環」は「輪」を意味しています。

もう一つの意味は、「全体を構成する物事の内の一部分」という意味です。「一環として」は、こちらの意味で使われています。

「一環として」は「いっかんとして」と読みます。

「一環」は「~の一環で」「~の一環をなす」「~の一環にすぎない」などの形で使われることもあります。

「一環」と「一貫」の違いとは

「一環」と同じ読み方で意味を間違われやすい言葉に、「一貫(いっかん)」があります。

「貫」は、文字通り「貫く(つらぬく)こと、やり通すこと」を意味します。「一貫」は、「どのようなことがあろうとも目的に向かう姿勢や方針を変えず、始めから終わりまでつらぬき通すこと」を表す言葉です。

「彼は一貫して無罪を主張している」といった形で使用します。

「一環」は「全体を構成する物事の内の一部分」という意味の言葉なので、全く違う意味の言葉です。

ビジネスでの「一環として」の正しい使い方・例文

  • ビジネスでの「一環として」の正しい使い方・例文

ここからは、「一環として」の正しい使い方や例文を紹介します。

「一環として」は、ある大きな物事の内、一部分にフォーカスするニュアンスで使用されます。例えば「熱中症対策の一環として」という表現は、「数ある熱中症対策の内の一つ」を抜き出すという意味を持ちます。

「一環」を使用する際は、一般的に知られている事柄を対象にしましょう。なぜなら、よく知られていない事柄の一部分、として「一環として」を使用しても、意味が相手に伝わらないためです。

「一環として」は、日常だけでなく、ビジネスシーンでも活用可能です。以下に「一環として」を用いた例文を紹介しますので、より具体的なイメージを捉えましょう。

  • 管理職研修の一環として、本日はハラスメント防止についてのディスカッションを行っていただきます。

本日行うディスカッションが、管理職研修における内容の一つであると分かる例文です。

管理職研修における内容には、例えば経営者視点での考え方や、部下に対するモチベーション管理、目標設定とその管理方法、企業方針の伝え方やストレスマネジメントなど、さまざまなものがあるでしょう。

その中でも、今回はハラスメント防止にまつわるディスカッションを行うのだ、ということを述べています。単に「ハラスメント防止についてのディスカッションを行う」と言われるよりも、どういった枠組みの中で、どういう位置づけのことをするのか、ということが明確になります。

また、ハラスメント防止についてのディスカッション以外にも、さまざまな観点の研修があるのだ、ということが読み取れます。

  • 選挙時に掲げた政策の一環として、まずは公共事業の見直しを行う

公共行事の見直しが、掲げた政策における取り組みの一つであることを表す例文です。他にも複数の取り組みがある中、公共事業の見直しにフォーカスして述べたいときに使えます。

  • 地域活性化プロジェクトの一環として、イベントを開く予定だ

開催を予定しているイベントが、地域活性化プロジェクトにおける取り組みの一つであると分かる例文です。

地域活性化プロジェクトで取り組む内容がいくつかあって、その中のイベントに関して述べたいときに使用できます。

「一環として」を使うときの注意点

「一環として」を使う際は、前述の「一貫として」をはじめとする同音異義語と間違えないようにしましょう。意味の確認が欠かせません。

いずれの漢字を使用するか迷ったときは、漢字が持つ意味を思い出してみましょう。漢字が持つ意味を理解すれば、どの「いっかん」を選択すればいいかが判断できます。

「一環の終わり」ではなく「一巻の終わり」

また「いっかん」と読む言葉を用いたフレーズで、「一環」と間違えやすいものがあります。それは「いっかんの終わり」です。

「一環の終わり」と書くことは誤りで、正しくは「一巻の終わり」です。「一巻からなるストーリーが終わること」に基づき、「物事が終結すること、手遅れであること」を意味する慣用句です。

「一環として」の類語・言い換え表現

  • 「一環として」の類義語

ここからは、「一環として」の類語・言い換え表現を紹介します。

~の一つとして

「~の一つとして」は、「全体の内の一部分」を表す言葉で、「~の一環として」と同義です。

前述の例文の「選挙時に掲げた政策の一環として、まずは公共事業の見直しを行う」を言い換えると「選挙時に掲げた政策の一つとして、まずは公共事業の見直しを行う」になります。言い換えても、意味が変わらないことがわかります。

~の一部分として・~の一部として

「~の一部分として」「~の一部として」は、「全体の内のある部分」を意味する言い回しです。

「選挙時に掲げた政策の一環として、まずは公共事業の見直しを行う」を言い換えると、「選挙時に掲げた政策の一部(分)として、まずは公共事業の見直しを行う」になり、意味は変わりません。

一連の~の中で

「一連(いちれん)」は、「関係のある物事の一つながり」を意味します。「一連の~の中で」とすることで、「関係のある物事の一まとまりの中で」ということを表します。

「選挙時に掲げた政策の一環として、まずは公共事業の見直しを行う」を言い換えると、「選挙時に掲げた一連の政策の中で、まずは公共事業の見直しを行う」になります。

敬語として丁寧なのは「一環といたしまして」

「一環として」を丁寧に表現したい場合は、「一環といたしまして」と表現するのがおすすめです。目上の相手や顧客など、敬語を使用したい相手には「一環といたしまして」と表現すると、丁寧な印象を与えられるでしょう。

「一環として」の意味を覚えておこう

「~の一環として」は、「~の中の一つとして」を意味し、「ある物事の内の一部分」に関してフォーカスして述べたいときに使用します。「~の一つとして」「~の一部として」などに言い換えられます。

また、「一環」は同音異義語がいくつかあり、どの漢字を使用するか迷いやすい言葉でもあります。「一貫」や「一巻」などと混同しないよう、「一環」の意味や漢字をしっかりと覚えておきましょう。