商品やサービス価格の値上げは、お客様と企業の、双方にとって大きな問題です。値上げに伴って離れていってしまうお客様もいるかもしれません。しかし上手にお伝えすることで、お客様の流出を最小限にとどめられるでしょう。

本記事では値上げのお知らせにまつわる注意点や具体的な文例、記載すべき情報、媒体ごとの特徴などを紹介します。

  • 値上げのお知らせ(価格改定のお知らせ)の書き方とは

    値上げのお知らせについて、書き方のポイント、例文などを紹介します

値上げのお知らせ(価格改定のお知らせ)にまつわる注意点・前提

商品やサービスの価格を、やむを得ず値上げすることがあります。値上げをしなければ商売が立ち行かなくなってしまう一方で、案内の仕方を失敗すると、お客様が離れていってしまう原因にもなり得ます。

それゆえにお客様へ値上げを公表するのは非常に神経を使い、気の進まない作業ですね。ここではまず、値上げのお知らせをしなければならない理由や、前提を押さえておきましょう。

商品やサービスを値上げすること自体は避けられない

昨今、原材料費や輸送費用、人件費の上昇などが原因となり、値上げに踏み切る企業、事業者が増えています。

もちろん、消費者にとって値上げは嫌なものです。しかし値上げが避けられない以上、誠意を持って、低姿勢でお知らせをすることで、消費者の理解を得る必要があります。

お客様への値上げのお知らせは必ず送る

値上げのお知らせは必ず行うことをおすすめします。

前述の通り、商品の値上げをお知らせすることは気の進まない作業です。そのため、価格は据え置いたまま、内容量を縮小させることで実質的な値上げをすることがあります。

最近では、「ステルス値上げ」という言葉の方をよく聞くのではないでしょうか。英語のステルス(「こっそり行う」という意味)に「値上げ」を組み合わせた造語です。

しかしこの方法は、お客様に不信感や反感を抱かせます。インターネットを通じて炎上する恐れもあり、イメージの低下や、お客様が離れていってしまう原因になり得るのです。

こっそり値上げをしても、いずれバレてしまうものなので、事前にきちんと告知した方が納得してもらいやすいでしょう。

値上げは早めのタイミングで発表する

値上げを実施する際、できれば数カ月前、遅くても1カ月前までにはお知らせをすることをおすすめします。

お客様側でも、今後について検討するための時間が必要ですし、関係者への対応にも時間を要します。直前でのお知らせはとても迷惑な行為です。

お客様の準備期間が十分にとれるように考慮し、できるだけ早くお知らせするように心掛けましょう。

値上げのお知らせはどの媒体で発表する?

  • 値上げのお知らせを発表する媒体

価格は取引において最も大切な情報であるため、聞き逃しや聞き間違い、トラブルを防ぐためにも、口頭や電話ではなく文面で伝えます。

値上げのお知らせを誰にするのか、また、費用をどの程度使うのかを考え、発表の方法を決めましょう。この章では、値上げのお知らせに使える主な媒体を紹介します。

手紙・封書

1つ目は、値上げのお知らせについての文書を作成し、郵送する方法です。

郵送は個別に連絡が必要なときによく使われる方法で、受け取った相手に丁寧な印象を与えます。しかし印刷代や紙代、郵送費など、さまざまな費用が掛かる点は考慮すべき点でしょう。

現在、日本郵政の料金は、定形内郵便料金は84円から、定形外郵便料金は120円からと設定されています。お客様が多い場合は、送料だけでも大きな負担となるため、費用対効果を考えてメール出のお知らせも検討しましょう。

メール

お客様に値上げのお知らせを送る際、メールだと費用を抑えられます。同じ文面を一斉送信できる便利さもあるため、多くの企業が利用しています。

しかし一斉送信をする際に、bccにお客様の宛先を手作業で入力する過程でミスが生じやすく、情報漏えいにつながることもあります。

そのため、ミスを防ぐ仕組み造りや、専用ツール、サービスの使用などが必要となります。

ホームページ・SNS

ホームページやSNSを利用した値上げのお知らせは、封書やメールと異なり、不特定多数に向けて一気に情報を伝えられるので便利です。こちらが連絡先を把握できていないお客様にも、値上げを伝えられます。

ただし、もちろん相手がホームページやSNSを見に来てくれなければ、情報は伝わりません。

封書やメールでお得意様にお知らせした上で、より多くの人に知ってもらえるよう、併せてホームページやSNSを使用するといいでしょう。

ポスター・張り紙

店舗の場合は、店頭や店内にポスターや張り紙を掲示することもおすすめです。店によく来てくれる常連さんに情報を伝えることができるからです。

目立つようにイラストを添えたり、文字の色や大きさを考えたりして、分かりやすくなるように工夫しましょう。この場合も、丁寧な文章、真摯な態度を心掛けることが大切です。

値上げのお知らせの文面における書き方のポイント

  • 値上げのお知らせの書き方

お客様に値上げを伝えるときに最も大切なことは、納得していただき、受け入れていただくことです。

値上げの内容を分かりやすく丁寧に表現し、値上げした後も継続してご愛顧いただけるように、伝え方を工夫しましょう。 ここでは、実際の書き方におけるポイントを解説します。

「値上げ」ではなく「価格改定」と表記

「値上げ」とストレートに書いてしまうと、拒否反応を示す方がいます。良くない印象を少しでも和らげるために「価格改定」や「価格変更」という表現を用いて、価格を見直したことが伝わるようにするといいでしょう。

値上げをすることに変わりはなくても、相手の気持ちに寄り添った言葉選びを心掛けることが大切です。

お客様が納得する理由を記載する

値上げの際には、お客様を納得させることが大切です。ただ「諸事情により価格を改定します」と伝えられても、はっきりとした理由が分からないため、お客様は不信感を募らせるでしょう。

原材料価格やエネルギー価格の高騰、品質の維持向上のため、為替レートの影響など、値上げには必ず理由があるはずです。

どのような経緯で値上げすることになったのかを、分かりやすく、丁寧に表現することで、きっと納得してもらえるでしょう。

また景気や物価について知っていれば、文章に深みが生まれます。官公庁のデータやニュースなども参考にしながら、具体的で説得力のある文章を作成しましょう。

企業努力の末の価格改定であることを示す

値上げが自社の横暴によるものではなく、国内外の情勢や状況から、やむを得ないということを示すようにします。業界全体の傾向を示し、同業他社も同じような状況であることを伝えるのもいいでしょう。

自社の費用削減努力を簡潔に示し、価格を上げないために精いっぱいの取り組みをした上での値上げであることや、値上げ幅を最小限にとどめていることを伝えて、理解を求めるようにします。

ただし、企業努力を強調しすぎると言い訳がましく感じられます。お詫びとお願いの姿勢を忘れないようにしましょう。

【業種別】値上げ(価格改定)のお知らせメールの例文

  • 【業種別】値上げ(価格改定)のお知らせの文例

この章では、値上げのお知らせメールの具体的な例文を紹介します。

必ず記載すべき情報

まず値上げのお知らせには、業種を問わず以下の項目を盛り込むようにします。

  • 冒頭の挨拶・名乗り・日頃の利用へのお礼
  • 価格改定のお知らせと、それについてのお詫び
  • 価格改定に至った経緯・理由
  • 今後の方針(価格改定の具体的な日時など)
  • 署名・問い合わせ先

何がいつからどのくらい値上げするのか、分かりやすく整理して伝えましょう。その上で、相手に納得していただけるような理由と、誠実な文章を心掛けましょう。

飲食店

飲食店の場合は、一部のメニューを値上げするのか、全てのメニューを値上げするのかを明記する必要があります。

値上げする商品の種類が多く、メールに書ききれない場合は、添付資料や、値上げする項目を書いたwebページへのリンクを貼ると伝わりやすいでしょう。

以下、例文です。

件名:レストラン○○ 価格改定のお知らせ

本文:
お客様各位(または個人名 様)

拝啓 皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素よりレストラン〇〇に格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

さてこの度、大変心苦しいお知らせではございますが、◯月◯日(◯)より、一部メニューの価格改定をさせていただくこととなりました。

当店では、質の高いお料理をリーズナブルな価格でお召し上がりいただけるよう、かねてより努力を重ねてまいりました。しかしながら、物価高上昇や円安などの要因が重なり、原材料、水道光熱費、家賃などが高騰しているため、現行価格でのご提供が困難となりました。

新価格の詳細につきましては、添付資料、および当店ホームページ(https://〇〇〇〇)をご覧ください。

日頃よりご利用いただいております皆様には、大変ご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご理解いただけますと幸いです。

これからも、皆様に笑顔になっていただける料理を提供し続けていく所存ですので、変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 敬具

(署名・問い合わせ先)

製造業(メーカー)

製造業の場合は、値上げする商品の品目を明記する必要があります。取引先への連絡の場合は、いつの受注分から新価格になるかも記載しましょう。

飲食店同様、詳細を書ききれない場合は、値上げする項目を書いた添付資料や、webページへのリンクなどを貼ると伝わりやすくなります。

以下、例文です。

件名:△△(商品名)の価格改定のお知らせ 株式会社○○

本文:
株式会社◇◇
◆◆様

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素より格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

さてこの度、誠に勝手ながら、お取引いただいております△△(商品名)の価格をやむなく変更する運びとなりました。

報道にあります通り、樹脂および基盤をはじめとする原材料の高騰が続いております。弊社ではかねてより、大量発注などによる費用削減の努力をしてまいりましたが、従来の価格を維持することが困難な状況となりました。

改定後の価格は◯年◯月の受注分から適用させていただきます。品番ごとの単価につきましては、お手数ですが添付資料をご覧ください。

ご迷惑をお掛けし誠に申し訳ございませんが、何卒ご理解いただけますと幸いです。今後とも変わらぬご高配を賜りますよう、お願い申し上げます。 敬具

(署名・問い合わせ先)

美容院

美容院では、施術料と指名料が別の場合は、どちらか片方だけの値上げなのか、両方なのかを明記する必要があります。

指名料と施術料を同時に値上げすると、お客様離れを引き起こしやすくなるため、指名料は据え置く場合が多いようです。

以下、例文です。

件名:サロン○○ 価格改定のお知らせ

本文:
お客様各位(または個人名 様)

拝啓 皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素よりサロン〇〇に格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

さてこの度、大変心苦しいお知らせではございますが、◯月◯日(◯)より施術料金の価格改定をさせていただくこととなりました。

当店では皆様にご満足いただけるよう、スタッフの技術向上と価格維持のため、かねてより努力をしてまいりました。しかしながら、施術に伴う水道光熱費、およびカラー材などの原材料が高騰しており、現行価格でのご提供が困難となりました。

新価格の詳細につきましては、添付資料、および当店ホームページ(https://〇〇〇〇)をご覧ください。なお指名料につきましては、現行価格のまま据え置きといたします。

日頃よりご利用いただいております皆様には、大変ご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご理解いただけますと幸いです。

皆様がより一層美しく輝いていただけるよう、これからもスタッフ一同努力を続けていく所存ですので、変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 敬具

(署名・問い合わせ先)

値上げのお知らせは、誠実な文章を心掛けよう

昨今の国内外の情勢により、商品やサービスを値上げすることは仕方のないことでしょう。しかし値上げによる負担は、お客様の家計に重くのしかかります。

お客様に納得していただき、不信感を持たせないためにも、お知らせメールは真摯に、慎重に作成しましょう。