「埒が明かない」は、日常会話からビジネスシーンまでさまざまな場面で使う言葉ですが、聞いたことはあっても実は意味を知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、「埒が明かない」の意味や語源を解説した上で正しい使い方・例文を紹介します。また、類語・言い換え表現や英語表現なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「埒が明かない」の意味とは?
「埒が明かない」とは、物事の決着がつかない・解決しないという意味です。元々、物事の決着がつくことを意味する「埒が明く」という慣用句が存在し、これを否定形にしたものになります。現在では「埒が明く」よりも「埒が明かない」として使われることの方が多いですが、どちらも正しい表現なのであわせて覚えておきましょう。
なお、読み方は「らちがあかない」です。
「埒が明かない」の語源
そもそも「埒」とは馬場に設けられた柵のことです。その埒を用いた慣用句である「埒が明かない」の語源には2つの説があるとされています。
1つ目は、京都の上賀茂神社で古くから行われている「賀茂競馬」という神事が元になっているという説。馬を走らせて競わせる際に埒をあけなければ始まらないことから、転じて物事の決着がつかないことを「埒が明かない」と表現するようになったというものです。
2つ目は、奈良の春日大社で古くから行われている「春日若宮おん祭」という例祭が元になっているという説。祭で長い祝詞が読まれた後に埒(柵)が取り払われ、ようやく中に入れるようになったことから、転じて物事が進まないことを「埒が明かない」と表現するようになったというものです。
「埒が明かない」の使い方と例文
「埒が明かない」は、物事がうまく進展しないときや解決の目処が立っていないとき、あるいは話が噛み合わないときなどに用いられる言葉です。ここでは、正しい使い方や例文を紹介します。
「埒が開かない」は間違い
「埒が明かない」を「埒が開かない」と書くケースが時々見受けられますが、これは間違いです。「あく」には複数の漢字表記が存在しますが、物事をはっきりさせるという意味で使う場合は通常「明く」を使います。
ビジネスシーンで使っても大丈夫?
「埒が明かない」は、物事が進展しなかったり解決の目途が立っていなかったりする状況を指す表現のため、ビジネスシーンにおいても使える表現です。ただし、マイナスなイメージで捉えられる表現であり当事者に直接伝えることは失礼にあたるので、使い方には注意しましょう。
日常会話やビジネスシーンで使える例文
・文句ばかり言っていても埒が明かない
・悩み続けていても埒が明かないので、気分転換を図ることにした
・担当者では埒が明かなかったので、上長に代わってもらうよう伝えました
・このままでは埒が明かないと判断し、代替案を考えているところです
・以前も同じようなことがあったので、このまま待っていても埒が明かないかもしれません
「埒が明かない」の類語・言い換え表現
ここでは、「埒が明かない」と似たような意味を持つ類語や言い換え表現を紹介します。それぞれのニュアンスを正しく理解して、上手く使い分けましょう。
水掛け論
「水掛け論(みずかけろん)」は、お互いに自分の意見を譲らず、話し合いが進展しないことを意味します。農家が日照りの際に、自分たちの田んぼに水を引き込むために争いあうことから転じて生まれた言葉です。
【例文】
・あの2人は考え方が合わず、いつも水掛け論になる
・先方にも言い分があるようで水掛け論が続いています
堂々巡り
「堂々巡り(どうどうめぐり)」は、同じ思考・行動などをいつまでも繰り返して物事が進まないことを意味します。仏教由来の言葉です。
【例文】
・このまま堂々巡りが続くと、着工に影響が出てしまう
・今回の会議も堂々巡りで終わったようだ
いたちごっこ
「いたちごっこ」は、同じことを繰り返して一向に決着がつかないことを意味します。相手の手の甲をつねって「いたちごっこ、ねずみごっこ」と言いながら、お互いに手を繰り返し重ねる子どもの遊びから転じて生まれた表現です。
【例文】
・規制したとしても、どうせいたちごっこになるだけだ
・この事件は未だにいたちごっこが続いている
袋小路に入る
「袋小路に入る(ふくろこうじにはいる)」は、物事が行き詰まり、先に進まないことを意味します。「袋小路」とは袋のように出入り口がひとつしかない、行き止まりで幅の狭い道路のことで、これが転じて生まれた表現です。
【例文】
・度重なるシステムエラーにより袋小路に陥っている
・早めに対処法を考えておかなければ袋小路になってしまう
「埒が明かない」の英語表現
「埒が明かない」を英語で表現したい場合は、どうにもならない・なにも進展がない、を意味する「get nowhere」が使えます。そのほか、進展がないことを意味する「make no progress」なども使えるでしょう。ビジネスで英語を使う機会がある方はぜひ参考にしてください。
「埒が明かない」を正しく使おう
「埒が明かない」の意味や使い方、類語・言い換え表現などについて紹介してきました。
「埒が明かない」は、物事の決着がつかない・解決しないという意味の慣用句で、話が平行線でまとまらないときや、物事がうまく進展していない状況を言い表したいときなどに使います。
ビジネスシーンでも使える表現ですが、相手に失礼になる場合があるので使い方には注意が必要です。また、似たような意味をもつ類語も複数存在するので、あわせて覚えて上手く使い分けましょう。