かつては、ビデオリサーチが調査する「世帯視聴率」の獲得を目指して制作されていたテレビ番組。2020年3月の同社の視聴率調査の大幅刷新により、広告ターゲットを重視したコア層(主に13~49歳)の個人視聴率や推計視聴人数が公表されるようになったほか、TVerでの再生回数など新たな指標が生まれ、番組の評価方法が多様化している。

そんな中で、ビデオリサーチとは別に、独自の「注目度」という指標を調査しているのが、REVISIO社。テレビ画面に視線を向ける視聴者の割合を数値化したもので、この対象を複数人に限定した「共視聴率」というデータも公表している。

この新たな指標からどんな傾向が見えてくるのか。REVISIO社の担当者に話を聞いた――。

  • 「共視聴率」1位となった『新しいカギ』 (C)フジテレビ

    「共視聴率」1位となった『新しいカギ』 (C)フジテレビ

■1秒単位でCM内の推移も分析

同社がテレビ視聴の調査を開始したのは、2015年。従来のビデオリサーチによる個人視聴率調査は、テレビをつけて、誰が見ているかをボタンで入力する自己申告制だが、「もっと精緻なデータで広告主さんがCMを分析できるデータが必要なのではないか」(佐野智子シニア・マーケター、以下同)という意識に立ち、事業を開始した。

調査方法は、テレビの上にカメラ付きセンサーを設置し、テレビ画面に視線を向けている時間を計測。調査対象になった際に顔写真を登録しておくため、顔認識で誰が見ているのかを自動判別するが、REVISIO社に送られてくるのは文字列データのみで、プライバシーに配慮している。さらに、ビデオリサーチのデータは1分単位で集計されるが、こちらは1秒単位で数値化。テレビCMの多くは15秒のため、その短い尺の中での推移も分析できる。

2020年10月からは、調査対象を関東(1都6県)2,000世帯、関西(2府4県)600世帯まで拡大。統計学の理論に基づき、代表性のあるサンプルを確保しているという。

  • 注視データ取得のイメージ

  • REVISIO社に送られてくる文字列データのイメージ

■『silent』はインフォマーシャルも高数字

「注目度」は、テレビの前に滞在している人のうち、テレビ画面に視線を向けていた人の割合を数値化したもの。同社ではこのランキングをウェブサイトで公表しているが、ここから分かるのは、ドラマや映画の数字が高く“ガン見”され、ニュースや情報番組は低く“ながら見”されている傾向だ。

特に、昨年10月クールのドラマ『silent』(フジテレビ)は、初回放送で67.0%という高い数字をマーク。秒単位で見ると、字幕の出る手話シーンや、急に静かになった瞬間などに上昇した。Twitter(現・X)でも大いに盛り上がった同ドラマだが、ツイート作業中は当然視線がテレビ画面から外れるものの、すぐに戻って高いスコアになっているようだ。

番組の注目度が高いと、CM中も比例して高い傾向にあるのだそう。その中で有効なのが、本編に出演するキャストが役柄そのままで登場する連動型のインフォマーシャルだ。『silent』で昨年11月3日に放送された日産自動車「サクラ」のインフォマーシャルの注目度は63.8%と、その他のCM平均に比べ5.9ポイント高いスコアとなった。

また、7月22日の『FNS27時間テレビ』(フジテレビ)内で1回限りで放送された、しずる、チョコレートプラネット、ロングコートダディによるコントのようなCM「よしもとコントコマーシャル」の注目度も高く、3本の平均注目度は54.3%をマーク。前後に流れたCMの平均が45.3%だったため、CMの中でもかなり注目されたコンテンツだった。