レモン電池と普段使っている電池の違いは?

電池には大きく分けて「化学電池」と「物理電池」がある。アルカリ乾電池やボタン形電池は化学電池だ。化学電池は、化学反応によって生まれる化学エネルギーを電気エネルギーに変える。

つまりレモン電池は、化学電池の一種だ。化学電池を作るために必要な最低限の材料は、それぞれプラス極とマイナス極になる金属2種類と、電解液の3つ。レモン電池でいえば、銅板、亜鉛板、レモン果汁がそれぞれの役割にあたる。

ちなみに、プラス極とマイナス極、電解液の3種類だけで作られた世界初の化学電池は「ボルタ電池」という。レモン電池は、そのボルタ電池の亜種といえる。

世界初の化学電池「ボルタ電池」

ボルタ電池は、1800年にイタリアのボルタ氏が発明した。ボルタ氏は、食塩水に浸した紙を2種類の金属で挟み、電気を流すことに成功したという。さらにボルタ氏は研究を重ね、食塩水の代わりに希硫酸を用い、使用する金属を銅と亜鉛にする組み合わせで、最も大きな電気が生まれることを発見した。

ボルタ電池の誕生からおよそ70年後、日本人の屋井先蔵氏とドイツ人のガスナー氏が、相次いで乾電池を発明した。乾電池はボルタ電池とは異なり、液体を使わない。持ち運びができて安全性も高い乾電池は、その後の電化製品に多く使われることとなった。

アルカリ乾電池の誕生は1947年。リチウムイオン二次電池が生まれたのは1990年代と、ごく最近のことだ。コンパクトでありながら従来品以上の電気を生み出せる安全な電池の開発は、今も進められている。

レモン電池を活用して化学を体験してみよう

レモンに亜鉛板と銅板を差し込むだけで電池を作れるレモン電池。その仕組みは、約200年前に発明されたボルタ電池と変わらない。

亜鉛板はマイナス極、銅板はプラス極、レモン果汁は電解液としての役割を担っている。金属材料を変えることで電池としての動きが変わることもある。これは、金属のイオン化傾向の違いによるものである。

レモンを他の食べ物に変えても電池として働くことが多い。イオンや電子をより多く運べる食べ物のほうが、強い電池を作れるだろう。電池としての能力の高さは、生み出す電子の量と、運べるイオン・電子の量によって決まるのだ。果たしてどんな食べ物が電池材料として優れていくのか、探ってみるのも面白い。

今回の記事では、レモン電池を活用した発展学習として、中学・高校・大学で習う内容についても解説した。電池の仕組みの基礎は、すべてレモン電池と同じだ。もし面白さを感じたら、ぜひとも身近な電池の材料やメカニズムを詳しく調べてみてほしい。

本文中に登場した化学用語のプチ解説

記事中に登場した化学用語について、少し簡単に解説する。復習などに活用していただきたい。

電流・電子

電流の正体は電子の大移動だ。ただし、電流の向きと電子の流れる向きは逆方向になる。電流はプラスからマイナスへ流れるが、電子はマイナスからプラスへ流れるので、お間違いなく。

亜鉛

亜鉛は金属の1種で、電池以外にも建築材や加工品に用いられることが多い。例えば真鍮は、亜鉛と銅を混ぜ合わせたものだし、トタンは鉄を亜鉛で覆ったものなのだ。

水素

水素は無色・無臭・無毒の気体で、地球上の気体の中で最も軽い。燃焼したときに水のみを排出することから、最近では水素をエネルギーとして活用する研究開発も進められている。

イオン

プラスまたはマイナスの電気をもっている微小な粒を、イオンと呼ぶ。粒の電子が少なすぎたり、逆に多すぎたりすると、電気をもつようになる。例えば金属は溶けると電子が出ていってしまうので、プラスの電気をもった金属イオンになる。

純水

純水とは、不純物をほとんど含まない水のこと。水道水やミネラルウォーターは純水とは言えない。今回の実験で用いる場合には、ドラッグストアなどで精製水を購入して使ってみると良いだろう。